もっと知りたい

 朝食を食べた私は宿を一人で出た……所まではいいとして、多分だけど、フィオとルーファが後をつけてきてる。

 何気に一人でこの世界を歩くのは初めてだし、普通に怖かったので、宿を出た瞬間からマップを開いていたからすぐに気がついた。

 私ははじめてのおつかいをする子供じゃないんだよ! いや、心配してくれるのは嬉しいけどねさ。……心配だよね? 単なる好奇心じゃないよね? 

 取り敢えず私は二人の元へ行くことにした。


「何やってるの?」

「たまたまですよ?」

「ん」

「何やってるのって聞いただけなんだけど」

「ユアが何するのか気になって」

「それで後をつけてたと?」

「ん」

「そ、そうです」


 私はジトーとした目で二人を見つめる。

 するとルーファが気まずそうに口を開く。


「だ、だって私たちユアさんと出会ってから基本ずっと一緒にいましたし、何をするのか気になりまして……」


 うっ、そう言われるとちょっと……正直私も二人が着いてきてるのに安心したし……


「勝手に後をつけてごめんなさい」

「ごめん」

「い、いや別にいいから。私がどこに何しに行くか言わなかったから心配してくれたんでしょ? あれだよ……その、私はギルドに向かってるんだよ」


 まぁ、言っても大丈夫……なはず。


「何しに行くんですか?」

「討伐は無理だから、それ以外の安全なやつでお金を稼ぐ」

「……?」

「?」


 ルーファは、心底不思議といった表情をし、フィオは首を傾げる。

 え? なんで働こうとして私は疑問を持たれてるの?


「えっと、何?」

「ユアさんは私たちが養うので、働く必要はありませんよ?」

「ん」


 いやいや、何言ってるの!? 人が頑張ってダメ人間卒業しようとしてるのに! 


「働くから! いくら恋人でも申し訳ないから!」

「でも、ユアさんが働いたらユアさんと一緒にいれる時間が減っちゃいます」

「――ッ」


 待って、そんな顔でそんな事言わないで。私の決意が揺らぐから。

 と言うか二人で半分ずつ出てたとしても、今日まで結構お金使ってるよね? 二人ともお金大丈夫なのかな。ずっと一緒に居るし、私が知らない所で稼いでるってことはないだろうし。

 私は自分の顔が熱くなっていくのを誤魔化す意味も込めて、聞いてみることにした。


「そ、そもそも二人も働かなくて大丈夫なの?」


 これで無くなりそうなら一緒に……は無理かな。うん。だって二人とも強いし、討伐系の依頼を受けるでしょ。いや、私も肉体的には強いんだけど、まだ怖いし……


「私はまだまだ大丈夫ですよ?」

「私も」


 ちょ、ルーファは確かAランク冒険者だったしともかく、フィオの方はそろそろやばいと思ったのに! そもそも、フィオって昔何してたんだろう? ……そう考えると私フィオのこと何も知らないな。ルーファのこともあんまり知らない。あれ? なんなら好きな食べ物すら知らなくない!? 嘘でしょ!? 私恋人のこと何も知らないじゃん! い、いや、よく考えたら私たちまだ出会ってそんなに経ってないし、し、仕方ないよ。


「二人とも好きな食べ物って何?」

「私は焼き魚とかが好きですよ」

「食べられるならなんでも」


 二人は私が急に話を変えたことに不思議そうにしていたけど、答えてくれた。

 別に今からでも遅くないよね。時間はまだまだあるし、ちょっずつ知っていけばいいよね。

 明日はナナにも聞こう。


「その……しばらくは働かないことにする。でも、いつかは働くから!」

「一生養うので大丈夫ですよ」

「ん」

「い、いつかは働くから!」


 絶対働かない人みたいな事言ってるけど、ほんとにいつかは働くから。ただ、今はルーファの言う通り二人……これからは三人か、とにかく三人といる時間が減っちゃうし、もっとみんなのこと知ってからでいいと思っただけ。いつかは返すし。

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