欲望に忠実なんです
ん……なんだろ、あったかい。それに手元はもふもふしてる。足も少し動かすとすべすべで気持ちいい。
私は重たい瞼を開け、まずは手元を見る。すると私はフィオの耳をもふもふしていた。次に視線を落とし足の方を見ると、ルーファの足が私の足と絡んでいた。
「……天国?」
もしかして本当に昨日恥ずかしんだんじゃないかと思ったけど、流石にそれはないと首を横に振る。
足だけじゃなく、普通に二人に抱きつかれている状態なので、身動きが取れない。
どうしようかと少し考えたが、二人を起こさずに抜け出すのは不可能なので諦めてフィオの耳をもふもふしながら頭を撫でる。
「んぅ……ユア……」
起きた様子はないので寝言だと思う。なんか寝言で名前呼ばれると、すごいドキッとするよね。
フィオの耳を堪能し終えたので今度はルーファの耳を触りながら頭を撫でる。すると気持ちよさそうにしながら、私の体に顔を埋めてきた。可愛い。
そしてしばらくそうしているとルーファが私を下から見つめる形で目が合う。なんとなくだけど耳を触っていた手と頭を撫でていた手を咄嗟に引っ込め、ルーファから目をそらす。ほんとにやましいことはないからなんとなく。
「おはようございます」
小声でそう言ってくるルーファ。
「……おはよう」
「もっと触っていいんですよ?」
「……もう十分触ったから、取り敢えずはいいかな」
満足したかと言われれば正直嘘になるけど……そろそろ起きないとだし。
私は自分の欲を誤魔化すためにフィオを起こす。
「フィオ、朝だよ。起きて」
「ん……おはよう」
起きるなり私に抱きついていた腕に少し力を入れ、ほぼなかったに等しい物理的距離を0にしてきた。
ルーファの事を満足するまで撫でられなかった私は耐えきれずにフィオの耳をもふもふしながら頭を撫でる。フィオの事はさっき満足するまで撫でたはずなのに不思議だなぁと思いながら。
「私も撫でてください。フィオさんばっかりずるいですよ」
「わ、分かった」
ルーファからすれば私はさっきまでルーファのことを撫でてたはずなんだけどな。そろそろ起きないととは分かってるけど、この状況で我慢できる人なんていないと思う。
「気持ちいいです」
「私も……」
両手に花ってまさにこういう事を言うのか〜。
やばい。呑気なこと考えてる場合じゃない。多分ルーファもフィオも言い出さなそうだから私が「そろそろ起きよ?」的なことを言い出さないとだめなのはわかってるけど、言い出せない。今の状況が最高すぎて言い出せないよ。
ルーファと二人で寝た日は私二度寝したけど、あれはいきなり異世界に来て、自分でも気が付かないうちに疲れてたから二度寝をしたのであって……何を私は一人で言い訳してるんだ。とにかく二度寝はしないから起きないといけないわけだけど……それが簡単に出来たら苦労しないよね。欲望に忠実な人間なんですよ。
よし、そろそろ言うぞ。言うんだ。
「そろそろ起きない?」
「……ユアさん。行動と言葉が一致してませんよ」
「そ、それはそうだけど……そろそろ起きないと出発が……」
「もうお昼」
「えっ!? ほ、ほんとだ」
窓から外を見ると、とっくに朝と言う時間帯は過ぎ、お昼になっていた。正直全然気が付かなかった。
「明日に延期しよ。だからこのままで大丈夫」
確かに今から出発してもって感じだもんね。でもこのままで大丈夫な理由にはならないよ!
「出発は明日にするとしても、もう起きるから」
そう言いつつも体が言うことを聞かない。
このままじゃほんとに今日はずっと起きられなそうなので私は最終手段にでる。ここにワープポイントを配置し、あの川へワープした。
ふぅ、あぶなかった。正直に言えば、私もあのままでも全然良かったんだけど、今のうちに欲望に抗っとかないとほんとにダメ人間になりそうで怖いんだよね。いや、私が男だったらヒモ状態な訳で、何言ってんだって感じだけど、最低限はね。
よし、戻ろ。
そして戻ったのだが、私がさっきいた場所にワープするわけで、その日はずっとベッドの上で過したよ。ちくせう。
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