不可抗力
「私達が脱がせてあげますね」
「腕上げて」
「待って待って!」
「......下から脱ぐ?」
「そういう事じゃなくて、自分で脱ぐから!」
私は二人に服を脱がされるのを何とか阻止する。
どうせ見られることになるのは分かってるけど、服を脱がされて見られるのと、自分で服を脱いで見られるのでは訳が違う。
「二人は自分の服を脱いでなさい」
「......分かりました」
「......仕方ない」
私は不服そうな二人が脱ぐのと同じタイミングで服を脱ぐ。私だけ遅かったら服を脱ぐところを見られちゃうしね。
そして私は気がついた。体に巻くタオルがないことに。あの宿にはあったからこの宿にもあるんだと自然と思ってたんだけどないの!? 体を洗う時はどうせ外すんだけど......それまででもせめてって思ってたのに。
「やっぱりユアさんスタイルいいです」
「綺麗」
「へ、変なこと言ってないでさっさと入るよ!」
手で隠してる私と違って何も隠してない二人。目線が変なとこに行かないようにしながら、お風呂に入っていく二人の後ろを追いかける。
てかなんで二人は何も隠してないの!? この世界の住人って恥じらいとかないの?
「ユアさんはここに座ってください」
恥ずかしさで頭が回っていなかった私は特に何も思わずルーファに言われた所に座る。
「熱くないですか?」
「......多分」
お湯を少しかけられそう聞かれるが、もう体が恥ずかしさで熱いのでよく分からなかった。
そして私は髪を濡らされ......。
「てっ、なんでルーファが私の頭を洗おうとしてるの! 自分で洗うから」
「えー」
「私はユアの体洗う」
「体も自分で洗うから」
「えー」
不満そうにしている二人を無視して洗おうとするが、それには手を使わなければならないことに気がつく。私は今手で体を隠している。つまり自分で洗うということは隠せないということ。服を脱いだ時みたいに二人が自分の体を洗ってる時に洗えればいいのだが、生憎ここは一人部屋。複数人で入るお風呂なんて想定されてない。必然的に私は恥ずかしい思いをすることになってしまう。実際は見ないでって言ったら見ないでいてくれる可能性もあるけど、残念なことに私は頭を洗う時目を瞑らないと洗えないのだ。
「......やっぱりルーファはが頭洗ってくれる?」
「いいんですか!?」
「不可抗力だし」
「私は?」
「......背中だけお願い」
「前はユア?」
「......変なとこ以外は前もお願いします」
「うん」
ルーファとフィオが嬉しそうにしているのが分かる。
ただ、この時の私は冷静じゃなかったんだと思う。頭はともかく、前を洗われるのは見られるより恥ずかしいということに気がついていなかったのだから。
「それでは、洗いますね」
「うん」
そう言われ私は目を瞑る。
「どうですか?」
「んっ、......気持ちいいよ」
気持ちいいのは間違いないが、耳の裏を洗われる時に変な声を出してしまい恥ずかしさが急増する。
「洗い流しますね」
ルーファが泡を洗い流してくれたので目を開けようとしたのだが、ルーファに少し待ってくださいと言われた。私は下手に目を開いて、泡が目に入ったら嫌なので言う通りにする。
「――ッ」
「......もう開いていいですよ」
ルーファにそう言われるが、そんなことを言われる前に私はびっくりして反射的に目を開いていた。
「ル、ルーファ!? い、いきなり何を......」
「何って、キスですよ? ユアさんの目を瞑っている姿が可愛かったので、我慢できなかったんです」
そう。私はいきなりキスをされた。まさかそんなことをされるとは思っておらず、完全に油断していた。
「嫌でしたか?」
「い、嫌ではないけど......いきなりはびっくりするから」
「では、次からはちゃんと言いますね」
ルーファが私の耳元に顔を寄せそう言う。思わず体がビクッとなってしまい、また恥ずかしさが襲ってくる。
そんな私たちをフィオは羨ましそうに見つめていた。フィオにキスシーンを見られていた恥ずかしさを誤魔化すために、わざとらしい咳払いをする。
「フ、フィオ。体お願い出来る?」
「うん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます