ルーファの事意識してるとかじゃないから!

 私は日差しが眩しくて目を覚ました。

 

「ん......朝? もう一回寝よ」


 窓の無い方に寝返りを打とうとしたが狭くて出来なかった。

 そうだ......昨日はルーファと寝たんだった。狭いのも当たり前だ、一人用のベッドなんだから。

 

「ルーファ? 起きてる?」


 私は小声でそう聞くが特に返事は無いのでもう一度眠ることにした。起こすのも悪いしね。本当はもう起きたかったんだけどルーファが寝てるんじゃ仕方ないよね。




「あ、おはようございます」

「おは、よう......起きたいから離して欲しいんだけど」


 さっき起きた時は普通だったのに今はルーファに抱き枕にされて、足も絡められて起きれない。昨日の夜はルーファが寝たのを確認して足を解いたけど、今のルーファは流石に寝てくれそうにはない。


「ル、ルーファ、お腹すいたから」

「むぅ、仕方ないですね。ではもうちょっとだけ」

「ちょ、ルーファ!?」


 それから十分間ぐらい抱きついてスリスリされたりしたけど無事ルーファは離してくれた。無事と言えるかは分からないけど。


「それでは朝食を食べに行きましょうか」

「う、うん」

「ユアさん顔が赤いですよ? もしかして私の事意識してくれました!?」

「ち、違うから。ルーファがあんなにくっつくから暑いのよ」

「そうですか? 今は寒い時期ですけど」

「そ、そうだから! 早く朝食食べに行くわよ!」


 私は全然照れ隠しとかではなく、単純にお腹がすいたので下に降りた。後ろにはルーファもついてきている。

 勢いでルーファより先に来たけど、そもそも私お金ないし、どうやって朝食を食べるのかも知らない。


「ユアさん、こっちで食べましょう」


 私が立ち尽くしてると手を引いて席に案内してくれた。

 

「ありがと」

「大丈夫ですよ! 将来的には助け合うことになるので、これぐらい当たり前のことです!」


 確かに冒険者仲間として将来的に助け合うことになるかもだけど、ルーファが言ってるのは違う意味だよね......将来的に助け合うってのも別に間違ってるわけじゃないし、否定しないでいいか。ルーファも自分で言ってて嬉しそうだし。


「ユアさん、来ましたよ」


 宿の人がパンとスープを持ってきてくれた。パンを取ってみるけど......これ絶対硬いよね。


「どうやって食べるの? これ」

「どうって、普通にスープにつけてですよ?」


 そう言ってルーファはパンをスープにつけて柔らかくしながら食べ始めた。

 なんか凄くファンタジーっぽいけど、美味しそうには見えないな。お金出してないから文句言える立場じゃないんだけど。


「いただきます」


 私もさっきのパンをもう一度手に取りスープにつけて食べる。

 えっ、めっちゃ美味しいんだけど。


「美味しいですか?」

「う、うん! なにこれすごい美味しい!」

「ふふふ、ここの宿はスープが美味しいことに有名なんですよ! その代わりスープはちょっと高いですが」

「た、高いんだ」

「大丈夫ですよ! 私のお金はもうユアさんのお金でもありますから!」

「ち、違うから、絶対返すから」


 やっぱり絶対返さないと! 仮に、仮にだけど、私とルーファが付き合うことになったとしてもお金の事はきっちりしないと。


 それからは特にルーファも変なことを言うことなく、朝食を食べ終わった。


「ふぅ、美味しかった」

「ユアさんの口にあったようで良かったです」


 私達は昨日言っていた通りギルドへと向かうことにした。


「ねぇ、ルーファ?」

「はい、どうかしましたか?」

「いや、前にも言ったけど私もう子供じゃないから。迷子になるような歳でも無いからさ、その、手は繋がなくても......」


 私が迷子になるから手を繋いでるわけではないだろうが、だからこそ離して欲しい。


「では、手は繋ぎません」


 そう言って手は話してくれたが、腕を捕まれ、私の腕を逃がさないようにしつつ、ルーファの小さい胸(私もあまり人のこと言えないけど)を私の腕に押し付ける形で固定されてしまった。


「や、やっぱり手繋ご?」

「いえ、私冷え性なんです。ユアさんの体温であっためてくれないと死んじゃいます」


 嘘でしょ! 絶対嘘でしょ! もしそうなんだとしたら寒い時期に川で水浴びなんてしないでしょ。

 やっぱりルーファにせめて手にしよ? と言おうと思ったが、ルーファが少し恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに微笑んでるのを見てやめた。

 私もルーファの体温で暖かいし、今更ルーファが離れたら寒いだろうから仕方ない。


「ユアさん」

「何?」

「好きです」

「ーーッ」


 笑顔でそう言ってくるルーファにびっくりして歩む速度を少し上げる。恐らく赤くなっているであろう顔を見られたくないからではない。それでもルーファが私と腕を組んでいる状態に変わりはないので結局早く行こうとしようがルーファが隣にいるわけで、無駄なことだと思い歩く速度を元に戻す。ルーファの負担になるかもだし。


「着きましたよユアさん」


 気がついたらギルドに着いていたようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る