第2話 提案

「…まずは、動機を聞いていいかな? 」


「私ね、この間、ママが死んだの、自殺ね。私的にはママがいないんだったら、学校に行く意味も、バイト行く意味もないも、生きていく意味もないの。お葬式も終わったことだし、もういいかなーって思っていた矢先に、お兄さんに会って、これ以上いい人はいないなって思ったから頼んでるんだよ」


最初の方は割と真面目に聞いてくれていたのに、最後の方はウンザリといったような顔だった。


「はあ……で、それ、断るって言ったら? 」


これには策がある。こうなるとわかっていたから。


「目の前で首切ってあげる。だって、お兄さん人殺すの嫌なんでしょ?じゃなきゃこんなところでため息ついてないでしょ。人殺しってバレたら私を迷わず殺すところだもん」


それでもいいかと思って声をかけたし、人殺しだろうと指摘したのだから。


「でもこっちに利益ないし、君の遺体どうすればいいかわかんないし。…それに、…まあいいや。なんか重い話聞いちゃったし、帰る家あるの? 」


面倒だから早く終わらせたい、というような顔だ。だが、こちらもこのまま引き下がるわけにはいかない。折角のチャンスだ。これを逃したらもう二度とないかもしれない…いや、ない。


「あるっちゃあるけど、あと数日で出てかなきゃならないんだよね。ママが死ぬまでっていう約束だったから。だから、このまま施設に行くくらいなら死んでおきたいんだ。お願い。お金なら遺産含めて全財産あげるし、私は海にでも放り込んでくれていいから」


お願いします。と言って頭を下げる。こんなにちゃんと頭を下げたのは初めてかもしれない。最初で最後だ。


「…あのさ、君の気持ちがわからないでもないけど、簡単に死なないでくれる?死ぬなら勝手にしてほしいとこだけど、この数分だけでも話してて人にそんなことも言えないし、させたくないし。…家もないんだったら、うち来る?部屋は余ってるから。まあ、もし君がよければの話だけど」


「…え…? 」


頭を上げながら、彼の顔を見る。とても冗談を言っているようには見えなかった。


「いいの…?でも、生きていく意味がないことに…変わりはないんだよ?そしたら…それで死んだら、逆に情が生まれて、お兄さんは悲しくなら…ない、の?それは…悪いよ。そこまで、長期間他人を巻き込むつもりは…ない」


彼は横に置いてあった荷物を持って立ち上がって言った。


「別に、意味なくても、生きてるだけでいいからさ。学校行っても行かなくてもいいから、死なないでいてくれれば、それだけで。…ほら、来るの?来ないの? 」


「…ついて行って、いい? 」

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