ルルーナガー9

 99体の悪魔を切り刻んでいたら、

「すばらしい。これで憂いのな」

 天使が私を褒めにやってきたので鎌で倒した。雷の魔法では倒せなかったが、鎌ではあっさり首を落とせた。


 私は目を閉じ、願う。

 娘のゴーサと会えますように。


 しかし、娘はあらわれなかった。


「どうして」

 転がっている首に尋ねた。首は当たり前のような顔をして、口を開いた。

「ゴーサはあなたの娘だけあって強い力の持ち主ですからね。私の支配を振り払い、この世界から抜け出てしまったのです。もとの世界のほうにいますから、こちらから呼んでも聞こえないんじゃないですか」


 それじゃあ、次に祈ることは決まった。

 もとの世界に戻れますように。


「女王アリがそう望むのなら、この夢の世界はおしまいですね。私もそろそろ退屈してたんで、それで別に構いません。でも、あなたは本当にそれでいいんですか」

 地面に転がったまま、天使は調子よくしゃべり続ける。

「夢から覚めたら、あなたは全てを思い出し、罪悪感に耐えられなくなりますよ」

 なんとなく予感はある。きっと辛い現実が待っているのだろうなという、嫌な予感が。

「でも、この世界も悪夢ばかりで、決して天国じゃなかったよ。どちらも同じなら、私は娘に会いたい」

 娘のいない地獄と、娘のいる地獄。どちらを選ぶかなんて決まっている。


「そうですか。では、どうぞ呪われた現世へお帰りください。黄色い空と、毒沼だらけのあなた方の世界へと。新世界の神たりる者のための命の決済をご利用いただきありがとうございました」


 地面に転がった天使の首が微笑むのと同時に、夢の世界が壊れて、現実があらわれた。

 私は全部思い出した。自分のおかした罪を。

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