管理世界が発展しないから、お前ら何とかしろと言う駄女神

久遠 れんり

第1章 壊された生活と異世界の村

第1話 俺は普通の人になる

 僕は佐藤と言う苗字。

 両親ともに公務員の共稼ぎ。

 苗字が日本一多いと言うのが、誇りの両親。


 とびぬけた才能なんか、なくて良い。


 人生普通に暮らせるのが一番いいんだ。と幼少から言い聞かされ、名前も普人(ひろと)と名を付けられた。


 2歳下の妹。

 結月(ゆずき)もいて、4人家族。


 ちなみに妹は、普通にこだわっていない。

 かわいくて、人当たりがよく。近所でも評判がいいようだ。


 月に一度か2度。

 回るお寿司か、近所の中華料理屋さんに行くのが決まっている。

 誕生日はピザか焼肉屋さんみたいな。

 いつもと違う。変わった所へ外食に行くこともある。


 小学校低学年で、一度描いた絵が、どこかのコンテストに入選してしまい、表彰やら学校の集会で前に出て褒められ。そんなことが大変だと思った僕は、やはり普通が一番と再認識をした。


 それから俺は、努力をして、標準偏差の中央値を目指した。

 意外と、普通でいるのは難しく。


 テストでも、平均が悪いと順位が上がってしまう。 

 その為どうしても、平均付近を上下する羽目になってしまう。

 かと言って、不勉強だと一気に下がってしまうため。

 十分勉強をしたうえで、周りの平均値を推測してそれに合わせる。


 傾向と対策がぴたりとはまり、平均を取った時には、感動に打ち震えるような達成感? いや恍惚感を得られた。

 俺は少しおかしいのかもしれない。


 普通とは、意外と奥が深いものだ。


 運動でも、周りを広い視野で確認し、なおかつ手を抜いているのをばれないようにする演技も必要だ。

 そのために、俺は動画配信サイトであらゆる格闘技を勉強して、体の使い方を理解した。


 さらに。普通でいるために、一般常識と言われるものはジャンルを問わず勉強をした。男でも最近は。……この位は。……などと言う話があれば、飛びつき勉強をする。


 DIYはもちろん料理、裁縫、絵画、陶芸、電気、園芸などなど、苦手ややったことがないものなどは、有ってはならない。

 すべてにおいて、普通でなければならない。


 すべては、普通であるために。

 ひたすらそれを、達成するため頑張った。


 身長体重も高校1年平均169cm62kgと理想通り。

 ただ、思ったより筋肉が付いたため。

 体脂肪率が低いのが悩みだ。


 そんな高校生活。

 クラスメート達と、つまらない話をしていると、

「やっぱり高校生にもなれば、彼女の一人でも居ないとだめだよな」

「そう言うお前。彼女なんか、いないじゃないか」

「それは。……これから何とかするんだよ」

 経験則として、こういう何気ない会話こそ、重要な情報が含まれている。


「イベントの時とか、彼女がいるといないじゃ、楽しさが全然違うだろう」

「そうだよな。誰か彼女になってくれないかな……」

 ふむふむ、そうなのか。


 一つ提案して見る。

「そんなに欲しければ、クラスの半数は女の子だし、声をかければいいんじゃないか?」

 そう言ってみたが、

「普人馬鹿だろう。誰でもいいわけじゃない」

 と、返された。


「そうなのか?」

「やっぱり。何かビビッとくるものが無いとな」

「ふむ。ビビッとねぇ。今まで、そんなこと感じたこと。一度もないな」

 周りの友達も。腕を組み頷いている。


「そうだよな。クラスの女達じゃ、ダメなんだよ」

 

 そんなことを、皆気分が乗っていたせいか、徐々に大くなっていた声で言ったものだから、委員長が聞きつけ。こちらへやってきた。

「ずいぶんなことを言うわね。聞こえていたわよ。私たちだって、あんたたちにビビッと感じる物なんて、1個もないわよ。もっと素敵で、お金持ちで王子様のような人は居ないかしら」


 女の子は、現実的なのか? でも、王子様は、難しいだろう。むろん。比喩表現だろうけれど。

「鏡見ろよ。そんな奴居たって、お前じゃ釣り合わねえよ」

「失礼ね。私だって、お化粧して。……うん。多少はましになるわよ。たぶん。きっと」


「委員長が、何か言っているぜ」

「あんたたちの大好きな胸も、多少はあるわよ。しょっちゅう、あんたたちの視線を感じるし」


「……なっ見ねえよ」

「嘘ばっかり。この前だって……」



 彼女ねえ。

 生物として、繁殖のために必要なのは間違いない。だが現状。スケジュール的に厳しいな。しかし。普通に高校生として必要なものなら、何とかして確保をして。それに合わせて、スケジュールの組直しをする必要があるな。その場合。ある程度の熟練度の物は、レベルを下げない程度で、反復数を減らせば、維持ができるか……。


「……だよね、普人君」

「えっ。ああ。そうだね」


「「「えっ」」」

「本当に。いいの?」

「えっ?」


「普人。本当に委員長と、付き合うのか?」

 意識を外した間に、会話に進展があり、どうにかなったようだ。


 改めて、委員長をじっと見る。

 顔は標準よりちょっと上? 髪は黒髪で、肩より少し長いストレート。

 身長は俺より少し低く。胸が? まあ標準以内か。勉強はクラスで上位。

 運動もそこそこできる。社交性あり。合算すると、かなり上位になってしまうが、付き合う相手にまで、平均を求めるのは酷か。


「そんなに、見つめられると、照れるんだけど……」

 なんだか、赤くなってくねくねしている委員長。


「委員長なら、俺にはもったいないくらいの良い子だしな。良いよ」

 あせって、上からになってしまった。良いよってなんだよ。


「「「おおー」」」


「ちゅーうもーく。委員長と普人が、つき合うってよ。ハイ拍手ー」


「「「「おおー。おめでとう」」」」


 しまった。目立ってしまった。

「すまない。あまり騒がないでくれ。今決まったばかりで、これからの関係だ。温かく見守ってくれると嬉しい」

「……普人くん。ありがとう」

 小さな声で、真っ赤になった委員長が、礼を言ってくる。


「あっああ。そうだな。みんなぁ。生あったかく見守ってやろうぜぇ」


「そうだね。おめでとう……」


 しまったな。こんなに早く相手が決まるとは。

 予定の修正が、できないじゃないか。


 放課後までに、普通の付き合いを習得しなければいけない。

 普人は自分の席に戻り、スマホで「男 女 付き合い 普通」で検索を始める……。

 それと同時に、幾人かからの恨みの目を向けられたが、当然興味も無いので気がつかなかった。

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