第8話 サプライズと記念写真

 ——数日後

 朝風、キャロル、桜の三人はトランプを用いたカードゲーム Old Maid に興じていた。

 「どうしてまたアサカゼの勝ちなのよ! イカサマしてるんじゃないの?」

 「キャロは表情に出るからわかりやすいんだよな……」

 今の負けで三戦三敗が決まったキャロルは悔しそうに朝風を睨む。

 桜に関しては、わざと朝風に負けてくれているのだろう気がした。そう言う人だから。

 「キャロちゃんまだやる〜?」

 「もちろん勝つまでやるわ アサカゼもいいわね?」

 「へいへい……」

 そんなやり取りをしていると仕事が終わったのかロバート氏がやってきた。

 「なんだか楽しそうなことしてるな。 俺も参加していいかな?」

 敏腕経営者であるロバート氏の勝負力……確かに気になる。

 「はい、もちろんです!」

 「じゃあ、上位二名に入った奴には俺がなんでも願いを叶えてやろう。 まあ優勝は俺だがな」

 「言ったわね、パパ! 二言はない?」

 「おうよ。 だが、最下位になったら……優勝者からの罰ゲームが待ってるぞ」

 「朝くん? 公序良俗に反する罰はだめよ……?」

 「アサカゼ……そんなこと考えてたの……?」

 「やるなぁ。 アサカゼ!」

 「いや、そんなことしないからな! あと、ロバートさんは何を感心してるんですか!」

 そんなこんなでロバート氏を交えた四人での罰ゲームありカードゲーム大会が始まるのだった。

 

 ——三十分後

 勝負結果は一位ロバート氏、二位朝風、三位桜、四位キャロルの順位に決着していた。

 「おかしいわ! 何かトリックがあるんでしょ!」

 二位の朝風よりも数周早く勝ち抜けしたロバート氏にキャロルが言い寄る。

 「俺が勝負事に強いのはよく知っているだろう我が娘よ」

 「で、私に何をさせるのよ?」

 ロバート氏の勝負強さや強運を知るキャロルは諦めたのかそう聞いた。

 「まだ決めてないからそうだな……今日中には返事をしよう」

 「ふーん。 それでアサカゼはパパに何をお願いするのよ?」

 「朝くん、頑張れ……」

 桜姉さんは俺が何を頼むと思ってんだ……

 「アサカゼ、言ってみろ。 なんでも叶えてやろう」

 「それじゃあ……」

 朝風は願い事をロバート氏に耳打ちする。

 「ほう……いいだろう」

 ロバート氏にニヤニヤした視線を向けられむず痒い気持ちを感じた。

 ベネット親子って仕草とか性格そっくりだよな…勝負好きなところも。

 「アサカゼ……パパに変なお願いしたでしょう?」

 「してないよ断じて!」

 「まあ、期待して待ってろよ。 アサカゼ」

 ロバート氏はニヤリとした視線を朝風に向けるとそのまま退室していった。


 ——一週間後

 今すぐ部屋まで来いという伝言を聞いた朝風はキャロルの部屋に向かっていた。

 「何の用だ? 来てやったぞ」

 「空いてるから入って?」

 ドアを開けた瞬間、朝風はフリーズした。

 室内ではセーラー服姿のキャロルが少し短いスカートの裾を押さえて立っていたのだ。

 「キャロ……? 一体何をしているんだ……?」

 「何って……アサカゼがパパにお願いしたんでしょ?」

 キャロルは恥ずかしそうにしながら一枚の写真を手渡してくる。

 受け取った写真を確認すると目の前の光景と同じ、セーラー服に身を包み少し恥ずかしそうに笑うキャロルの姿が映る。

 確かにキャロルの写真が欲しいとお願いしたけど……

 ロバート氏……粋なサプライズをありがとうございます!

 「ああ、夢が叶って嬉しいよ。 よく似合ってる」

 「ふん! こんなにスカートの短い服を私に着せて喜んでるなんて……アサカゼのエッチ……」

 照れながら言うな可愛いじゃないか! あと、スカートが短いのはロバート氏の差し金だと思うよ……最高ですロバート氏。

 「アサカゼの制服も届けてもらってるみたいだから一緒に写真に写ってあげないこともないわよ……?」

 「せっかくだし記念写真撮って貰おうか」

 「もう着てあげないんだからバッチリ撮ってもらいなさい? 私のこんな姿二度と見れないんだから!」


 その後。朝風も着替えて庭木の下で撮影することになった。

 「キャロ? 少し遠くないか?」

 「あんた恥ずかしくないわけ……?」

 恥ずかしいに決まってるだろ。 もうドキドキしっぱなしだよ。

 「キャロ……こっち来いよ」

 キャロルの腕を引き寄せるとバランスを崩したのかキャロルはふらつき朝風へと倒れかかる。

 「おっと……大丈夫か?」

 「うん……」

 抱き止められたキャロルが朝風を上目遣いで見つめているとパシャッとシャッターの落ちる音が響く。

 「撮られちゃったみたいだけど今の写真……俺は良いと思う……かな?」

 「アサカゼのばか……」

 良い写真が撮れたぜと言いたげに親指を立てたロバート氏に朝風も同じように返す。

 「これからも色々な記念写真を二人で撮ろうな? キャロル」

 「気が向いた時になら……良いわよ……?」

 「よし、今度は笑ってくれよ。 笑顔でもう一枚撮って貰おうぜ?」

 「もう……仕方ないなあ……今日だけよ?」

 隣で輝くような笑顔を見せてくれるキャロルと一緒にその後も数枚の写真を撮った二人が後日受け取る写真を生涯大切にしていたことは言うまでもないのであった。

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