第14話 騎士とは何かを教えてくれるそうです

「まさかライオット君が美化職員さんだとは、流石の僕も吃驚だよ。陛下の前で吹き出してしまう所だったよ」


「私も吃驚です。レティシアの友達だから、学生だとばかり思っていたわ」


「ライオット君は最強の美化職員さんだね」


「だから白狼武闘会に出場しに来たんですね」



 お城の中庭を歩きながら団長とエステルさんが俺の顔を見ながら笑っていた。


 中庭を半ばまで歩くと俺達の前に銀色の鎧を着た三人の男達が現れた。



「先程はよくも騎士を侮辱してくれたな」 

「そうなのか?」


「美化職員ふぜいがふざけた事を言ってくれた」


「俺達が騎士とは何かを教えてやる」



 銀色の鎧を着た男達が剣を鞘から抜いた。



「すまんが、俺の剣は折れて使えないんだが」


「剣を折るとは剣士としては二流、いや三流のようだな」



 銀色の鎧を着た男達は笑いだした。



「ライオット君、これを使いな」



 団長が銀色の剣を貸してくれた。鞘から抜くと太陽の光に反射して輝く。流石は団長の剣だ。持っただけでその凄さが分かる。



「今まで使っていた、小鬼が落とした剣とは雲泥の差だな」


「アハハハハ、ライオット君はゴブリンの剣でドラゴンを倒したのか」



 団長が笑い、銀色の鎧を着た男達も笑いだした。



「ゴブリンの剣とはお粗末だな」


「剣も買えない貧乏人とはな」


「「「ワハハハハ」」」



 銀色の鎧を着た男達がニヤニヤしながら剣を構える。そして俺も剣を構えた。


 一人の男が俺に斬り掛かる。俺も踏み込みその男の剣に剣を合わせるが、団長の剣は男の剣を斬ってしまった。


 更に他の男達の元へと踏み込み剣を合わせるが、やはり二人の男達の剣も斬れてしまった。



「凄い切れ味だな」



 俺は団長の剣の切れ味に感心した。



「ライオット君の腕だよ。普通は剣で剣は斬れないよ」


「そうなのか?」


「剣が折れる前に腕の骨の方が折れるよ」



 団長は「アハハハハ」と笑っていた。



「か、家宝の剣が……」


「め、名刀ガバラークが……」


「み、ミスリルの剣が……」



 白い鎧の男達は膝をついて折れた剣を涙ながらに見つめていた。



「悪い事をした。許してくれ。それで騎士とは結局何だったのだ?」


「ぷッ、アハハハハハハハハ」



 団長が笑い出すとエステルさんとレティシアも笑いだした。


 銀色の鎧を着た男達が騎士とは何かを教えてくれたようだが、俺には全く分からなかった。





「よかったらその剣はライオット君にあげるよ」


「いいのか?」


 お城の広い庭をゆっくり歩きながら、俺たちは話しをしていた。


「ドラゴンと真面にやっていたら僕の青狼騎士団もかなりの負傷者が出た筈だ。それは僕からの報酬だと思って受け取ってくれ」


 

 銀色の鎧を着た男達と別れた後に、団長が俺に剣を譲ってくれた。俺は銀色の剣をもう一度振ってみる。軽くて振りやすい。



「この剣ならアレが出来るかもしれないな」


「アレって?」 



 隣を歩くレティシアが首を傾げた。



「烈風剣ソニックバーストエッジだ。烈風剣バーストエッジを越える技だ。前に試した時には剣速に剣が絶えきれずに折れてしまった。試してみたいがいいか?」


「だ、ダメよッ! 帝都を壊滅させるつもりッ! って言うかマザードラゴンを倒せる技を越える技って何と戦う気よ!」


「分からん」


「マザードラゴンを越える魔物となれば、神や悪魔に近い存在だね。ただ一番怖いのは人であり、一番最悪なのは戦争だよ」


「戦争とは何だ?」


「ライオット君はよほど良い所で育ったんだね。戦争っていうのは多くの人が殺しあう最悪の暴力の事だよ」


「何故その様な事をする?」


「国と国のいざこざ、欲望、思想、宗教が戦争を起こす。そこで多くの人を殺した者が英雄となる。酷い英雄さ」


「酷い話しだな」


「ライオット君は英雄に憧れるかい?」


「考えた事も無いな」


「平和な時代とは英雄がいない時代の事だ。しかし残念ながら今は英雄を必要とする。ライオット君。強さを求めるなら不殺の強さを求めるのも悪くないよ」


「不殺の剣か。いや、俺には美化職員の仕事があるから、今は修業の時ではないな」


「アハハ、美化職員の仕事の方が大切か」


「学食の残りを貰えるからな」


「アハハハ、やはりライオット君は面白いな」





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