第2話 駄目人間

「よし!今回も大穴一点買いだ!頼むぞー‼」


 私が彼女に与えたお金は発券機に瞬く間に吸い込まれた。

 私の手元には彼女のパンツが残ったが正直かなり迷惑だった。


「アンタも私と同じ馬券を買ってみなよ…儲けさせてやるよ」


 彼女はかなり自信満々の様子だった。いったいどんな根拠で選んだのだろうか?


「随分な自信ね…どんな根拠で選んだの?」


「ふふふ…感だよ…私のセンサーがビビッときたのさ!」


 私はその言葉に彼女が直感型の駄目人間である事を瞬時に悟った。

 この手の人間は同じ間違いを何度も繰り返す。

 要は学習能力が無いのだ。


「貴女、勝率は?」


「20回…?30回…?40回に一回くらい?」


 思った通りどういう理屈で勝ったか負けたかも理解していない。

 思いのまま、つぎ込んで喜んだり悔しがったりをするだけなんだろう。

 当たった事は記憶していても負けた事はすぐに忘れている。


「ちゃんと馬体の仕上がりを見たり調教タイムを確認しないと…」


「バカヤロー‼そんなチマチマした買い方ができるかい‼私はオッズの高い馬でドカーンと当てたいんだ‼」


 理屈を抜きに彼女の言葉には真に迫る迫力があった。


「私は一発逆転がしたいんだよ‼私の夢は人生一発逆転‼」


「す、凄い…」


 思ったままの言葉が口から出てしまった。

 訳の分からない話だというのに聞き入ってしまった。

 しかし彼女は一発逆転と言っていながら、崖から転げ落ちる様に人生をゴロゴロと転落している事に全く気付いてはいない。

 今ホームレスである事を何故なんだろうと過去を振り返ったりしないのだろうか?


「そんなんじゃお金なんてスグに無くなってしまうわよね?」


「ああ…だから今こんな生活をしている…」


 その様子は少し悲しげだった。

 お金の使い方を少しは考え直しているのだろうか?


「けれど、いつか当たると私は信じている‼一発逆転で一気にセレブ生活だ‼」


 私の思い違いだった。彼女の学習能力の無さは並ではないようだ。


「しかも、それが今かも知れない…私を信じなさい…」


 これ程の人間を私は見たことが無い。しかも私と同じ年頃の女の子だ。

 私は彼女がこの世界の人間ではないのかもと疑っていた。

 異世界から飛ばされてきたのかも知れないと。

 彼女の発想はそれ程、私の理解を超えていた。

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