第22話 10年後です、まだ抱き枕です(T_T)

 「ん、……うーん……」

 寝苦しさから目が覚めると、今朝もがっちりホールドされていたミウだった。

 抱き寄せるように……

 ならまだマシだ‼

 これ絶対プロレスだ。フォールされてる。レフリーさえいればカウントが入る。

 イオとミウ。

 出会って10年の転生者同士、2人はまだ共にいる。

 16歳になった。

 転生前の年に追いついた。

 魔力を移す云々で、2人はまだ一緒に寝ている。

 16歳の男女が……

 とは思うものの、それ以外の環境はずいぶん変わって、今はもう、スラム横の中古3DKではなく、いわゆる『邸宅』と言える広い家、ベッドだってキングサイズだ。

 べったりくっついて寝る必要も無く、ミウの方が断固拒否で間を開けて寝ていたはずが、朝はいつもくっついている。

 くそう……

 イオのヤツ、おかしな癖をつけやがって……

 今はもう、ミウもイオを糸とは呼べない。

 それくらい成長していて、抱き枕にされると体格差から抜け出すのに苦労する。

 ジタバタしていると、ノックの音。

 「お坊ちゃま、お嬢様。学校に行くならそろそろ起きませんと」と、完璧メイドの体で入ってきたのは、あのスラム街で共に暮らしたサチだった。

 「……」

 毎朝恒例、仲良し?兄妹の光景に、

 「ぶっ‼」と吹き出す。

 はい、完璧メイド、もう崩れた。

 って言うか、完璧メイドは許可を得ない限り、主人の部屋に乱入しません‼

 「もう‼助けてよ、姉さん‼」

 サチはケラケラ笑い続け……


 幼いころあまりに過酷な環境にいると、成長が阻害されることもあるらしいが……

 幸いにも2人は大きくなった。

 イオの方は、前世の単位で表現するなら180センチ近い。鍛えているから細マッチョで、キラキラの銀髪、クールな青い瞳。

 ものすごく整った美青年だ。

 説明が難しい。『銀河英〇伝説』に出てきそうな感じ。 

 思春期後半……と言うか青年期なのに、ニキビ1つ無い。

 非の打ち所がない。

 対してミウの方は、こちらはあまり大きくない、150センチそこそこで、全体的に小ぶり。

 腰まである黒髪が艶やかで、神秘的な金目は見るものを怯ませるほど。

 近寄りがたい美人なのに、体つきが幼いゆえのアンバランスが、余計に人を惹き付ける。

 ちなみに胸はBカップ。

 12歳の時だったか?

 「オレ、毎日揉んでやろうか?」と、馬鹿な兄もどきに真顔で言われ……

 ぶん殴った結果だから後悔はない。


 「はは、毎日毎日あんた達は、もう……」

 ゲラゲラ笑い続けたサチは、笑いすぎた涙を拭いながら、

 「普通に兄妹でも問題あるわ」と、言い切った。

 分かっています。

 完全事案です、これ。

 「助けてよ‼」

 もう1度言うが、サチは笑って拒否をした。

 「嫌なこった。早く抜け出ておいで。アルルとローサがご飯作って待ってるよ。」

 アルルとローサ。

 あの時一緒にスラムにいた少女達だ。

 開けっ放しの扉から、フワリ、スープの匂いがする。

 今彼らは5人でいる。

 邸宅に住まざる得なくなったイオとミウが、本来ならこの10倍くらい人を雇うところ、

 「そんなに他人がいても煩わしい」と、昔馴染の3人を雇った。

 イオ・リバーウェル伯爵と、その妹のミウ・リバーウェル女男爵。

 

 こうなってしまった、理由は少し遡る。

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