第24話 報告を受けるジュエルイアン 1


 ヒュェルリーンは、アイカユラからの報告を受けたので、それをジュエルイアンに報告するために精査していた。


 その内容は、開発の方向性が完了して、これからサンプルを作るため、その開発の内容と必要な物のリストを貰った。


 その中にイスカミューレン商会のプレス機を使ってとなっていた。


 それは、プレス機を改造するという事になる。


 プレス機については、エルメアーナの店に1機と、その後に手配したものがあったので、後から手配したプレス機を使えば、ジューネスティーンとエルメアーナ達が考えたベアリングを作る機械にする事ができる。


 また、ベアリングを作るための材料は、太い針金か、長細い鉄の棒になる。


 これについては、建築や固定用に使う等、針金は、大いに利用されているので、その辺りを利用することで、材料の手配は可能になる。


 この世界で、針金を作るには、作られた鉄塊を細くしていき規定の太さにするので、自分達の指定した素材で加工して貰えば良いので、材料の手配については、交渉をして見積もって貰えば問題無い。


 しかし、購入した針金を加工するためには、イスカミューレン商会に手配したプレス機の改造が必要となる。


 機械については、材料を均等に切断するため、プレス機の回転運動を利用して、針金を送り一定の長さで切断する。




 回転する力を利用して針金を送り、一定の長さになったら切断機で切る。


 送りと切断機を連動できるように、同じ回転軸から動力を取る事で連動できるので、ほぼ、同じ大きさでボールの素材を切断できる。


 そして、丸めるために球体の形にさせるためのプレス加工を行い、その後は、精度1000分の1にさせるための研磨を行う事になる。


 しかし、その精度を出す事なのだが、過去に、そんな精度を出せたものは、何も無かったのだ。


 だが、ジューネスティーンとエルメアーナが考えた方法で、初めて実現可能になろうとしているのだ。


 その為に必要なプレス機は、最初の切断に1機、球状にするためのプレスに1機、そして研磨のために1機の合計3機のプレス機が必要になる。


 そして、研磨のための円板を作るための工作機械用に、また、1台必要となっていた。


 ベアリングの開発をエルメアーナに任せるに当たって、ヒュェルリーンが入って、最初のミーティングを行った時、ジューネスティーン達に、プレス機を2台用意すると約束していた。


 しかし、報告を受けた内容では、3台必要とあったが、それ以外にも工作機械用として1台必要になる。


 ジュエルイアンとしたら、ベアリングの有用性を理解していたので、20台をイスカミューレン商会に手配していたのだが、ヒュェルリーンは気になる部分があった。


「問題は、納期になるのか」


 ヒュェルリーンは、報告の内容を吟味して問題点を精査していた。


 プレス機の手配は行なっていたが、それが納品されるまでの時間と、エルメアーナが加工用の工具と、その治具やらを完成させるまでに、間に合わせられるか、それ以外にも問題はあった。


「それよりも、問題は、研磨するための円盤を作る時よね。 円盤を回転させて、そこに、刃を当てて溝を削り出すのか。 そうなると、回転運動が出来る機械が必要になるから、それまでに1機必要なのか」


 アイカユラの報告を聞いて、その部分がヒュェルリーンには引っかかっており思案を巡らせていた。


 ジューネスティーン達に開発を助けると言った手前、あれが無いからとか、問題点がジュエルイアン商会の方に有るようにする訳にはいかなかったのだ。


 経営側として、開発側に弱味を見せるわけにはいかないと考えていたからだ。


 どんな時でもイニシアチブは、ジュエルイアンに有ると認識させるためにも、準備は万全にしておく必要が有るとヒュェルリーンは考えている。


 さらには、ジューネスティーンには、ベアリングの技術以外にも、利益につながりそうな技術があると、そして、今まで魔法が優れている程度にしか考えていなかったシュレイノリアには、魔法紋の開発ができる事が分かっていた。


 魔法紋の開発は、どの国でも、ほとんど行われていない。


 それは、魔法を使える人が少なく、多くは、軍に徴用されて、研究開発に進む者が少なかったことによって、基礎研究が疎かになっており、魔法は、ただ、何となく使えたから使っている程度なのだ


 それが、シュレイノリアには、パワードスーツの駆動系に魔法紋を使っており、その魔法紋の開発をシュレイノリアが担当していた。


 魔法紋の開発が可能なら、シュレイノリアには、魔法について概念から理解されていると考えられるのだ。


 その魔法紋が、生活に使えるようなものなら市場は大きい。


 そして、ジュエルイアンやヒュェルリーンの知っている範囲で、魔法紋の開発がなされたという話は無かった。


 魔法紋は、過去に作られたものをコピーしてスクロールとして販売されているか製品に魔法紋を刻んでもらう事になる。


 それが、シュレイノリアによって、新たな魔法紋が、パワードスーツ用に発明されているのだ。


 ジュエルイアンとしたら、ジューネスティーンとシュレイノリアの2人の知恵が利益をもたらすと分かっているのだ。


 日本刀のこともあったので、そのもたらす利益を考えたらプレス機の20台程度の購入は安いものなのだ。


 ジュエルイアンとしたら、そんな金の卵である2人の信頼を得る事は、大きな利益を生む事になるのだから、今回の話においても、ジューネスティーン達に不安にさせるような事はできないのだ。


 ヒュェルリーンは、ジュエルイアンの指示によって、エルメアーナの面倒を見ているのだが、ジュエルイアンは、ジューネスティーンの考えた事を、全てエルメアーナに作らせようと、エルメアーナの店をギルドの高等学校近くに出店させたのだ。


 その結果、自分達が接触させるよりも早く、ジューネスティーン達と出会っていた。


 しかし、それは、日本刀の製作となってしまい、結果としてベアリングの開発の着手が遅れてしまった。


 しかし、そのお陰で、ジュエルイアン商会でも、エルメアーナの日本刀を販売する事になったので、それだけでも大きな利益をもたらせていたこともあり、ジューネスティーンの技術をエルメアーナが覚えて、それをジュエルイアン商会が販売を担う事で大きな利益を生むと判断されているのだ。


 日本刀の実績が有るので、ジュエルイアンとしたら、高額な機械の購入も、躊躇うこともなく発注したのだ。


 今のジュエルイアン商会としたら、ジューネスティーン達の信頼を損ねることの方が不利益なので、可能な限り希望に添えるように考えているのだった。

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