第8話 偶然ってあるんだねえ?


 本当は近況ノートに書こうかと思ったネタですので、今回は特に不思議じゃないかもしれません(;´∀`)


     ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 昨日図書館から本が用意出来たとメールが来た。

 二週間ほど前にリクエストを入れておいた本だ。同じ区内の図書館にないので、区外の図書館から回してもらった児童書だった。

 実は内容を読みたいというよりも、この本の挿絵が見たかったのである。


 私がこの絵本作家兼イラストレーターさんの絵を知った時には、ほとんどの画集が絶版になっていた。

 しかも早々とプレミア付きで定価よりも高価に。なんてこった。


 とりあえずDVD1枚は手に入れることは出来た。

 もう夢の国がここに凝縮していると思える逸品だ。基本これだけで十分素敵な世界にひたれるはずだが、やはり紙の媒体も欲しい。

 部屋に飾ったり、手に取って眺めたりしたい。


 だが、もう店頭にないために中身が確認できない。アマゾンなどでたまにプレビューされている時もあるが、ほとんどのが分からない。

 好きな作家とはいえ、意外と思っていたのと違う感じの場合もあるし、一度見て満足してしまうこともある。

 それに全てが好きなカラー版とは限らないのだ。


 現在一冊だけ、このイラストレーターさんが挿絵を描いた児童書を持っているが、私の好きな色合い傾向――私はこの方の透き通るようなブルーが特に好きだ――がちょっと少なかった。


 絵というのはなかなか好みがあって難しい。


 そこで図書館にて一度見てから購入を考えるようにしたいと思ったのだ。


 そういやいつだったか、カウンターである手続きのため待っていると、横に大学生くらいの男性がやって来てもう一人の係におずおずと訊ねた。


「あの……、この本、数時間だけ外に持って行ってはダメでしょうか? カラーコピーを取りたいんですが」

 そう言ってA3判くらいはあろうかと思われる、分厚い画集をカウンターに載せてきた。

 当時図書館内に置いてあるコピー機は、B4までのモノクロコピーしか出来なかった。


「10冊まで2週間内なら貸出可能ですよ」と係の人はすんなり答えた。

 そう、大型本は館内閲覧のみのモノも多いが、美術本は意外と貸出OKだった。

 すると男性はすぐに喜んで5,6冊の大型本を持って戻って来た。


 画学生なのだろうか。うんうん、借りられて良かったねえ。持って帰るのは大変そうだけど。

 そんな風に図書館というのは、こうして色々と利用出来て有難いものである。


 さて、リクエストの本が届いたというのですぐに取りに行きたかったのだが、メールに気づいた時にはすでに閉館時刻だった。

 むう、まあ明日行って来るか。


 そこで久しぶりに家にある一冊を開いて眺める。そういや、内容のほうはほぼ読んでなかった。

 でもなんだか絵を見てるだけで満足してしまう。

 もしかして枕元に置いておけばこんな夢が見れるかも知れない、と思いつき、その夜私は傍に好きなイラストを開いて眠った。

 たまにこんな夢見がちな事をやってみるのだ。


 ところで図書館には、在庫オーバーで置けなくなった本を無料で提供してくれるシステムがある。

 以前は年に一回、バーゲンセール式で一冊¥10から高くても¥100で売られていたのだが、最近はある程度貯まるとリサイクルブックとして、設置された可動棚に無料本として置かれるようになった。


 いそいそと本を引き取りに行くと、本日は結構まとまったリサイクル本が置いてあった。

 いつもは雑誌の残りがほとんどなのだが。

 もちろん始めにチェックだ。カウンターに行く前にそちらの棚に直行する。


 何しろ閉架図書とされて保管庫に眠っていた本や、寄贈されたが図書館に登録出来なかったもの、マンガ本などジャンル問わずに色々とあるので、意外と知らなかった本に出会えることも少なくない。


 古い文庫だが、外国の遠野物語と言えそうな『フランス田園伝説集』なる本も、ここで初めて知ったのである。

 これはオカルトやファンタジー好きなら、なかなか良きネタになりそうな話が満載な本である。

 

 他にもかなり古そうではあったが、先程の学生風の人が借りたような大型の美術書が置いてあるのを見たことがある。まず普通の本棚に入らなさそうなサイズのが。


 求める人には垂涎の本も、需要がないとここに置かれてしまうのだ。

 でも読まれずに保管庫に置かれっぱなしより、求める人の手に渡った方がいいのだろう。


 私も利用させて貰っているので、たまにだが読まなくなったマンガ本などを寄贈したりする。

 何しろBOOK●FFに持って行っても、一冊¥10になるかならないかの本を20冊以上、遠くへ持って行くよりは近くで誰かに貰ってもらった方がいい。

 もしかすると登録が通って、棚に置かれるかもしれない。

 そうすれば、たまに気が向いた時に自分も読めるというものだ。


 とにかくそんな感じで棚を物色しにいく。

 するとどうだろう。昨日開いていた本と同タイトルの背表紙があった。


 ただしそれは四六判。

 私が持っているA4横長のと比べてサイズが半分くらいだ。どうやら廉価版らしい。


 ふんふん、せっかくだが私はもっと大きいのを持っているしなあ、などと思いつつ一応手に取ってみる。

 なかなか綺麗じゃないか。哀しい事にあまり利用されなかったのか……。


 と、――なんということでしょう!? そこには私の持っている本にはないイラストが載っているじゃありませんか!

 思わず最後のページをめくる。


『本書は○○年に刊行された****をもとに加筆し、版型を改めたものです。イラストも追加し――』


 な、な、なんだとぉーーーーっ!!?


 心なしかブルー系のイラストが増えている。そして同じイラストが反転していて、向きが逆なせいか、また新しいモノにも見える。

 それにサイズが小さく手に取りやすくなったせいで、本文も読みやすい。


 があぁあぁぁぁ~~っ! 後から安く発売された方が好みなんだがぁ~~!!

 しかもコレは無料タダである。 

 だから逆にすでに持っている本なのに貰ってしまっていいのか私? などという懊悩がちょっぴり頭をかすめた。


 とりあえず横にある図鑑『洞窟どうくつ生き物いきもの』を開きながら悩む。

 こちらも子供用なので写真が大きい。


 しかしまた昆虫のドアップが凄いな。

 しかも巧みな撮り方のせいか、大き過ぎてあまり見た事ないその横顔をうっかり精悍に感じてしまった。

 もう静かに興奮してておかしくなってるんじゃないのか私。


 実際、昆虫の中にはカッコいいのも少なくない。

 カマキリなんかデザインが洗練されていると思うし、スズメ蜂はまさに強そうだ。

 逆にミツバチはコロンとしていて可愛い。もちろんあくまで姿だけでの判断だが。


 などとついでにこの図鑑も貰っていこうかと一瞬思ったが、それは止めた。

 このインパクトは他の純粋無垢な子供たちに残しておこう。


 結局改訂版を貰って来た。とにかく感謝、有難うございます!

 

 しかしなんだな。

 このイラストの夢は見なかったが、次の日に存在さえ知らなかった改訂版が手に入った。

 偶然と言えば偶然なのだが、なんとも不思議な気もするのである。

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