第6話 寝起きに見えるモノ


 最近、ふと目を覚ますと、奇妙なモノが見えるときがある。


 昨年12月だが、仰向けに寝ていたらしく目を開くと真っ先に見えたのは、天井と足の方に明るくなったベランダ越しのカーテン、そして左手の壁際にこちらを見下ろす人……。


 ――どちらさま?


 足元近くに立っていたその人は、中肉中背で茶系のタートルネックを着、髪は七三分け。 

 ただ、その顔だけは何故か黒い霧のような影が付いていて分からなかった。


 ちょうどベランダの方へと踵を返すところだった。

 ほんの1,2秒でそのまま消えていった。


 寝起き一発なので寝ぼけていたのか、夢の続きでもないし、夢も見ていなかった。

 なんだろ、仏間だし、誰か来たのだろうか。


 そういえば髪型といい、体型がちょっと母方の双子の叔父さんたち――中肉よりやや痩せ気味だけど――に似ていた。

 でも叔父さん達は存命だし、髪の毛はもうだいぶ薄くなっている。

 ただ母方の男性たちは皆似ている感じだから、そちらの親戚筋の人かもしれないと思った。


 不思議だけど、とりあえず悪意みたいなモノは感じなかったし、金縛りにもあってないからOKってことで。

  

 それから今年に入って梅雨前後の頃だったか。

 パッと目を開けると、自分の上を今まさにクルクルと回りながら離れていくナニかがあった。


 大きさも回り方もスピナーみたいにクルクルと、回転しながらソレは天井に消えた。


 なに……?

 パッと見、黒と赤だったようなので、イメージとしては『さるぼぼ』人形がまわっているような印象。でも形はもちろんハッキリしない。


 なんだったんだか。

 が、見たのはまたほんの一瞬、1,2秒のことなので、目の錯覚かもしれないと思った。

 目を開いた瞬間の光と、一点を見つめているようで結構動いてしまう瞳の動きのせいかと。

(実際はこんなグルグル回ってたら、病院に行くべきだ)


 三回めは、左側の生成り色の漆喰壁に、赤紫色の蜘蛛の巣に似た網状のモノが見えた。

 大きさはおそらくテレビの26インチくらいか。

 もちろんこれもすぐに消えた。


 うん、これはあれだな。

 よくある、目の裏に見えたりするヤツ――眼閃がんせんだ。

 私は子供の頃から時々あった。最近無くなってきたが。

 星だったり、万華鏡的だったり、赤い網目もしくは泡ぶく模様だったりした。おそらくそれの残像だろう。


 とにかく勝手に納得して気にしないことにした。

 何しろ今まで起き抜け一発だから、目と脳がちゃんと起きてないんだな、きっと。


 しかして一昨日、今度は夢じゃないのはハッキリしていた。

 

 その時私は、布団の中でゴロゴロとしていた。

 いつもながら目が覚めてもすぐに起きずにグズグズしていたのだ。

 

 だりぃ~~、でも寝てるのも飽きたし、なんだか時間を無駄に使っている気がして勿体ない。

 ともかく起きるとしよう。

 と、ゴロッと仰向きになって目を開いた。


 ベランダの上の梁のところに例の時計がある。

 そのすぐ左横に、蜘蛛のようなモノがいた。


 なんというかアシナガクモ、いや、それよりもクモヒトデがずっと近いか。

 真ん中の本体部分(?)は真ん丸で明るめの濃いピンク色。そこからこれまた明るい緑色をした5本以上の足(?)が伸びていた。

 丸いピンクのまわりも同じく緑色で縁どられている。

 ちょっと写真とかで見たら、おそらくイルミネーション的なポップなオモチャか何かだと思うだろう。

 大きさは隣の時計――直径33cm――よりひとまわり大きかった。


 それもやはりすぐに見えなくなった。

 しかし今回は起き抜けではない。

 目を開けた瞬間ではあったが、決して寝ぼけているわけじゃなかった。


 なんだ?? 宇宙グモ?!?


 ヤバいな、私、寝ぼけてるんじゃなくて、とうとう幻覚でも見るようになったのか。

 それとも起き抜けでぼーっとしてる時――今回はウトウトしてないはずだが――だけ見る何かなのか。


 ヤバいトワイライトゾーン・チャンネルが繋がってるのだとしたら、それはそれで怖いなあ……(;´Д`)

 とはいえ、今のところ見えただけで、何かされたわけでもないので気にしなくてもいいのだろうか。


 いや、毎回ウチの仏間ってのが、なんか落ち着かないんだけど。

 家の中にナニかわからんものがいるって事ですよね?


 そういえば昔読んだSFマガジンで読んだ短編で、時間の次元(?)が恐ろしく違うので重なっているのに見えない存在という話があった。

 確か粒子運動がうんたらみたいな理論だったと思うが、よく覚えていない。


 始めは全く何も見えない、感じないのに、どんどん時間を落としていくと、やがて目の前に高速で動いているモノが見えてきて、更に時間を調整すると、やっと相手もこちらに気がつくといった感じの。


 もしかすると見えないだけで普通にいるのかもしれないが。

 例えの対象がはなはだ恐縮だが、通常あっても見えない菌とか、ダニとかノミのように……。(これはサイズ違いだが)

 いや、まずあいつらが見えたら即バスターだな、まったく。


 全く関係ないけど、目次ページの挿絵のノミ型コマンドー、悔しいがちょっとカッコ良いと思った。モノは見方次第だなあ。(意味が全然違う)


 話を戻して、つい霊能力者さんに尋ねてみたいと思ったが、今はコロナ感染防止の頃から休業してらっしゃる。

 う~~ん、これは別に仏間で寝るなという意味でもないだろうが、なんとも如何ともしがたい。


 ちなみに春頃からは、近所の工事が終わったのでまた自分の部屋で就寝している。

 仏間で寝るのは夜寝つきが悪くて、昼下がりに眠くなった時だけだ。

 だからほぼ部屋は薄明るいのである。暗くはない。


 そんな時に見えるもの……?


 ちなみに皆さんも、こんな風に妙なものが見えたことがあるだろうか。

 他の人の不思議エッセイにも、寝起きではないが、奇妙なモノが自分だけ見えていたという話がたまにある。

 そういうことは本当にあるのだろうと、あらためて腑に落ちた感じだ。


 私の部屋では今のところ、このようなモノは見ない。

 まあ、別エッセイで書いたプチ金縛りでの透明な球体(どうやら本当は鳥だったらしい)とか、布団の上に乗って来て英語(!)で囁きかけてきた人でないモノとか(これがキッカケで、後に英語を久しぶりに勉強した)、全てマイルームでの出来事だが、解決済みだし悪いものではないのでクリアー。

 逆にいてくれた方が良い者もいたりして。


 今のところ気にしないのが一番か。

 

 

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