生きる意味

第16話 生きる。

 私には解離性障害というトラウマに起因した持病がある。私には発達障害があり、ある大人から受けた偏見で解離性障害を発症した。それは「発達障害は少年犯罪を起こしやすいから危険だ」というもので、今まで私はその誤った主張にかなり苦しんできた。多くの偏見に満ちた本やネット記事で傷つきながらもある事件によって私は変わった。

 2016年7月26日。私たちの仲間が19人、優生思想を主張した犯人によってその尊い命を奪われた。犯人は小学2年生のとき、作文でこう主張したという。


「戦争をするなら障害者に爆弾を付けて突っ込ませたらいいというもの。戦争に行く人が減るし、家族にとってもいいアイデアだと思った」


 私は胸倉を掴まれたような心地になった。犯人と面談した雨宮処凛さんはこう記している。


「この国では七十数年前、『特攻隊」という形で人間を『自爆攻撃』に使ってきた歴史があるのだった。(中略)ナチスの障害者虐殺は言うまでもないが、この国は一九九〇年代まで障害者に対して強制不妊手術をしていたという歴史も持っている」

 

 人間の命。生きていく意味。簡単には言い表せない命の意味。私が住んでいる町は戦前特攻基地があり、私の家の前の道路は滑走路だったという。命の意味って? 命の尊さって? 

 頭の中にぐるぐると問いが回る。コロナ禍では差別や偏見が大きな問題となった。私が苦しんできた偏見や差別がはっきりと示された。この悪寒。この震え。覚えている。あのときの偏見を受けたときのショックだ。

 

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