第5話 好きになっちゃいけないの?

『下駄箱にある君の靴にくっつきたい』5話

保健室にやってきた南礼司は暗くて、どうしようも無く声がかけづらい状態だった。

松野さんはそんな彼にゆっくりと声をかけた。

『キミは何か悩みがあったからここに来たんだよね。打ち明けられなくてもいいんだ。紙に書いて伝えてくれてもいい。キミがここに来た意味がきっとあるはずだからさ』

南くんは重い口を開いた。

『俺はゲイなんですか?俺には好きな人がいます。彼は僕のことを友人として幼馴染として見ています。でも、俺は彼を恋愛対象として見ているんです。誰かにこの悩みみたいなことを言いたいけど、周りはきっと好奇な目で見て、それで俺のことを傷つけるはずです。俺は...そんなの耐えられないです。でも、俺は彼が好きなんです。彼の笑顔や何もかもを好きと表現する彼に惚れているんです。でも、もう誰にも相談出来ない気持ちをどこで言えばいいんですか。俺はもう耐えられないです』

泣きそうな彼に松野さんは言う。

『しんどいし、辛いよな。でも、よく頑張って言ってくれた。もう、心配しなくていいんだよ。キミの好きは正真正銘な大好きなんだから、それを曲げる必要もない。キミはもっと言いたいこともあると思う。この時間じゃ足りないくらいね。もし、また気持ちがいっぱいいっぱいになったらここに電話してほしい。これは僕の番号だから。出られない時もあるかもしれないけど、ちゃんと折り返して電話するから。いいかい、辛くても苦しくても生きていてくれ』

南は目を擦り、はいと返事をして保健室を出た。

彼ら2人の様子を見て松野さんは保健室の先生に話した。

『中学生って難しいですね。でも、2人とも全然性格も何もかもが違いますね』

すると保健室の先生である宇田先生は松野さんにお茶を差し出し言った。

『ルーカスくんは好きの嘘が上手いのよ。だから周りから人たらしって言われるけど、本当は人を愛したい子でもあるの。それで、南くんはあんなに暗い子では普段はないのだけど、きっと本当に愛したい子に嫌われてしまうことも怖いし、周りが自分の印象を変えてしまうことにも怯えているんじゃないのかなって私は思うわ』

それをお茶を飲みながら松野さんは聞き、なるほどっと言った。

彼は最後に言った。

『もし、またその2人に何か進展があったらこの電話にかけてもらえますか。なにかあればですが...』

宇田先生は言った。

『本当は生徒の個人情報は言いたくないけど、医師のあなたなら信用もできるし、分かりました。何かあったらですけどね』

そういって松野さんは保健室を出ていった。

松野秀喜、彼はゲイであり医師でもあったのだった。


ジェンダーについて話した講義はクラスで話題になっていたのだった。保健室から15分違いで帰ってきた2人はクラスがザワザワしている状態に対してルーカスは言うのだった。

さて、ルーカスは何を言うのだろうか。

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