陰キャの気まぐれで泣いている女の子を慰めたら、次々と絶世美女が絡んでくるようになりました

柊オレオン

第一章:一幕 波人、河川敷の橋の下で彼女と出会う

第1話 『クラスで一番可愛い女の子』

 僕にとって高校生活とは楽しく、笑い合って、みんなと共に高め合い、時には恋人の自慢話をしたりと楽しい生活だと思っていた。


 だが現実は違う、入学早々、僕は風邪を引き、休んでしまった。


 二日後に初めて教室に入るとすでにグループはほぼ形になっており、気づかないうちに僕は陰キャぼっちへとなっていた。


 いわゆる友達作りに失敗したっていう状況だ。


 これは不味いと思い、なんとか友達を作るも皆、僕と同じ境遇ばかり、もちろん仲良くなった。


 楽しかったし、いい思い出にもなった、けど2年生に進級し、僕は悟った。


 2年生に進級すると皆バラバラになり、そっけなくなった。


 僕と友達の関係は1年限りのものだったんだ。


 最初は同じ境遇ばかりの集まり、負け組の集まりだと、思って心のどこかで蔑んでいたけど、この1年、いろんなことを共に過ごし、一緒にやってきて、楽しかった。


 これが友達と遊ぶということなのだと、理解して、自分の考えが情けなくなったのに、クラスが変われば、他人になる、だったら、友達なんて作らないほうがいいじゃないか。


 高校生活に夢を見なければいいじゃないか。


 僕は進級と共に友達を作ることをやめた。


 友達を作ってもクラスが変われば他人になるのなら、最初っから作らなければ、よそよそしくなる事もないし、気をつかうこともない。


 こうして僕、五十嵐波人(いがらしなみと)は友達を作らないと決めた高校生活、2年目が始まった。


 高校2年生となり、クラスは2年B組に、僕はいつも通り、席につく。


「よっしゃぁ!!今日も勝ち!!」

「くそ!!また負けた…」


 男子生徒の楽しげな声が響く、どうやらスマホで何かしらのゲームをしているらしい。


 ある一人の男子生徒は勝ったのか、ガッツポーズを決め、負けた男子生徒は机にもたれかかる。


「ちょっと男子、静かにしなさいよ…みんなに迷惑でしょ」


 男子生徒に帯びることなく、高圧的な声を発する女子生徒、その言葉に共感するように周りの女子生徒も声を上げる。


「そうよ、もうちょっとボリューム下げれないの?」

「ちっ…わかったよ」


 イライラを見せながらも素直に謝った男子生徒、流石に女子が敵では反論もできないのだろう。


「それでいいのよ、ごめんね…渚ちゃん会話を遮っちゃって…」

「全然大丈夫だよ、むしろちょっと驚いちゃった…」


 天音渚(あまねなぎさ)、クラスのあだ名は『クラスで一番可愛い女の子』で有名だ。


 黒髪のロングヘアーに綺麗な佇まい、誰にでも優しく接する広い心を持ち、成績も常にトップに君臨し、運動神経も抜群で、正真正銘、大人気な美少女女子高生だ。


 彼女は入学当初から有名人で、僕ですらも耳に挟んだことがある。


 さらに天音渚には色々な伝説を残している。


 大人気なサッカー部、バスケ部、テニス部、水泳部の部長から告白されたとか、風の噂では大人気俳優に告白されたなどが囁かれていた。


 実際に部長の告白は本当にあったらしいが、俳優の告白に関してはまだ真実が明らかになっていない。


「ねぇねぇ、昨日さぁ、めっちゃ美味しいケーキ屋さん、見つけたんだよね〜〜渚ちゃんも一緒にどう?」


「いいですね、一体どこのケーキ屋なの?」

「ここ!!河川敷を真っ直ぐ進んで、右に曲がるとあるんだけど…」


 と楽しげな声がクラス内で響き渡る。


 そんな楽しそうな声が耳元へ聞こえてくる中、僕が本を読んでいると、チャイムが鳴り響く。


「お〜い、私の大切な生徒たち!!席につけ〜〜朝礼の時間だぞ〜〜」


 天真爛漫な声、生徒たちは素直に席に戻り、担任の先生は教卓の前に立つ。


 トントンっと名簿を整え、先生は口元の口角を上げて、元気に挨拶をする。


「おはよう!!みんな元気かな?元気かな?うんうん…そうか元気か〜〜それはよかった!!」


「先生〜〜今日も元気ですね」

「そう!!私は元気が取り柄だからね、常に笑顔を絶やさないのが私の…ってそう言っている場合じゃなかった、出席を取るぞい」


 先生は名簿を開き、一人一人名前を確認して、出席確認を行った。


 一人一人の生徒が元気な声で『はい!!』と返事する、そんな光景を見て先生は元気よく頷く。


 そして僕の名前を呼ばれた時、小さく『…はい』と返事をした。


「波人、声が小さいぞ、もっと元気よく返事をしよう…ね」


 僕にとって最も相性が悪いのがこういう元気な先生だ、だってちょっと返事が小さいからってこうやって元気な挨拶を強要する。


 別にからかってやっているわけではないのだろうけど、それでも強要されるのは嫌いだ。


「先生、人には大きな声を出すのが恥ずかしいと思う生徒もいます、無理に大きな声を出させるのはよくないかと」


 なんと、天音渚が先生に対して、言葉を挟んだ。


「確かにそうだね、すまない波人くん…」

「い、いえ」


 先生は簡単に謝った、これが天音渚の力。


 僕はホッとして、再び本を広げると、何か視線を感じた。


 こっそり本で顔を隠し、視線を感じる方に目線を向けると、天音渚がこちらを見つめていた。


ーーいやいや、きっと別の方向を見ていたんだ、俺みたいな陰キャなんかを


 と、再び目線を向けると、やっぱり天音渚は見つめていた。


ーー待て待て、考えろ、よくあるじゃないか、自分を見つめているんじゃないのか、と思いきや、実はその後ろを見ていた、的なやつ、きっとそれだ…そうに違いない


 俺は自分に言い聞かせたが、どうしても気になった、だって『クラスで一番可愛い女の子』で有名な天音渚が見つめているんだぞ、気にならない男子生徒なんていない。


 よくよく耳を澄ますと、周りの男子生徒が……。


「おいおい、渚ちゃんがこっち見てる」

「マジか、きっと俺を見ているんだぜ」

「いやいや、俺だろう」


 と僕の周りがざわめていた。


 まぁ当然の反応だろう、どの角度から見ても可愛い女の子が見つめていたら、誰だって期待する。


 どうしても気になる自分がいて、俺は正真正銘の最後のちら見、3回目を試みる。


 より警戒を強め、ゆっくりと本で隠した顔をずらしながら、覗いてみると、天音渚は教卓の先の先生を見つめていた。


 俺の心はホッとした、重い錘(おまり)がなくなり、心が軽くなった気分になる。


「よし、出席確認終わり!!じゃあ、次は……自己紹介よ、もう2年生だから、いらないかもしれないけど…やっぱり親睦を深める上で相手の好きな食べ物や得意なスポーツ、趣味を知ることは重要よ、てなわけで、明後日までに自己紹介を考えてくること…」


 進級後にほとんどの高校が実施する自己紹介、これに関して僕は特になんとも思わないのだが…問題は……。


「自己紹介は明後日に発表してもらうからね」


 そう、自己紹介は考えるだけでなく、人前で発表するという、陰キャにとって苦行をやらなくてはいけない。


 まだ1年生の時は、初めましてを兼ねてまだ楽だが、2年生にもなると、友好関係でテンションが変わる、言っている意味がわからないと思うが、考えても見てほしい。


 自己紹介をして最も恥ずかしい場面とはなんだと思う?それは、『沈黙』である。


 では『沈黙』の発生の原因、それは友好関係にある、ここでテンションがつながってくる。


 基本的に友人が多い人間は自己紹介で『沈黙』はない、だが友人が少ない人はどうしても『沈黙』に陥ったりする、これはテンションを上げてくれる人がいないためである。


 これはあくまで僕の見解だが、ほぼ間違いない、そしてその陥る『沈黙』がどれだけきつく、つらいものか、僕は知っている。


「はぁ〜〜どうしよう」


 とボソリと弱い音を吐く。

 こうして僕の2年生、最初の難題『自己紹介』の発表が降りかかる。


ーーーーーーーーーー


この作品の最初は3話一気投稿になります。


目指すはカクヨムコンテスト8、ラブコメ部門大賞!!


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