第27話 託す

 ある日、西木くんから大事な話があると言われた。


 チームセブンの事務所で待ち合わせをしたので、夕方の約束した時間に会いに行くと、先に彼が待っていた。予定よりも早く来て、俺の到着を待っていたようだ。


「お疲れ様です!」


 彼は座っていた椅子から立ち上がって、挨拶してくれた。少し緊張したような顔で待っていたので、かなり大事な話のようだ。


「うん、お疲れ様。待たせたかな?」

「いいえ、全然大丈夫ですよ」


 最近は、西木くんの方が忙しい。暇な俺は、いつでも呼び出してくれていいのに。年上だから、やっぱり気を使っちゃうかな。


「どこで話す?」

「会議室を借りているので、そこで」

「わかった、行こう」


 西木くんが事務所の会議室を借りているらしいので、2人で向かう。普段はチームセブンの戦略や方針、大会に向けた予定の会議などを行っている部屋。そこを使って話をするようだ。


 会議室に入って扉を閉める。2人だけになり、向かい合って席に座る。本題に入る前に、軽く雑談しておく。西木くんの最近の活躍について。


「実況の動画、すごく順調のようだね」

「はい。おかげさまで、登録者が5万人を超えました。再生回数も、どんどん増えています」

「えぇ!? 凄いじゃないか」


 多くの人たちに登録してもらっている。現在、活躍している実況者の中でもトップレベルの人気だろう。彼の活躍により、チームセブンの認知度も徐々に上がっているのを感じていた。


「いえ、これも皆さんのおかげだと思っています。撮影に協力してくれて、撮影した動画も面白く編集してくれる。スタッフの皆さんの支えがあってこそ、です」

「そうだね。でも君も実力があったからこそ、この結果になったんだと俺は思うな」

「ありがとうございます。……そうだったら、とっても嬉しいです」


 謙虚な姿勢を見せる彼。その表情から嬉しさが伝わってくる。西木くんに任せて、大正解だったと思う。チームセブン代表の中西さんも、彼を高く評価していた。


 西木くんはチームセブンに対して、多大な貢献をしている。


 これから、もっと活躍していきそうだ。だけど、あまりプレッシャーをかけすぎないように注意して、静かに見守っていきたい。俺も何か力になれたらと思いながら、しばらく会話を続けた。




「それで、実は……」

「うん。どうした?」


 雑談が終わると、とても真剣な表情で本題に入る西木くん。彼の話をちゃんと聞くために、俺も集中する。そして、彼はこう言った。


「次の大会からは、上瀬さんが出場メンバーに入って下さい。俺は、補欠要員として待機したいと思います」

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