第5話 少年との対戦

「お、おい、春原くん。この人は、とても有名で凄い人なんだよ。おっさんなんて、そんな失礼な口の利き方をしちゃダメだ」

「有名なの? 俺は知らないよ。それより、対戦するの? しないの?」

「いや、だから!」


 突然突っかかってきた春原くんという少年を中西さんが止めようとするけれども、彼は止まらず噛みついてくる。春原くんは、14歳か15歳ぐらいの中学生ぐらい。まだ若そうなので、生意気なのは仕方ない。可愛いものだ。


「大丈夫ですよ、中西さん」

「いや、でも……」

「それじゃあ、戦おうか春原くん」

「あぁ。勝負だ、おっさん」


 春原くんの生意気な態度に、心配そうな表情を浮かべる中西さん。どうやら彼は、ゲームの腕に相当な自信があるようだ。なので、容赦なく叩き潰してあげよう。




 さっきまで座っていたパソコンの前に戻った春原くんは、対戦の準備を始める。


「対戦ルームを作ったから、入ってきて」

「うん。すぐ行くから、待ってて」


 対戦するための部屋を作って、春原くんが入ってくのを待った。そして、彼を対戦相手のチームに設定した後に部屋の鍵を解放した。仲間はオンラインから募集して、見知らぬプレイヤーを入れて対戦する。


 対戦のルールとマップは、大会などでも採用されているものと同じにする。これでお互いの実力を試すことが出来る。本当なら、仲間のプレイヤーも知り合いを集めてきて対戦したほうが実力は測れそうだけど。とりあえず、これで競い合うか。


「よし、試合を開始するよ春原くん」

「いつでも良いよ。おっさんには絶対に負けない」


 こうして試合が始まった。


「よしっ!」


 真っ先に飛び出してきた相手プレイヤーは、春原くんか。彼は瞬時にプレイヤーを一人キルすることに成功していた。かなりスピードが早く、大胆だった。腕前は確かなようだ。


 だけど、一人で前に出すぎだな。それだけの実力があっても、少し迂闊すぎる。


「なっ!?」


 もう一人のプレイヤーをキルする前に、仕留める。隙を突いて倒せたから、驚きの声を上げているのが聞こえた。


 そのまま、相手チームは崩れてしまう。先制ポイントは、コチラが獲得した。


「ぐぐぐっ……!」


 ゲームの腕前はある。センスも良い。けれども、まだまだ落ち着きが足りないな。色々なパターンで攻めてくるが、全ての攻撃を防ぐことに成功した。そして、試合はあっという間に終了。


「まだ! もう一試合しよう!」

「あぁ、いいよ」


 ということで、負けず嫌いらしい春原くんは即座に再戦を申し込んでくる。生意気だけど、その性格は嫌いじゃない。戦いの中で、色々と動き方を変えながら勝とうと必死になっているのが分かる。だからこそ、とことん付き合おうと思った。


 こうして、俺と春原くんの戦いは続いた。

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