反応

 僕の変化はそれ程の間をおかずクラスメイトに受け入れられた。と思う。

 五時間目が終わってかじくんとゲームの話をしているところに女子が声をかけてきた。


嵩賀谷かさがやくん今日の放課後時間ある?」

「少しなら」

「カラオケ行かね?」

「少しって言ってるのにカラオケはないっしょ」

「あ、それもそっか」

「別に警戒しなくていいよ。嵩賀谷かさがやくんが変わった理由が知りたいんだから」

「そうそう、この前までパッとしなかったのに急に変わったからさ」

「絶対、なんかあったでしょ?」

「えっ、そうなん?それ、面白そう」


 矢継ぎ早に声をかけてくるけど女子は僕が変わった理由に興味があるみたい。男子は女子がいるから集まってきただけじゃないかな?

大翔ひろとくんも興味あるよね?」

「俺?そうだなあ、少し気になるかな」

「そうだよねえ」

「じゃあ、放課後残ってね嵩賀谷かさがやくん」


「お〜い、そこ席に着けよ」

 六時間目の開始を告げるチャイムが鳴る前に数学の教師が入ってくる。

「は〜い」

「せんせー、早いよ〜」

 皆んな、それぞれの席に戻って行く。


嵩賀谷かさがや、ごめんな」

「ん、なんで?」

「お節介かと思ったけど少しは皆んなと仲良くなれるかなと思って」

「ううん、ありがとう」

 授業開始を告げるチャイムが鳴って、僕はこの日最後の授業に集中する。



「じゃあ、聞かせてもらおうかな嵩賀谷かさがやくん」

 最初に僕に声をかけてきた女子、橋本はしもとさん。

 ショートヘアの元気な印象。

「そうだよ、一体何があったらそんなに急に変わったの?」

 橋本はしもとさんとよく一緒にいる橋田はしださん。

 ロングヘアのおとなし目な感じの人。

「あ〜、待って待って」

 パタパタと足音を立てて走ってきたのは矢田やださん。

 ミディアムヘアの女子。

「お〜、俺らも混ぜて」

 蘆屋あしやくんと佐々木ささきくんがやって来た。

 蘆屋あしやくんは赤みがかった茶髪の賑やかな男子。

 佐々木ささきくんは爽やかな印象の男子。

 かじくん、波木里はきりくん、喜多村きたむらくん。

 有岡ありおかさん、伊吹いぶきさん、谷岡たにおかさんといった面子めんつが集まっていた。


嵩賀谷かさがやも予定があるみたいだし、部活組もいるから4時までな」

 あと15分程で4時。かじくんが気を利かせてくれたんだと思う。


「それで、嵩賀谷かさがやくんが変わった原因は?」

 皆んなの視線が僕に集中する。

「その前に初絡みだし、自己紹介しよっか」

「あ、そうだね」


 その後、自己紹介を簡単に済ませて僕が変わった原因を話す事になった。

 僕に彼女ができた事が理由だと知った女子はきゃーっと黄色い声をあげ、佐々木ささきくんは『先を越された』と言って机に手をついてガックリとしていた。


 佐々木ささきくんは橋田はしださんに好意を寄せている様に見えた。僕が気づくくらいだから皆んなも気づいてるんじゃないかな?


「俺、そろそろ部活に行くよ」

 かじくんがそう言って席を立つ。

「あ、僕もそろそろ帰るね」

「じゃあ、私たちも帰ろうか」

「そうだね〜」

「俺も部活行くかぁ」

 珍しく賑やかな時間を過ごしてから家に帰る事になった。

 こんな風に放課後をみんなで過ごしたのは小学校以来だったかも。


 部活に行くかじくんに気になった事を訊ねた。

佐々木ささきくんは橋田はしださんの事が好きなの?」

「あ、やっぱり分かる」

「うん」

「まあ、皆んな静観してるよ」

「そうなんだ」

「でも、嵩賀谷かさがやもそういう事、気になるんだな」

「変かな?」

「良いんじゃない。そうやって他人とも関わっていければ」

「そうだね。ありがと」

「ああ、じゃあ俺、こっちだから」

「うん、また明日」


 下駄箱で靴を履き替えてかじくんと別れる。

 いつもより少しだけ遅い下校。

 でも、悪くない。そう思えた。

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