リアル幼馴染とのリアルな事情

久野真一

なかざわまゆこ(仮名)との関係

 唐突に思いついて書き始めた本連載ですが、特に深い目的はありません。ただ、なんとなく自分が経験してきたところの「幼馴染同士の間柄」みたいなのを書き残して伝えられたらなというくらいの気持ちです。


 気楽に楽しんでいただければ嬉しいです。


 最初は、幼馴染の異性では一番長い付き合いになる、なかざわまゆこちゃん(仮名)とのお話です。


 まゆこちゃんとの付き合いは当然ながら小学校の頃に遡るのですが、じゃあ彼女と特別な一対一の思い出があったかというと……実はよく覚えていません。


 皆と遊ぶ中で鬼ごっこしたりかくれんぼしたりした思い出はあるんですけど、一対一だとあんまりないのじゃないかなあというのが正直なところですが。ただ、まゆこちゃんは割と活発な方だったので遊んだ頻度は高めだったとは思います。


 私の父は裁判官(判事)だったこともあって、裁判官の官舎に住んでいたのですが、まゆこちゃんはLマンションという付近では有名なマンションの6F辺りに住んでいました。出身小学校でLマンションに住んでいた奴は覚えてる限りで6名以上はいるので珍しいものでもないのですが。


 当時、Lマンション7Fに住んでいた、きぬさやしんた君(仮名)の家に私はよく遊びに行って頻繁にゲームをしていたのでその関係で彼女とも時々ニアミスをしてましたし、同じくLマンション6Fに住んでいたおくだかずき君(仮名)の家も時たま遊びに行ったりしたので、やっぱりこのときにもなんかニアミスしてました。


 まゆこちゃんの家だったか記憶が多少曖昧なのですが、彼女の誕生会があるときに「僕も行きたい!」と行ったら「真一まいちは足臭いからあかん!」と言われたことがありまして、その時に「ちゃんと靴下を履くから」と泣き落としをして誕生会に入れてもらった記憶があります。とっても情けないですね。当時の私は靴下が気持ち悪くて嫌だった子どもだったので、小二くらいまで素足だったのです。足の匂いが靴に移るわけで家に上がったら実際臭かったのだろうなと思います。


 ともあれ、小学校を卒業するまでそこそこ仲良くしてましたが、中学校以降は基本的にあまり交流していません。私が京都の中高一貫校に進学したせいで連絡取りづらくなったというのも大きいのですが。


 そんなこんなで中高は没交流だったのですが、再会のきっかけは成人式です。もう一人の幼馴染で同性では一番の親友といえる、かなもりゆうき君(仮名)とは中高となんだかんだと付き合いが続いていたのですが、成人式の直前に「真一。そっちやったら成人式出ても知り合いおらんやろ?こっちの成人式来いや」そんな感じの電話がかかってきたのでした。この時は確か京都の実家だったのかな?


 ともあれ、そんなお誘いを受けて、かなもり君やしんた君など、複数名がLマンションに集まって成人式に行ったのが再会のきっかけでしょうか。まゆこちゃんとは確か成人式会場で顔をあわせたのですが、再会の一声は「真一やん。めっちゃひさしぶりー!」みたいなそんな感じだった気がします。私がそれにどう返したのかは覚えていないのですが「おお。なかざわやん。ひさしぶりー!」みたいな感じでハイタッチをした……気がします。記憶が美化されてないといいのですが。ともあれそんなきっかけでまゆこちゃんとの交流が再会したのでした。


 以降は京都の方面に帰ってくるたびに皆でかなもり君やしんた君の家に泊まって馬鹿騒ぎするような関係になったのですが(これに絡むエピソードはまた別のお話で)、大学を卒業して皆就職するようになると関係も変わらざるを得なくなります。そんな、大学最後の思い出にということなのか、当時、京都の鞍馬温泉への卒業旅行を……これ、誰に聞いても誰が企画したのかさっぱり覚えてないのが謎なのですが、私、かなもり君、まゆこちゃん、しんた君、その他二名(この二名は後に結婚。また別のお話で書くかもしれません)でした。


 その卒業旅行ですが、盛り上がったかどうかというと、なんか普通に美味しいご飯食べて温泉入って、飲みながらだべって皆で雑魚寝したってだけな気がします。特に男女で部屋分けようとならなかったのは、昔からの付き合いだからでしょうか。さすがに布団を敷くスペースは男女で分けてた……記憶がありますが、それも今となっては少し怪しいです。


 そんなまゆこちゃんも、私が大学院生の頃に結婚。当時、結婚式の招待状が届いたのを覚えています。しかし、あろうことか私は発表があった学会を優先するということをしてしまったのですが、社会人的には優先度は親しい友人の結婚式>>学会発表であるらしく、当時から親しくしていた先生に「学会より結婚式優先した方が良かったんじゃないかな?」と言われたのを覚えています。これはなんていうか不義理にも程があるというか、今でも時折思い出しては申し訳なかったなあと思うお話です。まゆこちゃんにしてみれば、昔馴染として招待状送ったら学会優先されたわけですからね……。

 

 まあ、ともあれ、その後は彼女も家庭を持ったこともあって多忙になったことで会ったり会わなくなったり……はあんまりなくて、年一くらいでは会ってます。彼女、義理堅いので小学校同期組で集まろうという誘いがあったらほとんど皆勤賞みたいな子だったので。


 私も基本的にはそういう集まりには原則的に参加するのもあって、なんだかんだと付き合いが続いて今に至るという感じです。彼女との個々のエピソードはまた別のお話にて。


 そんな彼女の性格ですが、一言で言うと細かいことを気にしないおおらかな性格だけど、飲み会大好きで体力お化けで酒豪という感じです。一方で、集まりにはきっちり顔を出す律儀さと、道徳や倫理については厳しめというかやや古風な価値観があって、人情の機微には繊細なところがあるというのが私からみた彼女評価でしょうか。よくわからないところで天然ボケをかましたり、二十代の頃はなんかよくわからない絡み酒された記憶もありますが、さすがに最近は天然ボケはともかく酒によってよくわからないことはしなくなったですね。


 彼女との長い付き合いの中でとても印象に残っている一言があります。30代はじめ頃か中頃、私が独り身で寂しい気持ちを抱えていた頃でしょうか。


「ウチはな。真一が幸せになって欲しいって思っとるんや。それは忘れんといてな」


 そんな台詞でした。正直、ちょっとうるっと来てしまいましたし(笑)、やっぱりまゆこちゃんはええ奴やなーと再認識したのもこの台詞があったからともいえます。


 というわけで一話はそんな彼女との関係概略です。中高と没交流だったという点ではフィクション的幼馴染的関係からするとややブランクが大きいとは言えるかもしれません。


 ただ、未だにお互いに小学校の頃の事を語れと言われれば語れるし、「歳をとったら皆で一緒に旅行に行きたい」というメッセージをくれたりするその背景には「ずっと友達を続けたい」という願いがたぶんあって、そんな自分たちはやっぱり幼馴染であるのかなと感じています。

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