第3話 こころの深淵


 横浜を過ぎ保土ヶ谷が近くになる。

最初のトンネルがブラックホールの如く迫ってくる。


 ああ……吸い込まれる!


 突然、列車が暗闇に吸い込まれてゆく。

悪友のふざける笑顔が一抹の光の中でクラッシュした。


 厄払い、タイムスリップだと。


 何処に戻れというのか? 冗談を言うんじゃないぜ。もう引き返すことなど出来はしない。あれは振られたんじゃない。お互いにやむを得ない事情があったのだ。


「他人の不幸は密な味」


 そんなことばかりを喜ぶ、お前らなんかに分かるもんか! 悔し涙がとめどなく溢れてくる。


 この里帰りで、本当はもっと穏やかにひとり物思いに耽りたかった。今夜は本当についていない。


 そんな思いでいると、よりによって憎らしい父親の顔まで、再び、疫病神の如く脳裏に迷い込んでくる。「もう、勘弁してくれ」と叫びたくなっていた。


 

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