貞操逆転世界の野郎争奪杯

甘党羊

第1話 監禁&パァン

 頭を空っぽにしてお読み下さい。多分これくらいの下ならセーフなはず。下ネタ苦手な方はご注意ください。それと、女性蔑視等の意図は御座いません。

 これ、ジャンルは異世界ファンタジーでいいのかな? 現代ファンタジー? SF? どれかな? まぁいいか。とりあえず10話まで出来ていますので一日一話投下していきます。それ以降は不定期更新の予定。

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 ――貞操逆転世界


 それは、全男の浪漫ではなかろうか。


 モテない男、童貞男、現実に疲れ果てた男達に限らず、モテ男や遊び人達でも一度はそんな世界へ行けたらと妄想したはずである。そのジャンルを知っていればだが⋯⋯

 女の子とイチャイチャして癒されたい野郎、優越感を味わいたい野郎、ハーレム願望を拗らせちゃった野郎、どエロい美女に筆下ろされたい野郎が願う野郎共の夢の果てにある理想郷。


 仕事は子作り、精子提供など、社会の畜生をこれでもかと経験した猛者共も吃驚なホワイト(意味深)で歪んだ社会。


 もし、そんな世界に来れたのなら人生勝ち組。死因は腹上死確実!!

 宝くじの高額当選を果たすよりも、ある意味では男にとって嬉しい世界ではないであろうか。



 もし、そんな世界に行けるとしたら⋯⋯野郎共は例えそれが片道切符であろうとも、全財産や築いてきた地位をかなぐり捨ててでも、何がなんでも片道切符を手にしてやろうと飛びつくだろう。倍率は多分、というか確実にヤバい事になると思う。


 さて、今回、偶々、そんな世界に紛れ込んでしまった幸運? な男がいる。その男も例に漏れず、そのような妄想をしていた内の一人だった。


 小説でよく見る貞操逆転世界、男に優しい世界。


 ありふれた貞操逆転世界。





 だが、実際本当に男が少なければどうなるだろう?


 数少ない一人の男を巡って骨肉の争いを繰り広げる世界かもしれない。

 他人を蹴落としてでも、その果てにある甘美な性行為を望む世界かもしれない。

 はたまた小説通りのハーレム上等、男は共有資産、選んで貰えるように女が血反吐を吐く努力を日々している世界かもしれない。


 だが、その実態は、本当に行ってみないと誰にもわからない―――






 ◆◆◆◆◆◆◆




 ガッシャンガッシャン――


 真っ暗な部屋に無骨な金属音が木霊する。


 その音を立てているのは全裸の男。


 四肢を鎖で繋がれ、口には猿轡が噛まされている。


 紛うことなき拉致監禁、もしくはプレイ――


 一つ言える事は、男が決して望んでそうなったのではないという事である。それだけは男の名誉の為に言っておこう。


「――――ンンンンンンッッ!!」


 ――ガシャンガシャン


「――――ンンンンンンッッ!!」


 ――ガシャンガシャン



 声はコレ以外には出せない。

 身体の可動範囲は身動ぎ程度。

 視界は0。目隠しをされているかと疑ったのだが、瞼に当たる感触はひんやりとした空気以外に何も無かった。


(どうしてこうなった⋯⋯)


 男はこうなった経緯を知ろうと、こうなる以前の事を思い出そうと必死に脳を働かせていた。


(なんでこんな事に⋯⋯ッッ)


 悔しさから歯噛みしようにも猿轡が邪魔をする。


(俺は久しぶりの休日にちょっと贅沢な食事をしようとして外出した筈だよな? それがなんでこんな事になっているんだよッッ)


「――――ンンンンンンッッ!!!!」


(目的の店に着いたと思ったら⋯⋯次の瞬間にはこうなっていた⋯⋯訳がわからない⋯⋯)


 ガシャンガシャンと鎖が虚しく鳴る。


 耳に障る。煩わしい。


 こんな監禁染みた事をされる覚えはない。本当に自慢するような事ではないが、ただただ平凡な独身リーマンでしかない俺を拉致ってコレを計画した犯人が何を得するというのか。


(誰か出て来いよ!! ここから解放しろ!!)


 可動範囲が少ないなりに暴れて音を出し続ける。


 犯人が気付いて見に来てくれるか、誰かの助けを期待して、一人真っ暗闇の中ただ只管力尽きるまで自分の存在をアピールし続けた。




 ◆◆◆◆◆◆◆




「⋯⋯はぁっ⋯⋯はぁっ」


 胸の動悸が激しい。


 心臓の鼓動で無駄に育った胸の肉が揺れている。全く以て煩わしい。こんなもの削ぎ落としてしまおうと何度考えた事か⋯⋯いや、今はこんなモノの事はどうでもいいか。


 こんな幸運、多分二度と無い。その位今の幸福な出来事に興奮している。ショーツが重くて仕方ない。


 ――クソみたいな仕事からの帰り道、私は一人の行き倒れを見つけた。

 その行き倒れたヤツの大きさから、アソコに蜘蛛の巣の張った大女が酔い潰れて寝ていただけだろうと一度はスルーして通り抜けようとした。こんな事は日常茶飯事で特段珍しい事でもなんでもないから。

 でもこの時、行き倒れの横に差し掛かった時に私のアソコが酷く疼いたのだ。その時感じた直感に従って抱き起こしてみると、なんと男ではないか!! スルーしなくてよかった。それで、まぁ拉致った。


 勿論、この様な事がバレたら只では済まない。


 ――生殖可能な男性の誘拐及び監禁


 この世界で一番多く起こる重犯罪。どんな聖人君子だろうが内心ではしたいと思っている。

 良くて、懲役ウン十年、悪ければ死刑かそれに等しい刑罰が待っている。


 ――が、そんな事はバレなければどうとでも誤魔化せる。バレなければ犯罪にはならない。バレなければ立件できない。バレなければそもそも露見しない。


「うふふふふふっ⋯⋯何時この様な事が起こってもいい様に監視カメラの位置は全て把握済みだったから絶対に映らないように此処まで来たわ。運ぶ時もそう、一切監視カメラに捉えられないように細心の注意を払った。それに誰にも遭遇していないし、すれ違ったのは対向車くらいだけどアレはトランクの中だもの、バレないわ⋯⋯尾行しているのも居なかった⋯⋯完璧よ。うふふふふふふふ」


 独り言をこれでもかというほど言い放った後、彼女は両の手を大きく広げて嗤い続け、幸福に浸る。

 現在地は僻地にある廃墟。ゴリゴリのホラーオタクか廃墟オタクしかこない事はリサーチ済み。

 男を拾った時点で会社には一身上の都合で辞めさせて貰うと伝えてある。繁忙期では無い事、大して有用な立場には居なかった事、引き継ぐ事項も特に無い事も幸いし、有給消化となった。


「ギャハハハハッ!! 全てが私に都合良く世界が回っているわ!! 嗚呼、私はなんて幸運なんでしょうっっ!!!!」


 あの男は契約婚を示す腕輪や婚姻を示す指輪はしていなかった。という事は、まさかのフリーである。

 腕輪か指輪をしていれば妻気取りの肉塊共が騒いで問題になっていたが、それは無い。

 それになんと言ってもチ〇コがデカかった。勃起していないふにゃふにゃの状態で、知識として教えられていたチ〇コよりも遥かにデカかったのだ。


 都合のいい展開、都合のいい男、チ〇コのデカイイ男を拾うという喪女の妄想垂れ流し小説も裸足で逃げ出す神展開。圧倒的僥倖。これはもう、人生勝ち組中の勝ち組。


「神なんて信じてなかったけど、これからは信じちゃうわっ!!! 嗚呼、神様⋯⋯ありがとう!! 私からの感謝を捧げますわっっ!!」


 ふと、昔にニュースか何かで見た神への感謝の儀式を思い出した。その流れで人生で一度もした事のないガチの神への感謝オナニーを始めた。それはもう自身の拳をぶち込む勢いであった。


 圧倒的幸運が重なり続けた結果、狂った女にトチ狂った信仰心が芽生えた。


 そのようにして始まった祭事兼禊という名目のただの自慰は、それから二時間以上ノンストップで行われ続けた。

 盛大にイきまくって満足した女は、イき疲れてそのまま寝てしまった。起きた後の事を考え、だらしなく緩んだ笑顔を晒したまま⋯⋯




 ◆◆◆◆◆◆◆




「――――ァァァ⋯⋯」


 考えが甘かった⋯⋯


 ――ジャラッ


 どれだけ叫ぼうが、どれだけ足掻こうが、助けも犯人もやって来なかった。

 そして抵抗し続けた身体はとうとう限界を迎え、ガシャンガシャンと勢い良く鳴らせていた鎖も、元気の無い音しか鳴らせていない。


「――――⋯⋯ァ」


 暗闇に目が慣れてもいい筈なのに、一向に目は黒以外何も映そうとしない。


 時間も場所も犯人の目的も、何もかもがわからない。俺みたいな小市民を拉致っても得られる金はせいぜい小銭程度。デメリットに比べてメリットの方が少なすぎる。

 もちろん、サツからしても小市民だから解決に向けて動く熱量は要人や女性に比べて圧倒的に低いだろう。こりゃあ死ぬ可能性が高いなと押し寄せる絶望感に潰れそうになる。


 それにぬっくぬくな温室栽培の現代人には、この状況全てが劣悪で、事態が好転するのを耐えて待つ気力すらも喪われていく。


「――――⋯⋯」


 喉からは喘鳴に似た音だけが漏れ出すが、猿轡がそれすらも許さず、口から漏れるのは情けない吐息。


(ラノベの主人公なら⋯⋯この状況でも何とかしようとするだろうけど、俺には無理だ⋯⋯何も、出来ない)


 あまりの無力感に、抵抗を諦めて目を閉じる。


 願うは次に目が覚めた時には、勝手知ったる自分の家だったらいいな、と願いながら――




 ◆◆◆◆◆◆◆




「ターゲットを確認。ヌキ疲れて寝ている」


『⋯⋯よし、殺れ』


「了解」


『メインターゲットは怪我をさせずに確保してくれ。くれぐれも味見をしようなどと思うな⋯⋯いいな』


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ッスゥゥ⋯⋯了解」


『おい、くれぐれも「突入する」⋯⋯あのクソ女郎、切りやがった』



 ――この会話から凡そ三分後、廃墟に“パァン”と乾いた音が一つ鳴り響いた。




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 ・人物紹介&ちょっとした説明


 神坂かみさか 祭莉まつり

 27歳 処女 膜無し 故人

 典型的貞操逆転世界の女性

 恋人はえげつない形状のバイブ(17代目)

 日々空から男の子が降ってこないかとか野生の男を拾う妄想をしていたのが現実になって大興奮

 我が生涯に一片の悔い無し状態のまま笑顔で逝った



 ・用語解説※今後出るかは不明


 ・契約腕輪

 恋人以上妻未満の証

 嵌めていれば後方嫁面できる

 野郎の気分により破棄される恐れ有り

 野郎用は虫除け的な意味有り


 ・婚約指輪or結婚指輪

 全独身女性の夢

 嵌めて入れば堂々と嫁面できる

 第一夫人→宝石付きプラチナ

 第二夫人→小粒な宝石付きゴールド

 第三夫人→小粒な宝石付きシルバー

 それ以降→シルバー

 野郎→第一夫人とお揃いの宝石付きプラチナ


 ・生殖可能男性の拉致及び監禁

 パクられた時点でシャバ復帰絶望レベルの罪

 事件のトラウマで不能にした場合は⋯⋯


 ・感謝の自慰を奉納された神

 繁殖と豊穣の女神とされている

 御神体は珍宝館に有るレベルのナニか

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