第5話 数字の身体

 さて数の国の人間は皆、それぞれ自身のナンバーを身体に表示している。


 この男の場合、額面としては「9」だが、本当に背負う数は「Q」となっていた。


 額面と本当に背負う数が違うことはよくある。というのも表示出来るのは末尾の数桁でしかなく、奇数の国も偶数の国も大半の国民は末尾一桁だけを見せていた。どちらの国の国民かを示すにはそれで十分だからだ。


 事実、奇数の国の軍隊には全員「5」の数字を付けた歩兵部隊がある。彼らが隊五を組んでの群事演習には、私も曲想を滾らせずにはいられない。

 偶数の国には全員「6」を付けた軍隊があって、たびたび「5」たちとぶつかる。


 そんなとき戦場には屍体がゴロゴロと転がり、数え切れぬ程になるという。

 ユーリはそれを、とんでもなく面白いものを見た体で虚実織り交ぜ話すので、私は複雑(コンプレックス)な気分になるのだった。

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