第38話 年末年越し大決戦!中編(1)

 グリフォンが翼を広げる、その全長は軽く十メートルを超える巨大さを誇る。

「グリフォンか、厄介なモンスターだな」

「………確かに」


 リゼルさんと少し話す、本当にグリフォンって厄介なモンスターなのだ。

 まず知能が高いから地上に獲物がいれば火竜と違ってまず地上に下りてこない、何故ならヤツらは風を操る特殊能力を持っているからね。


 風の塊を三十メートル以上ある高さの上空からバンバン放ってきて冒険者をぶっ飛ばすんだ。矢とか魔法で攻撃を当てようにも普通に空を飛ぶグリフォンの飛行速度は速く簡単に躱してくるしね。


「グリフォンは翼をどうにかしないと地上には下りてこないぞ!」

「分かってるよ!けど矢を当てる事も出来ねぇ」


 そしてグリフォンの攻撃が始まる、やはり風の塊をを幾つも放ってきたか。不可視の風の砲弾が冒険者を襲う、何人か光となってダンジョンから退場した。


「う~~ワタシの『アトミックボンバー』が当たりませんよ!?」

「……ボウガンであの高さにいるモンスターに当てるのは無理」


 確かに、このアレクサンドの弓矢とかボウガンって幾ら対モンスター用の武器と言っても何百メートル先まで矢とか弾丸が飛んでいくなんてファンタジーな作りはしていない。


 飛距離はせいぜい二十メートルもあれば良いレベルだ。グリフォンはそれを分かっているから攻撃が来ない安全な高さから攻撃してくる、本当に見た目は格好いいのに残念な幻獣である。


「うぉおおっ!くたばれフレアラーーンス!」

 どっかの魔法使いが放った苦し紛れの魔法がグリフォンに向かう、グリフォンはそれを躱そうともしなかった。


 グリフォンに当たる前に炎の槍が吹き飛んだ。

「まさか、風の防壁を纏っていると?」

「………そんな特殊能力聞いたこともない」


 僕もだよ。しかしそうとしか考えられない。

 恐らくあのグリフォンは通常の個体じゃなく特殊能力が強化された特異個体なんだ。

 もう一頭のグリフォンが雄叫びを上げると同じような風の防壁を纏った、こっちもか。


 そして変わらず風の砲弾は放ち続けてくる。攻撃の時も風の防壁は健在だ。

 挙げ句にそんなのが二体とか、ネビウス様…本当にこのダンジョンの難易度鬼畜ですよ。


「誰か!魔法かマジックアイテムで空を飛んでいけないのか!?」

「むっ無理だ…グリフォン相手に空中戦とか出来る訳ないだろ!」


「半端な攻撃魔法じゃ弾かれる、魔法使いは何人か集まってデカいを撃てないか?」

「多分集まった所を集中砲火されるぞ、グリフォンも魔法使いが厄介なのは知ってる筈だ」


 冒険者達がグリフォンの猛攻を掻い潜りながら作戦を立てようとしている。本当に頭の良いモンスターって厄介だよね、こっちの狙いを見抜いて作戦を潰そうとしてくるもん。


「ハジメ、ウチもパニアも相手が空だと打つ手がない」

「悔しいですけどあの化け物相手だと他の冒険者がなんとかするのを待つしかないですか?」


「……………」

 僕なら使える魔法でヤツらを何とか出来るかも知れない。けどどれも上級かそれ以上の等級の魔法だから使えば目立つんだ。


 何より僕の魔法は他の魔法使いとは事情が違う、魔力消費とかない代わりに呪文書スペルブックを読み直さないと全ての魔法が再使用出来ないのだ。


 既にマジックバレットが打ち止め、ヒールも後一回だ。強力な魔法は読み直しに時間が掛かるからこんな人目のある場所じゃとても出来ない、万が一呪文書なんてチートアイテムの存在を知られたら事だからね。


 この状況をどうにか出来ないかと頭を捻っていると僕に話し掛ける声がした。

「ハジメ、ここは私が何とかする」


 声の主はマコラだった。

 確かに今の彼女はクレセントブーツとかいう魔法の効果で高速飛行が出来る、しかし一人でグリフォン二体とか無理でしょ。


「マコラ、流石に君でもあのグリフォン二体を相手にするのは」

「私だけじゃない。他の冒険者の中にもグリフォンに空中戦を挑むつもりの連中がいる」


 見ると確かに十数名程の冒険者が魔法で空に浮き始めた。

 冒険者は基本的に脳筋な連中が多い、有利とか不利とか以前に、やれる事がこれしかないならやると言うシンプルなスタンスなのだ。


「グリフォンがなんぼのもんじゃい!この槍で串刺しにしてやんぞコラーッ!」


「我が魔法で焼き尽くしてやる!」

「焼き鳥だーーー!」


 本当に血の気の多い連中である。しかしこう言う時は心強いな。

「………それじゃあ行ってくる」

「分かった、無理は禁物だよ」


 マコラはグリフォンに突撃していった。

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