第16話 キングオブキノコ(4)

 一気にレアモンとの距離をつめるマコラ、レアモンがマコラにその四本の腕を振るった。

 ラッシュだ、マコラの身体に特大の拳が迫る。


「遅い」

 マコラは紙一重でそのラッシュを華麗に躱す、そして懐に入ると短剣を突き立てた。

 ガキンッという音がした、マコラが『……硬い』と呟く。


 あのレアモンも硬化能力を持っているらしい、それも普通の魔物キノコ達とはレベルが違う硬化能力を。短剣を容易く弾くとは、拳まで硬化させてるのならかなり危険だ。


 マコラは一度離れてる。

「マコラ、私が魔法で援護します」

「……!」


 するとマコラが片手を僕に向けてきた。

「ここは、私に任せて……」


 彼女は勝算がなければそんな事は言わないだろうと僕は思った。

「分かった、なら手は出さないよ」

「………ありがとう」


「マ!ツ!タ!ケェェーーーーーーーーッ!」

 レアモンが雄叫びを上げる、すると無数の小さなマッシュルームみたいなキノコが宙に現れた。

 それを引っ掴みぶん投げてくる、四本も腕があるのでめっちゃ飛んできた。

 僕はまだ距離があるので躱せる、しかしマコラは……。


「問題ない」

 マコラは舞い踊る様な動きで躱していく。


「マツタケーーーーーーーーーーッ!」

 更にマッシュルームを生み出しては投げつけてくる、遠距離攻撃も出来るとはなかなか侮れないレアモンだ。


 マコラが呪文を唱える、そして魔法が完成したようだ。

「クレセントブーツ」


 マコラの両脚が彼女の瞳と同じような金色の光を纏う、その光が形を変えていきその足首から先を光る三日月状の靴へと変えた。

 少し宙に浮いてる、どうやら飛べるようになったらしい。


「これで決める!」

 マコラが突撃した、まるで水中を泳ぐ魚のように地面に足をつける事もなく、音すら出さずに動く。

 その動きは流れるように、しかしとんでもない速度だ。


 レアモンのマッシュルームポイ投げを容易く見切りその懐へと入り込んでしまった。

 マコラの右脚が振るわれる、するとレアモンの片方の腕二本が切り飛ばされた。


「マッ!マツターーーーーーーーッ!?」

 あの硬化能力を物ともしない、蹴りによる斬撃。

 やはりマコラの本気の戦いは蹴りが主体らしい、しかも蹴られたら腕や足が飛ばされるらしい、マコラ凄い。


 するとマコラは僕の方を見て質問をしてきた。

「このレアモン、用があるのはカサの上のマツタケだけ?」

「え?まっまあそうだけど」


 個人的にはカサの上のキノコさえ無事なら何の問題もない、普通の冒険者ならレアモンのモンスター素材の方を優先するだろうけど。

 マコラは僕の言葉を聞くとレアモンに向き直る。


「良かった、多分あのキノコ……バラバラになるから」

 ヒェエ~怖っ、そう言うと更に速度を上げてマコラはレアモンに突撃した。


「マ!ツ!タ!ケェェーーーーーーーーッ!」

 レアモンが叫ぶ、この開けた空間を囲む巨大キノコ達が突然ブルブルと震えだした。

 すると巨大キノコ達から紫色の胞子がブシューッと放出される、アレ絶対に身体に悪いぞ。


 しかし僕達には何の影響もない、事前に発動しておいたマジックミストが僕達の身体を包み込んでキノコの胞子を寄せ付けなかった。

 魔法がちゃんと仕事をしてくれて助かったな。


「………結局、貴方に助けられた」

「マッマツタケ……?」


 『えっなんで平気なの……?』って感じなんだね、レアモン君分かるよ。

 「これで終わり」


 マコラが呆けてるレアモンの横っ腹に蹴りを叩き込んだ。

 レアモンが輪切りにされる、後に聞くとあのクレセントブーツって魔法で強化された蹴り攻撃はマコラ達の一族では月光脚げっこうきゃくと呼ばれるワザ名があるらしいよ。


 いいね、格好よくておじさんそう言うの好きだよ。

 動かなくなったレアモン、そのカサの上の特選王マツタケを全てが採取する。フフフッ大量大量、これは笑いが止まりませんわ。


「…………!」

 採取が終わると空間が歪む、元のキノコの里へと僕達は戻ってきていた。


「戻ってきたの?」

「そうみたいだね」

 異空間の歪みは最深部のレアモンを倒すと消滅する、そうすれば元の場所に戻って来れるのだ。


 その場には輪切りにされたレアモンも残っていた、ついでだしこれも冒険者ギルドに持って帰るとするかな?。変に注目されると碌な事がないのだけど、新しいモンスター素材とかは他の冒険者にも有益な物だしね。ここは後々に誰かの役に立つ方を優先しようかな。


「これを運ぶの?」

「ああっ問題ないよ、実は僕の使える魔法に…」

 初めて会った時は使わなかった魔法、マジックポータルを使えば一気に距離を稼げる事をマコラに説明した。


 すると彼女から『なんで最初にそれを使わなかったの?』と少し不機嫌になってしまった。女心は複雑と言うけど、この事かな?その後は平謝りである。




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