第33話

飛行機が那覇空港に着陸して間もなく、俺たち一行は手続きを済ませて空港を後にした。


この前の話し合いでは最初に美ら海水族館に行くことになっていたので俺たちは急いでタクシーに乗りこんだ。

「そういえば美ら海水族館ってジンベイザメが有名なんですよね?」


「え、ああ、うん、あともう一つ有名なのはあの大きな水槽だよな。写真で見ただけだけど凄い迫力だったぞ。」


「まあ私はそういうでっかいやつよりもイルカショー行きたいんだよね~!!!」


そんな和やかな会話が繰り広げられているのだが、やっぱり機内での出来事のせいか花園さんと話すとどうも気まずい。

気まずいというよりか、何かすごい偏見が心の中で生まれてしまったせいでいつも通り接することができないという表現のほうが的確かもしれない。

実際俺は彼女がここに来たのも全てあのいかがわしい同人活動の為なのではないかと疑っている。


そうこう考えているうちに時は経ち、俺たちは美ら海水族館に到着した。

チケットは事前にネットで購入していたので早く館内に入ることができた。


「お~!!おっき~い!!!」


「見てください!!熱帯魚がたくさんいますよ!!」


「おいおいお前ら、たくさん人いるからあんまはしゃぐなよ!」

わかってはいたが彼女たちは中に入ってすぐにはしゃぎ出して写真を撮ったりしている。


しかし、水槽で優雅に泳ぐ熱帯魚たちを見ていると日頃の疲れも発散されている気がした。

その後、俺たちは順路に沿って魚を見て回った。

特にジンベエザメは初めて生で見ることもあってか凄い迫力だった。


一通り館内の展示を見終わると、天舞音が見たがっていたイルカショーを見に行くことにした。

「ねえお兄ちゃん!やっぱり席は前の方が良いでしょ!!」


「いや、俺は嫌だ!!俺は濡れたくないからな!」

前の席に座らせようとする妹を俺は完全に拒否した。


「え~、別に良いじゃん!ね?!花園先輩!?」

俺が断ったためか、今度は花園先生に同意を求める。


「えーと・・・それは私もちょっと・・・えっ?!」

ためらいかけていた花園先生の手を天舞音が引っ張っていった。


「お兄ちゃん、行かないの?」


「行かないよ・・・」

そう俺はあきれ気味に言った。


「あっそ、じゃあお兄ちゃんはぼっちしといたら?」

それを聞いて彼女は冷たくあしらった。


いざショーが始まると、案の定イルカ達は自らの尾を水面に叩き付け、前方の席に座る人に対して水をぶちまけ始めた。

ショー自体は30分ほどだったが、十分見応えがあった。


ショーが終わり、俺は天舞音、花園先生の二人と合流したのだが・・・


「うぅ、大和川君、聞いてくださいよ・・・天舞音ちゃん方にはあまり水はかからないのに私の方にだけ・・・」

ずぶ濡れになった花園先生は悲壮感を露わにしていた。


「そ、それは運が悪かったな、大丈夫か?」


「大丈夫だよ、花園先輩!悪いことがあったら今度は良いことがあるよ!!塞翁が馬的な?!」


俺と天舞音は全力でフォローを入れたのだが、落ち込んだ彼女にはあまり効果が無かった。

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