第14話

次の日の放課後、村松が俺の新しい立ち絵についていろいろと聞いてきた。


「なあ雄馬、立ち絵リメイクしたってマジか?」


「ああ、良いイラストレーターさんがいてくれたおかげでね・・・」


さすがにタダで描かせたと言うとマズイので依頼の料金等は言わないことにした。


「で、イラストレーターの名前は?」


「花園エデン先生って言うんだが知ってるか?」


「・・・・知らないな。」


「そうか、知らないか。」


まあ確かにまだちゃんとイラストレーターとしてデビューしていないというのもあるが、知名度は皆無らしい。

それでも実力は並みのイラストレーターが舌を巻くレベルだったのだが。


「まあ次の配信楽しみにしておくよ!あ、そういえばお前収益化したんだったな、スパチャしといてやるよ。」


「マジで!?」


「ああ、100円な!!」


「100円かよ・・・」

もちろん他人からお金がもらえるんだからありがたいとは思うのだが、100円だったら手元に来るお金なんて50円を下回るぞ・・・


「まあ良いじゃねえか、お前に損はないんだし・・・」


「そうだな。てかこっちとしては普通に配信見てくれただけでも十分嬉しいんだが。」


「あ、そうそう、お前の配信と同じ日に琴音たんの新衣装が公開されるんだぜ。しかも配信予定時間がうまいことズレてたんだよ!!」


「そ、そうか。ラッキーだったな・・・」

まさか俺と天舞音が相談してあえて双方の配信時間をずらしているとは思ってもみないだろう。


「それじゃあそろそろ帰るか?」


「そうだな。」


二人は久方ぶりに帰路を共にした。


家の前まで来ると、見たことあるような、ないような女の子が家の前に立っていた。


俺は恐る恐る彼女に近づき、声をかける。

「えーとどちら様でしょうか?」


「花園エデンです。」


間髪入れずに返答した彼女は俺の方を向き、続ける。


「今日は君に伝えたいことがあって来ました。」


いや、ちょっと待て、なんでこの人俺の住所知ってんの?

それ以上に彼女の来ている制服、俺たちの学校のやつじゃないか・・・・・

情報の処理が追いつかない。


「ここじゃ暑いだけだから、あがっていきなよ。」

さすがに太陽が照り付ける道路の上で女子高生を放置するわけにもいかない。


「助かります。」


俺は彼女を自分の部屋に通した。


「で、今日はなんでわざわざこんなところにまで?」


「さっきも言いましたが今日は伝えたいことがあって来ました。」


「なんでしょう?」

一瞬愛の告白かな?と思ったがほぼ100%違うだろうと俺の脳がその可能性を排除した。


「その、先日は申し訳ございませんでした。」

そう言って彼女は深々と頭を下げた。


「いや、良いですよ。別に・・・今まで誰も俺に対して厳しい言葉を言わなかったので逆に良い感じに発破をかけられたかと・・・」


「ですが・・・その、私の感情的な発言に少し動揺されたんじゃないでしょうか?」


「まあ確かに初めはびっくりしたけど、すぐに気にならならなくなりましたよ。」


「そうですか、良かった・・・」

彼女はそう言って胸をなでおろしたように見えた。


てかこの人の態度変わり過ぎじゃないか・・・?


「あの、あの後何かありました?」


「師匠に諭されただけですが?」


あー、なるほど、絞られたってか・・・・


「あと、なんで俺の家の住所を・・・?」


「契約書の中に住所が書いてありましたので・・・」


「そ、そうか・・・知らなかったです。」

個人情報の取り扱いにはもっと気を付けた方が良さそうだ・・・


「あ、そういえば学校同じだったんですね!」


彼女は今気づいたようだ。


「クラスはどちらでしょうか?」


「B組だけど・・・」


「え、S特!?めっちゃ賢いじゃないですか!!!」


俺は平然と答えたつもりだったが花園先生は驚愕しているようだった。


「私は普通のD組なんで・・・」


そう、うちの学校はA、B組がいわゆるS特進(略してS特)、C,D組が特進、EF組が専門コースとなっている。

しかし、専門コースの中に芸術系のものもあるのに、どうして彼女は特進のクラスなのだろうか?


「今なぜイラストレーターを目指す私が特進のD組なんだって思いましたか?」


「はい、差し支えなければ理由を伺いたいのですが・・・」

一瞬で気づかれてしまった。


「私は、なりたいものを見つけるのが遅かったのです。イラストレーターになりたいと思った頃にはもう高校1年生、芸術系の学校に編入したりするという手もありましたが両親にそれを伝える勇気は私にはありませんでした。」


そう、彼女が告げたのは紛れもない現実だった。

言葉が出なかった。


「けど、そんな時私を救ってくれたのが師匠だったんです。」

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