心霊バスツアー

連喜

第1話 バスツアーに申し込む

 俺は子どもの頃からホラーが好きだ。常々、心霊スポット巡りもしてみたいと思っていた。しかし、有名な心霊スポットはトンネルや、廃墟の病院やホテルなどで、大体が郊外にあって、車でないと行けないところが多い。俺は免許を持っているがペーパーだから、そういうスポットには自力ではいけない。ついでに友達もいないから、誰にも連れて行ってももらえないのだ。本気で行きたかったらタクシーでも呼べばいいと思うだろうけど、ついでに金もない。


 毎年、様々な地域で心霊ツアーというのをやっている。抽選になるくらいの人気らしい。だから、抽選に当たらないとまた来年となってしまう。三和交通などが心霊スポット巡礼ツアーをやっているが、それには外れてしまった。三和交通はタクシー会社だから、移動手段はタクシーだ。きっと話のうまい運転手さんがガイドしてくれるんだろう。


 俺はネットで見つけた、とある心霊バスツアーに申し込んだ。そこは先着順だった。コロナ寡だから、乗客は2列シートに1人づつしか乗せないということだった。隣に知らないおじさんが座ってたら落ち着かないけど、それだけゆとりのある座席ならストレスなく楽しめる。値段は3時間で38,000円だったけど、著名な霊能者Aさんが同行するということだった。Aさんは心霊関係の本も出している著名人だ。テレビ出演したこともある。俺はすぐに申し込んだ。きっと、すぐにいっぱいになってしまうと思ったからだ。寂しいけど1人参加。家族を誘ったが、断られてしまった。

 しかし、1人で良かったと思う。2人だと2倍になってしまうからだ。


 俺は38,000円をクレジット払いして、ワクワクしながらその日を待った。日付は8月の土曜日の夜という、サラリーマンにはベストな日だった。


 持ち物は、リュックに水とカメラ、スマホくらいだった。

 行先は事前には教えてもらえない。10か所くらい回るみたいだが、短時間でそんなに回れるなんて・・・東京都〇〇地区は心霊スポットだらけじゃないか。


 行先をネットに書いてしまうと、地元の人に迷惑がかかるからだろう。家の近所が心霊スポットだと書かれたら、不動産の価値も下がってしまう。風評被害もいいところだ。ネットにはそんなことを気にしてない人が、堂々と地名を書き連ねているが。


 実を言うと、俺の地元も心霊スポットにされていて、それを大人になって知ったということがあった。それから、夜は怖くてその場所の近くにすら行けなくなってしまった。地元の人が普通に生活しているのに、観光客が冷やかしでやって来たら、はっきり言っていい迷惑だ。しかし、自分も今それをやろうとしているのだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る