転身の前に

「私はまだ、このままで居たいと思います」

「どういう事だ?」


皆疑問の目だ。


「私はずっと普通の容姿であれば、と思っていました。しかし見た目で判断するのは間違っていますよね?でしたら、今の見た目で私と交流を図ってくれる友人を探したいのです」


ミューズもまた自分の見た目のせいと決めつけ物事を見ていた。

しかし、それは間違っていたのでは?



「ずっと自分の見た目が悪いせいと自信を無くし、心までも卑屈になっていました。

魔法のせいと理由がわかった今は、とても腹立たしいです。自分がそんなものに振り回されていたのかと」


自分を醜いと思っていた一番の人間は自分だったのではないかと。

ミューズは自分の事を好きどころか、嫌っていたからだ。


「勝手な理由で申し訳ないのですが、これからは茶会などで人との交流を増やし、真の友達を見つけたいと思います。見た目だけではない、本当の友達を」


今回エリックが作成してくれたリストも見つつ、人を見る目を養いたいと思う。


「見た目も勿論気をつけます、所作や動作ももっと学びます。ですので解除はもう少しあとで、というのはダメでしょうか?」



「ミューズがいいと言うならば…しかし良いのかい?また謂れのない誹謗中傷を受けてしまう、ミューズが傷つくのではないか?」

ディエスはハラハラしていた。


折角払拭出来るならしたほうがいいのではと、心配だ。


「そのような方達と縁を繋がない為ですわ。表立って人の容姿を貶すなんて、とても端ないと思いません?」

ニッコリとミューズは微笑む。


「ここにいる皆様と屋敷の皆が見ている私が本当の外見だと知れてホッとしました。世間の中傷とのギャップが有ったものですから、とても悩みましたの。

でも、そちらのニコラ様や王家の使用人の方々は私が醜くても変わらず接して下さいました。外見に関わらず接してくれる方を探していきたいと思います。

ただ、今回婚約をするにあたり王家にもスフォリア家にも迷惑がかかってしまうかもしれません。私の容姿のせいで王家のスキャンダルにされるのではないかと心配です」

良い噂がないミューズとの婚約で、王家の名に瑕をつけないか心配なのだ。


「その辺りは大人の仕事だ。君は君の思うように友人づくりをしてくれ」

アルフレッドは決断したようだ。


「ミューズ嬢の英断にてしばしこのままにする。その間に犯人探しと、魔法の解析、解除に最適なタイミングを決めよう。

噂に惑わされるような者、人を見た目だけで判断するような者は精査し、雇用の際にも参考にさせてもらう。

貴族など嘘をついて当たり前の人種だが、それを鵜呑みにし声高に言う者などたかが知れている」

アルフレッドはミューズの決意を応援すると宣言したのだ。


「ありがとうございます、ご期待に添えられるよう頑張ります!」


ティタンの、第二王子の婚約者として相応しくならねばとミューズは奮起した。





その後二組の婚約を無事に終え、レナンのもとには王家が選んだ家庭教師が送られた。

「社交界デビューや入学をお控えでお忙しいですが、少しでも王太子妃教育を進めましょうね」

と微笑みながらもビシバシとした先生を持つようになった。


ミューズもディエスに頼み、マナー講師や領地の勉強をするようになった。


茶会なども最初はレナンと共に、段々と一人でも参加するようになっていった。


第二王子との婚約を発表したことで、招かれる茶会も増えていったのだ。




ティタンもまた武芸や経営学を学んでいた。


合間合間でミューズと手紙のやり取りを交わし、時にはエスコートを兼ねて共に茶会に出ることもあった。


お互いの成長を喜び合い、仲睦まじい様子であった。


あまりにも仲が良くて、新たに出来た友人たちには冷やかされたが。




エリックも王太子になるべくより一層の努力と研鑽を高める。


ミューズにかけられた魔法についても、魔術師達の見解を聞きつつ、積極的に犯人探しに協力をした。




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