宰相一家の話し合い

父が帰ってきたらすぐに報告しようと、二人は帰宅を待っていた。


母も付き添い一緒に待つ。緊張している二人とは違い、ニコニコとしていた。


茶会参加を強制してしまった罪悪感と心配で、いつもより早く帰ってきたディエスは、突然の婚約話に言葉を失う。


(いや確かに婚約者探しの茶会ではあったが、まさかうちの娘が?!)


しかも二人共だなんて。


仕事の疲れも吹き飛ぶほど頭の中が真っ白になり、混乱してしまう。


娘二人が王家に嫁ぐのか?

どちらも?

家の宝が一気にいなくなるの?


妻であるリリュシーヌを見ると、嬉しそうに笑っていた。


「良い事じゃない、二人がそれでいいと言うのなら私もいいと思うわ。子どもが幸せならそれでいいのよ」


妻のあっけらかんとした言い分にディエスはますます戸惑った。


「いや、そう簡単には行かないだろう。ここの領はどうなる? ただでさえ俺は宰相業との二足のわらじできついのに。いやそれは、家族の為を思えば何とかなるが。それよりも、レナンはまさか王太子妃になるのか? あの氷の王子の隣に立つと?

ミューズだって第二王子と結婚するって、将来何処に住むんだ? 大公として扱うのか? 王家の領を貰うというのか?」


次から次に心配点が出てきてしまう。


「誰か養子を迎えたらいいんじゃないの? それかティタン殿下に婿に来てもらうとか」


リリュシーヌの軽い返答に、ディエスは顔を顰めた。


「彼が来るとなればミューズは家に残れるが……いや、しかし寂しい! 娘が取られるのはまだ嫌だ!」


頭を抱え、ガクリと膝をついてしまう。


結局のところ娘が自分の側から居なくなることが辛いのだ。


「まだ子どもだぞ、こんな可愛くて大事な娘が、他の男のものになるなんて、まだ認めたくない!」


涙まで流してしまったディエスに、レナンとミューズは慌ててしまう。


「お父様、泣かないでください」


「王子様達はとても優しい人達だったわ。きっと大丈夫よ」


二人の娘に背中を擦られ、更に涙を流してしまう。


「今なら、義父上の気持ちが痛いほど分かる。幸せになって欲しい気持ちと、渡したくないという葛藤が!」


あらあらとリリュシーヌは困ったように微笑む。


「まずはお話が来た時にしっかりお話しましょ。きっとあちらでもお話してるもの」


ディエスは結局夕食も取らず休むこととなった。


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