第14話 ハチコの子

 去勢手術した『なめこ(注:オス)』と『ハチコ』を引き続き同じ部屋で育てていたが、しばらくして困ったことになった。


 それが第1話の最後の方で書いた出来事。


 『ハチコ』のお腹がどんどん大きくなっていった。『なめこ』の去勢手術は、手遅れだったのだ。私は頭を抱えてしまった。


 とりあえず、私はハチコを別の部屋に移した。


 そこは、後から増築した離れのような建物の部屋で、渡り廊下で母屋と繋がっている。そしてその部屋は、奥の部屋とは障子で仕切られているほか、階段を上ると二階の部屋とも繋がっている。


 そして二階の部屋も、階段を上った先の廊下とは障子で仕切られている。障子は奥の部屋のも二階の部屋のも、上半分は障子紙を貼っただけだが、下半分はガラス板に障子紙を貼ってあるので、それを破って中へ侵入することはできない。。


 念のため、階段の上り口をケージ用の柵で仕切った。これでハチコはこの部屋から出ることはできないはずだ。


 この部屋には直径一メートル二十センチ、高さ三十センチくらいの丸い木製のテーブルが置いてある。私はその下に、上が開いた段ボール箱を寝かせた状態で置き、そこで出産してくれることを願った。


 だが、ハチコはそこで産む気はないようだった。


 私がご飯をあげに行くと、ハチコがいない。テーブルの下を覗いてみたが、そこにもいない。

 この部屋には、上下左右後方をポリエステルカバーで覆われた大型の衣装スタンド(ハンガーラックというのか?)が置いてある。前面カバーだけがカーテン式になっているが、ハチコはその下の隙間から出てきた。


 どうやらその中で産むことを考えているようだ。

 その中に掛かっている衣類はそう多くなく、またほとんど今は着なくなったものだが、産むとすればその下のスペースであろうから、衣類に影響はないと思われた。


 そうしているうちに、ある日、ハチコのお腹が小さくなっていた。ハチコはまたハンガーラックの下から出てきたので、その中で産んだのだろう。かすかに子猫の鳴き声が聞こえたような気がした。


 しかし私はハンガーラックの中を覗いてみたりはしなかった。子猫が何匹生まれたのかは気になるが、下手に刺激して母猫がパニクらないようにしなければならない。子猫が大きくなって出てくるまで待とう。


 日によっては子猫の鳴き声が聞こえないこともあり、心配もしたが、その翌日に鳴き声が聞こえると安堵もした。

 子猫の鳴き声はダブって聞こえることもあったので、少なくとも二匹以上はいる。ただ、大声で鳴いているところには居合わせたことがないので、無事に育っているのか気がかりではあった。


 そしてとうとう、子猫と面会する日がやって来た。生後一ヶ月ちょっと過ぎたあたりに、わらわらとハンガーラックの中から出てきたのだ。

 一匹、二匹、三匹、四匹・・・五匹だ。

 ハチコと同じハチワレが一匹、ほかは全部サバトラだ。


 これは区別がつかないぞ。


 いやまて、よく見ると首や足に白色が混ざっているのが一匹、なめこと同じく尻尾が曲がっているのが一匹。でもあとの二匹はやっぱり区別がつかないな。


 それにしても、扶養家族がいっぺんに五匹も増えてしまった。また猫エンゲル係数が上がってしまうな・・・。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 近況ノートに今は亡き二代目家猫の「ボケ」の写真を掲載しました。よろしければご覧ください。

       ↓

https://kakuyomu.jp/users/windrain/news/16817330648215364172

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る