第2話 運び屋 サンタ・クルーズ

壊し屋


 不届きな悪しき夢=非望を持つ人間(非望因子)が現れた時、それを打ち砕く者達が降臨する。

それは、神が遣わした“壊し屋”である。その名を『ドリーム・クラッシャー』という。


 ドリーム・クラッシャーは、神によって創造された戦士。


 身勝手な人間たちのいびつな夢の中へダイブ(人の夢の中に入り込む

こと)して、歪な夢の中に棲みつくナイトメア・メーカーをその歪な夢もろとも打ち砕くための存在。


 ドリーム・クラッシャーは、人々の夢の中を駆け巡り、夢から夢へと渡り、

魔界の王の企みを阻む夢幻戦士である。


 神が創造した天地の秩序を守るため、ナイトメア・メーカーと呼ばれる幻魔衆、夢魔獣の討伐と歪で危険な悪夢である非望を木っ端微塵に打ち砕くことを使命とする。


 ドリーム・クラッシャーは人の夢の中にのみ現れる。

フィジカル世界(下界)の人間には現実視できない存在、つまり下界人からはその姿を見ることが出来ない存在なのである。



運び屋(メッセンジャー)


 人と天界人(神)のハーフであるサンタ・クルーズは、人の年齢で数えて

17歳。

この少年は、下界に住む普通の人間には見たり聞いたりその存在を認識することが出来ない天界と下界の間を行き来することが出来る特殊な存在であった。


 天界人の中には、サンタを“半神”と嘲笑い蔑む者もいたが、そのような差別や陰口などは全く気にも留めない気質で天真爛漫の塊のような人柄は、神にも人にも受け入れられていた。


 サンタ・クルーズのスペシャルスキルは、“スピード(素早さ)”で、天界と下界の間を音速で駆け抜けるほどのスピードを誇った。


 そして、そんな自身の特性を活かして夢と希望を届けるメッセンジャー(運び屋)を生業としていた。

 天界から依頼されたお告げや贈り物を預かり、下界の人間たちの下へ運び届ける。それがメッセンジャー(運び屋)の主な仕事であるが、音速で移動が出来るサンタにとっては、まさに天職であった。



 ある年の降誕祭の夜。


 いつものようにサンタが依頼を受け、運び届けた先で事件が起こる。


 サンタが受けた依頼は、天界人に成り済ました魔の者が謀った偽りの依頼であった。偽りとは気がつかずに、いつもと変わらず仕事を遂行していた。

しかし依頼された荷物を届けた相手が、歪な夢を持った『非望因子』であった

のだ。


 非望因子と呼ばれる危険で不届きな夢を持つその人間は、すでにナイトメア・メーカーに寄生されていた。 


 そしてサンタが届けた物、それは夢を成就させる闇のアイテムであった。


 その非望因子(人間)はナイトメア・メーカーに操られており、サンタから受け取ったアイテムを歪な夢に与えて昇華させ、ダークマターである『非望』を完成させてしまう。

ここで完成された『非望』は支配欲と物欲、そして殺戮願望が融合された凶悪なタイプであった。


 それとは気付かないサンタはその非望因子の手によって命を狙われる。不意をつかれて攻撃されたため自分の存在を半分消されてしまう。

あわや完全消滅寸前と思われたその時、天より降臨した天使長ミカエルと彼が従えてきた一人のドリーム・クラッシャーによって命を救われる。


 この時、ミカエルが従えてきたドリーム・クラッシャーは最高ランクといわれるSSダブルエスランクの夢幻戦士であったため、非望因子の夢に巣くうナイトメア・メーカーを余裕の一撃で仕留め、『非望』を木っ端微塵に打ち砕くことに成功する。

 大きな功績を挙げたというのに、そのSSダブルエスランクの夢幻戦士は、表情一つ変えずに無言のまま天界へ帰還した。


 そんな彼等、ドリーム・クラッシャーには7つの階級がある。その最高位がSSダブルエスランク、続いてSランク。

この2つの階級の力は神々と同等の力を持った存在だと云われている。

次に上位戦士であるAランク、Bランクと続き、Cランク、Dランクの順に区分される。

このDランクまでがドリーム・クラッシャー部隊の正式隊員であり、“夢幻戦士”と呼ばれている。

最後に7番目の最下級が訓練生、以上の部隊構成となっている。


 ドリーム・クラッシャーを目指す者のほとんどが、訓練生を経て正式入隊するが、稀に天才的な素質を持っているために飛び級扱いとなって下位ランクを飛び越えて入隊する者も存在する。



 この降誕祭の夜にサンタが遭遇した事件、それに聖なる神の力 “壊し屋”と呼ばれるドリーム・クラッシャーの活躍を目の当たりにしたサンタは憧れを抱き、自分もそうなりたいと決心する。


 こうして、ミカエルに助けられた運び屋サンタは、ミカエルの慈悲によって昇天することを赦され天界へ入ることとなる。



 “夢の運び屋”サンタの冒険は、今ここから始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る