[一話完結型]現代のカケラ(短編小説集)

野口マッハ剛(ごう)

第1話 小さな本棚たち

 自分は原稿用紙に執筆を続ける。別に誰かに読んでもらう予定はない。ボールペンで言葉を捻り出していく。文章は自分の中から生まれていく。今夜もなかなかの量が書けた。部屋を見回す、小さな本棚たちがある。自分はどちらかと言えば読書家だと自負しておこう。その小さな本棚たちにはいろんな本がある。文豪の小説から現代の小説まで。ため息をつく自分。すっかり本が溢れてきたなと。床にはまだまだ読んでいない小説たちが積んである。自分は適当にその一つの小説を拾うけれども、今は読む気がしなくて、また床に戻すのだ。自分は公募に自作の小説を応募しようかで悩んでいる。まあ、自信がないからやらないけれどもね。自分は視線を原稿用紙に戻す。すっかり枚数が増えた。一年前から執筆していることで孤独な時間が増えた。でもさびしくはない。ボールペンをまた原稿用紙に走らせる。あの小さな本棚たちに、いつか自分の小説が加わるのを期待して。

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