第15話

 明日は日曜日なのでニーデズにわが家に泊まってもらうことになった。


 俺が友人を泊めるなんて初めてなので家族は興味津々だ。当然のように夕食は俺の家族とすることになった。


 父上、母上、ハルベルト長兄、スプリル義姉上。満面の笑みがなんとなく悲しい。


「君がニーデズ君か。メッセスから話は聞いている」


 メッセスめっ! 余計な事、言ってないだろうなっ!


「お初にお目にかかります。ニーデズ・ティースラです。ティースラ男爵家の四男です。

フユルーシ様には学園でも良くしていただいております」


 クラスが違うから学園ではランチと放課後以外はほとんど接点はないのだけど、ニーデズによると俺とランチしている姿を見たクラスメイトがニーデズへの嫌がらせを止めたそうだ。

 さすが貴族社会だ。


「そうかそうか。まあ、とにかく座りたまえ」


「はい。ありがとうございます。失礼いたします」


 それからはニーデズに俺に関することを質問攻めだ。みんなが交代でニーデズに話しかける。ニーデズは学園でのこととガルフ相談とのことを上手く交えて俺を褒めていた。


「もう、みんな、ニーデズと話すの禁止っ!

ニーデズがちっとも食事を進められないじゃないかっ!」


「「「「っっ!!」」」」


「ハハ……」


 みんなは目を丸くして、ニーデズは苦笑い。


「そうだな。では、食事の後にサロンでお茶でもしよう」


 それからはニーデズに質問が集中することはないが、かと言って殺伐とするわけではなく、穏やかな夕餉となってホッとした。


 食事が終わりゾロゾロとサロンへ向かう。俺たちは一番後ろを付いていく。


「夕食の後なのにお茶をするのですか?」


「うん。デザートだよね。時間をかけなくてもいい時は食事の後そのままいただくけど、今日はニーデズと話がしたいからサロンへ移動するんだよ」


「僕、大丈夫でしょうか?」


「さっきの受け答えも完璧だったよ。堅苦しく考えなくても大丈夫。万が一うちの家族に嫌われても俺はニーデズを気に入っているから」


「えっ! 嫌われることもあるんですかっ?」


 ニーデズが青くなる。


「プッ! 冗談冗談。うちの家族なら絶対ニーデズを気に入るよ」


「はあ?」


 ニーデズは好青年である自覚がないみたいだ。そういうところも好感が持てる。


 サロンへ行くと先程の話が始まった。家族は学園での俺の様子が気になっていたようだ。


「フユルーシは兄弟に押されておとなしい性格だから心配でね」


 父上が困り笑顔で言う。そういうの、友達に言うのは恥ずかしいから止めてほしい。


「フユルーシ様のご友人の皆様は大変穏やかでお優しい方々ばかりです。男爵家の私が昼食を共にしても快く受け入れてくださいました。

ご友人選びはフユルーシ様のお人柄だと思います」


「まあ。そう言っていただけると安心するわ」


 母上、目尻下げ過ぎです。俺は十六歳なんですよ。過保護みたいなの見たくないです。

 俺のジト目などスルーされて話は弾んでいく。


 俺の話からニーデズ自身の話になってきた。するとハルベルト長兄がこの上なく興味を示した。


「そうか、ニーデズ君はBクラスなのか。なかなか優秀だな」


「へぇ! 数字系の学術が得意なんだね」


「ほぉほぉ。高官になりたいのかぁ」


「男爵家の四男だと大変失礼だが実家には仕事は少ないかもしれないねぇ」


 ハルベルト長兄が積極的にニーデズに絡む。


「ティースラ男爵家はすでにご長男がお継ぎになっているよね? なかなかに優秀なご当主だそうじゃないか」


「兄上っ!!!」


 俺は慌てて口を挟んだ。

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