上界のシュラハト

夭圭学(ヨウケイマナブ)

第1話 

 魔人が現れてから約5年と少し、人類は魔人への反撃を1度たりとも行ったことは無かった。

 皆この現状に慣れ、受け入れている者ばかりでこのままでは人類は滅びてもおかしくない。

 いくら私がこの世界で地球の兵器を再現し、それを魔人に通用しうる威力まで上げるとしても武器はともかく、身体の方は持たなかった。

 だから私は老いた脳をフル回転させ考え方を変えた。

 魔人に最も有効的なのは魔人ではないかと…


………

第8層中央管制棟最上階統領執務室




コンコンコン

 扉をノックする音が聴こえ、現実に呼び戻されるような感覚を覚えた。

(随分懐かしいことを思い出した…)

「入れ、用件を述べろ」

 白の制服を着た若い軍人が入ってきた

「失礼します、陸軍治安維持部隊隊長ロイシエ大佐であります。本日は定期報告に参りました次第です戒戸様。

第2層から第6層、居住区、官区ともに設備や建物の破損、事件等の異常ありませんでした。

しかし第一層の住民の魔力波長がデータベースと一致しない事例があり、特別措置法第一項緊急命令に基づき第8層研究医療施設メディラへの移送及び対魔専用拘束室への収容致しました。」

「それは疑いありと言うことか?大佐。」

「間違いないかと、拘束の際抵抗がありましたので本住民に魔素阻害剤を打ち込んだところ、身体機能の低下を確認しました。」

 天然物か、しかし長らく見つからなかったのはどういうことだ?

 魔人化現象は後天的に起こるのか?だとしたら予兆は?原因は?

 わからん、会いに行き直接調べるしか無さそうだな。

 「わかった、本業務が終了次第メディラに向かう。大佐は護衛の者を集め同行を、大佐及び護衛の兵装は特殊兵装第2まで許可する。

 なお本事案に関しては機密保持契約第4項に基づき、本事案に関わった者全てに箝口令をしく。だが私の指示であればその限りではない。」

 大佐は、ひざまずき、頭を垂れた。

「はっ、至急集め準備いたします。失礼しました。」

 大佐は敬礼をし、この場を去った。

 それにしてもメディラか、丁度あの子達にも会わないといけない頃だし、丁度いいな。

 待ちに望んだ天然物、そいつは人工物と何が異なっているのだろうか。



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