第11話 帰省時、完全自分ウケコーデがち

 その週末、私は都内の実家に顔を出した。結構久しぶりであるにもかかわらず、今の生活圏と距離がないせいで「おお、おかえり」程度のノリの両親。


「あ、これ、咲良ちゃん宛に届いていたよ」


 母にはがきや封筒を複数渡され、私は選別を始める。大体が不要なものである。――その中に、小学校時代の同窓会のお知らせと、友人の結婚式の招待状が混じっていた。新居を教えるのを忘れており、つい昨日、例の友人から実家宛に招待状を送った旨LIN〇が来たところであった。


「小学校のやつ、捨てといてよかったのに」

「そういうのは、欠席でもその旨返事するのがマナーじゃないの?」


 確かに。私は二枚の葉書にそれぞれ「残念ながら」と「慶んで」といった一言を付け加える。

 樹利亜はこういう同窓会には行くのだろうか。ふと疑問に思った。そもそも、同窓会ってどういう人が積極的に参加したいと感じるのであろう。私みたいに、当時良い思い出を持ち合わせていない人は、あまり乗り気ではないのが一般的だと思う。しかし同時に、「今はこんなに立派になりましたよ?」と表明したいという想いがないわけではない。過去に良い思い出を持っていて、今も順調に幸せを築いている人は、何のわだかまりもなくこういった会に参加することができるだろうし、それならかつては幸せだったのに、今、不幸せだとしたら――?

 そもそも、樹利亜が今幸せなのか不幸せなのか、よくわからない。彼女と私は同い年、しかし三年遅れで彼女は入社した。二年制の大学院を卒業しているのと、一浪して大学に入学した分、合わせて三年。そして、専門外の業界に就職。こだわりの強い彼女のことだから、おそらく漠然と「何かが違う」と感じているのは間違いないだろうし、だからこそ変なことで諸先輩方に食って掛かったりしているのだろうと思っているのだけれど、あくまで私の推測でしかない。

 実家を後にするとき、近所のポストに二枚の返信用葉書をポストに投函した。メールでも手紙でも、自分のターンを長く放っておくのはあまり好きではないのである。

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