推敲

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 すか

 たたくか

 いったい、どっちがいいん?

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 故事にいわく、門を「推す」か、「敲く」か、文人ぶんじん韓愈かんゆとも語りあう。


「五月雨を集めて早し最上川」

 最初は「集めて」。でも待てよ。「」! これのほうが情感込められるな!!


 凡人でも、ふと悩む。

 「思う」のか、「想う」のか。

 辞書的な意味もだけれど、文脈とか、物語の流れとか。


 最初の一文字、最初の一行、最初の1ページ……。

 つかみのそれも本当に、狂おしいほど悩み抜きます。

 一日かけて、結局その一行しかできないことも。

 ところが一晩経てば、いやいやこれじゃだめだ、読者の心をつかめない、こちらの意図を正しく伝えられていないと、消してしまってまた悩む。


 推敲すいこう


 時間をかけるほどに。

 ときに迷路で行ったり来たり。


 料理と似て非なる。


 ひと手間でおいしさが変わる、いろどりが変わって目でおいしさを伝えることができるようにもなる。

 そのひと手間のために時間かけて……


 でも、たいていの場合かっ込まれて終わり。

 料理にかけた半日はいったい何だったのか。

 たった一口で終わりか。


 おいしかったの一言でもあればむくわれますけど。


 かくいう、私も「おいしかった」は忘れます。

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