元カノそっくりさんは双子の義妹です

星海ほたる

本編

元カノにそっくり?

「……………………………………」

「……今日からお前の妹になる柚木美雨ゆずきみうさんだ」


 高校一年の夏。父さんにお嫁さんができた。五つも年が下の美人な人。

 前の母さんは僕が幼い時にがんを患って早くに他界した。だから実の母のことはあまり覚えていない。

 それまではずっと父さんと平穏な日々を過ごしてきたのだが、流石にシングルファーザーというのには限界があり、僕が社会人になったら父さんは一人。

 ということで父さんは新たにパートナーを見つけてきた。そのパートナーである新たな母。義母になる人の連れ子が元カノの顔にそっくりだった。


「よろしくお願いします」


 そう言うと元カノとよく似たその子はニコッと笑って小さくお辞儀した――

 部屋に戻り僕は、壁の出っ張った部分に頭を擦り付けて狼狽うろたえていた。

 僕の元カノの名前は柚木由芽ゆずきゆめ。髪は黒色のボブで清楚な雰囲気。顔も可愛く整っていて、非の打ち所がない美女だった。

 僕はその子が初恋の人で、中学二年の初めから三年の終わりまで付き合い、喧嘩して別れた。

 そして今、目の前にいる子は、黒髪ロングで顔は元カノとそっくり。身長も同じくらいで、名字も柚木という。

 そう、今現在謎すぎる状況に直面していたのだ。

 頭を壁にぶつけたり擦り付けたりしても解決しそうにないので一旦一階のリビングに降りる。するとそこには紹介された女の子がダイニングテーブルの椅子に座ってお茶を飲んでいた。

 目の前まで見てもやはり彼女は元カノにそっくり。いや、もう元カノだ。


「……」

「あのぉ、突然ごめんね? 変なこと聞くけど、君にお姉ちゃんとか妹とかいたりする?」


 突然声をかけたせいか驚いた顔をする柚木さん。その反応であの少し気が強かった元カノではないということは確信できる。


「……うん。双子のお姉ちゃんがいて、この前までは一緒に暮らしてたんだけどお母さんとお父さんが喧嘩しちゃって離れてしまって」

「そのお姉ちゃんって由芽って名前?」

「え!? 由芽のことしってるの?」

「う、うん。ただの知り合いだけどね」


 由芽の話をすると彼女の曇っていた顔は少しだけ晴れ、先程よりも心にゆとりのある会話ができた。

 だけど僕は今、元カノの由芽のことが大嫌いだ。理由? それは沢山ある。

 だから双子の彼女の顔を見てると数週間前の記憶がフラッシュバックして辛くなる。

 もう忘れよう。またあの時みたいな自分にはなりたくないから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る