第3話 肥料ミサイルをうまく当てよう!

 ミサイルって、聞き間違いじゃないよな。

 なんかモニターの端っこにミサイル設定状況8%とか出てるし。


「待って待ってミサイル待って」

『はい。一時停止します』

「ミサイルってなによ。せっかく植えた種を吹っ飛ばすの?」

『いいえ違います。発射するのはキットに附属している【肥料ミサイル】です』

「肥料ミサイルて……」

『詳細はマニュアルをご覧ください』


 マニュアルの目次を見ると、真ん中あたりに肥料ミサイルについての記載があった。


「本当にあったよ肥料ミサイル」

『はい。私はマスターに嘘をつけないように設計されています。発射準備を再開してもよろしいですか?』

「わかったよ。再開して」


 該当ページには、肥料ミサイルとやらの内容が細々と書いてある。

 種よりも、かなりでかいミサイル。

 その中身は各種金属や有機物などの素材と、それを操作するナノマシンの塊らしい。

 世界樹の初期方針にあわせてナノマシンが素材を最適化し、にするわけだ。


『発射準備が完了しました。モニターにガイドを表示します。種の周囲を狙って引金トリガーをお引きください』

「はいはい。これ、種に当てちゃダメなんだよね?」

『いいえ。種に命中しても破損はしません。肥料ミサイルよりも種のほうが強度は上です』

「あー、そこは親切設計、なのか?」

『ただしミサイルが種に直撃した場合、後の世界樹の成長がいびつになりやすいとのことです』

「ダメじゃないの」

『マニュアルには、種に当てることで後の世界樹の成長にランダム性が強まり、大胆な樹形になるかもしれない、と記載されています。上級者向け、だそうです』


 改めてマニュアルを見たら、鹿の角みたいに大きく二方向に分かれた世界樹の画像が載ってた。

 確かに普通だとあんな育ち方はしないだろう。

 あえて種にミサイル当てて、予想外の成長に期待するってわけか。

 上級者というか趣味人向けだな。


「ま、今回は普通に種の周囲を狙うよ」

『承知しました。ではガイドの緑色の位置を狙ってください』


 微妙な手ブレを抑え、手元のトリガーを引く。

 発射されたミサイルは一直線に小惑星へ飛んでいき、種の少し横へ命中。

 また大量の砂煙を巻き上げた。


『肥料ミサイル着弾を確認』


 AIの声を聞いて、思わずため息が出た。無意識に呼吸を止めてたらしい。

 用の済んだトリガーはシート横のテーブルに置く。


『肥料ミサイル内のナノマシンが種へと移動を開始しました』

「とりあえず、これで今やることは全部かな?」

『はい。後は初期方針にそってナノマシンが世界樹を構築します。マスターの次回指示は1期後の予定です』


 育つまでは待ち、か。

 それまでは、のんびりするかねぇ。

 あぁ、育成キットのマニュアル読むか。ちょっと面白そうなところあったし。


「んじゃ、私はしばらく部屋でゆっくりしてるよ」

『承知しました』


 自室に移動してベッドに寝転がり、枕の横に仮想モニターを展開する。

 このマニュアル改めて見ると、かなり文章量があるなぁ。

 ま、ゆっくり読みますかね。

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