暖を取る

 校舎から出ると冷たい風が吹く。昨日の風とは打って変わって、あまりにも冷たい。今日から急に冷えるとは聞いていたが、寒くなりすぎだろう。セーターだけあれば十分だと思っていたけれど、手と足が冷たすぎる。時期じゃないかと思って持ってくるのをやめたカイロ、持ってきてたら良かった。

 寒がりの先輩も冷えに苦しんでるのかと思ったら、全然そうでもない。むしろ平気そうだ。なんでだろ、と思ってみてみると分かった。この人カイロ持ってる!

「先輩」

「何」

「カイロ持ってますよね」

「貸さないぞ」

「まだ何も言ってませんけど!?」

 頼む前に断られてしまった。悲しい。なんでカイロ持ってこなかったんだろうな、本当。そうでなければ手の冷たさは改善できたはずなのに。

 あ、いいこと思いついた。

「先輩、手貸してください」

「手?」

「はい」

 訝しむ先輩の手をそのまま握る。

「つめたい!」

「カイロを貸してくれないなら先輩がカイロ代わりになってくれたら解決ですね! 助かります!」

「助かります! じゃない。何考えてんだよお前」

 溜息を吐いた先輩に、握った手とは逆の手で軽く叩かれた。痛い、と訴えると自業自得だと返ってくる。全くもってそのとおり。でも手が離されないから多分許してくれてるんだろうな。

「カイロ代の代わりに温かい飲み物奢ります!」

「めちゃくちゃ高くて美味しいやつ頼もうかな」

「えっ。やすいのじゃだめ……ですか?」

「生憎、俺は安くないんだよ」

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