第2章 カリール城

第11話 占い鶏エンウー

「はぁーあ……。よし!」


 めそめそ終わり! ちゃんとね、スフィアさんに挨拶をしなきゃ。

 私はただの旅行商です。珍しい品物を売りに来ているだけです。

 これからご主人と旅をする事になりますが、主人公アルマスを助けるためであって、決してやましい事はありません。傍でやらしい妄想はたくさんしますが、みだらな行為は絶対に致しません、と。


「さーて、私も手を合わせなきゃねー」








 戻ってきました、共同墓地。


「お待たせしました、テイオスさん」


「おう、ココちゃん。腹の具合は大丈夫かい?」


「はい! スッキリしました!」


 グッと親指サイン。


「そりゃー、よかった」


「私も手を合わせていいですか?」


「もちろんだ。あいつも喜ぶさ」


 スフィアさんの墓標の前に立ち、手を合わせた。


 推しを、テイオスさんを愛してくれて、ありがとうございます。

 あなたのご主人を消させないために、この世界を消させないために、主人公アルマスをストーカーする旅に一緒に出ます。


「……よし」


 目を開けて手を離し、気合いを入れた。


「ありがとな、ココちゃん」


「いいえ! 人として当然の事をしたまでです!」


 それに、あなたのその笑顔で私はお腹いっぱいです!


「そういやぁ、神とやらのお告げで旅に出る事になったけどよ。アルマスはどこへ行ったんだろうな」


「あー……」


 の後、私たちは主人公アルマスがこっちに向かって来たから逃げましたが、実は。主人公アルマスは村長に呼び止められて、こう言われるんです。


『村長「待つのじゃアルマス 言いわすれたことがあった カリール王が 呼んでおったぞ お前の力をかしてほしいそうじゃ」』


 と。

 だから、カリール城へ向かっています。


 と、言えたらよかったんだが。


「……閃いたなり」


 今までの仕返しをしてやるなりー!


「大丈夫です! 実は私の相棒エンウーは、ただの鶏じゃないんです! 何と! 占い師ならぬ、占い鶏なんです!」


「コ、コケッ?」


「ねー?」


 にっこりからの、目をカッと開く。


「コ、コケ! そうなんだコケー! 実は僕、占いができるんだコケー!」


「おー、すげーなー! じゃあアルマスがどこに行ったか占ってくれよっ」


「ま、任せるコケー! コーケコッコー!」


 ウンエーは円を描くように走り回ると、ばたーん! と倒れた。


「アルマスはこっちに向かったコケー!」


 ウンエーの頭が指す方角、北東。カリール城がある方だ。


「カリール城か、何の用があるんだろうな」


「……ひ」


 めが攫われてしまったんですよ。だから、助け出してほしいと頼まれるんです。

 ま、結局、魔王ではなく、魔王の部下に攫われたんですけどねー。


「ひ?」


「ひー……と探しを頼みたいらしいと、エンウーの占いで出たんです! ねー?」


 全力威圧にっこり。


「そ、そうなんだコケー! コケケッコー!」


 ウンエーは反時計回りに走ると、足を広げて倒れた。


「コケッ」


「なるほどなっ、人という文字を表しているんだなっ。ココちゃんの国の文字だったよな?」


「ええ、まぁ……」


 色々と説明が省けてありがたいが、私のことは、どういう風に推しにインプットされているんだろうか。


「魔王討伐に人探し、アルマスは大変だなー」


「……ですね」


 大丈夫です! 姫はあっさり見つかるし、魔王はレベルを上げれば、店で売っている武器でヌルゲーマーの私でも倒せました!


 と、言いたいが、せっかく始まる推しとの旅だ。ワクワクしたまま出発したいじゃないか。だから。


「ですよね! アルマスの旅は、きっとこれから大変になるに違いありません! だから! 商人の私たちがっ、こっそり助けてあげましょう!」


 グッと力こぶを見せた。ぷよんぷよん贅肉で筋肉は盛り上がらないけど!


「おう! そうだなっ」


 ニッと笑い私のマネをした推し。硬くなった逞しい筋肉が盛り上がった。それぞ力こぶ! かぶりつきたい上腕二頭筋!


「じゃあ、今度こそよろしくなっ、ココちゃん」


「はいっ、こちらこそっ」


「僕もいるコケー!」


「ははっ、そうだなっ。三人でアルマスを助けてやろうなっ」


「コケー!」


「コケー! ほらっ、ココちゃんも!」


「コ、コケーィ……」

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