第7話 仮の名

「サマス、手加減なしで本気の勝負だ」

「そうだ!僕の名前だけどかりの名だから」

「仮の名?」

「僕の本当の名前はサーニ」

「父上や母上、それにネリカぐらいかな。僕の本当の名前を知っているのは。」

「どうして名前を変えている?」

ソーゼスは素朴な疑問をサーニにぶつけた。

「それはね僕と国を守るためと父上は言っていたよ」

「国を守るために何故、名前を変える必要がある?」

「王子というだけで命を狙われるからと思うよ」

「家来が居なくなって一人になっても平気でいられるんだから、お前は危険をかえりみないだろうな。」

「そういう事」


そこでソーゼスはもう一つの疑問に対して聞いた。

「サマ・・いやサーニだったな」

「サーニ、俺に何故、まことの名を言った?」

「ソーゼスは魔物だから悪い事をするとみんな思ってるでしょ。」

「ああ、そうだな」

「でも、僕はそう思わないよ」

何故なにゆえ、そう思う?」

「他の魔物は分からないけど、話していて分かった事だけどソーゼスは人間を苦しめたりしないと思う」

「僕が本当の名前を言っても、それで僕の国に何かしようとしないはず」

「僕を人質にとる事もしないでしょ。」

「俺は向かってくるやつには容赦はないが、何もしてこないやつには俺は興味がないからな。」

「だから僕はソーゼスに本当の名前を言ったんだよ」


「本当に変わったやつだ」

「今から戦おうとしている魔物に対して、そこまで信じられるとはな」

「それは僕もだよ」

「魔物って自分勝手で獰猛どうもうなのかと思っていたけど、ソーゼスを見ていて違うと思った」

「違いはないさ。魔物は獰猛どうもうな生き物だ」

「ただ、お前と同じで俺も魔物の中では変わり者というだけだ」

「ふ~ん、ソーゼスも変わっているんだ」

そうだな。話はこれで終わりだ」

「俺かお前かどっちが立っていられるか勝負をつけようじゃないか!」

「うん。望む所だよ」

長い話の末、似た者同士のサマス改めサーニVSソーゼスとの戦いが切って落とされようとしている。


その頃、ニヒルではネリカがお祈りをしていた。

「サーニ・・王子様、どうか無事でお城に戻ってきてください」

サーニが両親以外で一番信頼しているのはネリカなのだ。

信頼しているネリカだからこそサーニはまことの名を告げたのだ。


ネリカは城の礼拝堂でずっと祈り続けるのだった。

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