第11話 霊体なのに気楽な王子様

帰ってきたと思っていた王子様の身体が透けていたからネリカは驚きの声をあげた。

「王子様、どうしたのですか?」

「どうしたって何が?」

サーニは聞き返した。

「王子様、分からないのですか?」

「僕の身体の事?」

「そうです」

「気が付いたらこうなっていたから僕にもわからないんだよね。」とサーニはこたえた。

「おうじさま・・うっうっ・・」

ネリカは泣き出した。


「ネリカ、どうして泣いてるの?」

ネリカが泣いている理由がサーニには分からない。


しばらく泣いた後、ネリカはサーニに聞いた。

「王子さまは無事なんですか?」

サーニは躊躇ちゅうちょなくネリカに言った。

「無事かどうか分からないけど、どこかにいるんじゃないかな。」

「どこかってどこですか?」

「さあ、僕にも分からない」

「分からないって」

ネリカはあきれるばかり。


「王子さま!探しに行きましょう!」

「え、探しに行くって僕を?」

「そうです」

ネリカはきっぱりと言った。

いつも消極的なネリカが国の外にサーニの身体を探しに行くというのだからサーニは驚いた。


「国の外には魔物がウジャウジャいるから危ないよ」

「危ないのは王子様です!」

「今の王子さまは魂の塊みたいなものなのです!」

「そうなの?」

「そうです!」

サーニの他人ひと事のような問いにネリカは少しキレ気味に言った。

「早く見つけないと・・どうなるか・・・」

ネリカはあまり他人ひとと話をしないがサーニとだけは自然と話せる。

サーニは強い口調で怒られているのに嬉しそうにしている。

「王子さま!何を笑っているのですか!!」

「僕は嬉しいんだよ。ネリカが僕の事を本気で心配している所が。」

サーニは心配してくれるところが嬉しいのはもちろんだが、何より嬉しかったのは自分の事が見えている所。国王でさえ見えていなかったのにネリカだけには見えているからだ。


そして一言「ありがとう」と言った。

「おうじさま?」

サーニはニコニコしているばかりだからネリカにはどうしてお礼を言われたのか分からなかった。


「王子さま、さっそく行きましょう。」

「今?」

「はい!今、すぐにです!」

ネリカの迫力にさすがのサーニも呆気あっけにとられた。

「良いけど、でも父上や母上に言わなくていいの?」

「怒られると思いますけど、侍従長に言ってきます。」

「そうなんだ。でも、父上や母上にも言った方が良いよ。」

「分かりました。」

サーニはこんな行動力のあるネリカを見るのは初めて。

王子様の事となると普段とは違う姿を見せるネリカ。


「ネリカはすごいな~。僕も見習わないといけないな。」

サーニはネリカの行動力に感心するばかり。

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