自分探し

第9話 帰ってこない王子様

 王子が魔物退治に旅立って数ヶ月経って兵士たちが戻ってきた。

 疲れ切っていたが兵士が全員、戻ってきたから国中が歓喜に包まれた。だが、兵士たちの中に居るはずの王子の姿がない。ほとんどの人が王子の居ない事に気付いてないのに一人だけ王子が居ない事をさっした。


「王子様?」

「王子様はどこですか?」

 ネリカは兵士たちに聞いて回った。

 兵士たちは「・・・」と何も言わない。

 王子を置いて逃げて来たとは言えないのだ。逃げ帰っている途中、兵士たちも王子の事が気にかかったがソーゼスの元に戻る勇気はなかった。

 屈強と言われるニヒルの兵士だけど巨大な敵を前にすると逃げるしかない。そのなかでサーニは平然としているのだからさすがは王子さま。


 サーニが居ない事に誰もが国王のサルシでさえ気付かなかったのに居ない事に気付くとはサーニの事を一番心配していたのがネリカだという事が分かる。


「やはり帰ってこなかったか」

 サルシはサーニが魔物を討伐できるとは思っていなかったが弱い魔物なら倒してくれるのではないかと少なからず期待していた。

 弱い魔物なら良いのだが退治に向かった相手が悪かった。

 サーニは何を思ったのか魔物の中でも最強格のゾーダスに戦いを挑んだのだ。訓練を積んだ兵士でも勝てないのに剣もまともに振れないサーニが勝てるはずはない。

「なぜ、王子はゾーダスに挑んだのだ」

 王は兵士を問い詰めた。

 思いつめたように一人の兵士が応えた。


「王子は最初から戦うのなら大物が良いと言っていました」

「私たちは弱い魔物を何体か討伐すると思っていたのがソーゼスの所に向かっているから驚きました」

「それでも私たちは王子に従いました」

「なんという事だ、あのバカ王子が!」

 王様はいきどった。


 サルシ王は口ではサーニの事をののしっているが心の中では心配している。

「サーニ、どうしてそんな無茶を・・」

「お前がソーゼスにかなうわけなかろう」

 ネリカは涙が止まらなかった。

「王子様、おうじさま・・・」

 両親以外でサーニの事を心配しているのはネリカだけなのだ。

 兵士だけではなく国民の誰もが王子が帰ってこない事を気に留めていない。その事もネリカの悲しみを増幅ぞうふくさせている。


「王子様、無事な姿を見せてください・・・」

 ネリカには帰ってこない王子の無事を祈るしかない。

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