第18話 居場所は教室だけにしなくてもいい

『僕らが保健室出身のワケ』18話

花岡美咲は朝起きて、母に学校に行ってきますと挨拶をした。

母は大丈夫?と声をかけたが、美咲はぎこちない笑顔で大丈夫と言った。

美咲にとって2ヶ月ぶりの学校は試練だった。教室に入るのは約1年ぶりだった。

教室のドアを開ける手が震えていた。

そんな美咲に橋本京香が声をかけた。

『美咲ちゃん!おっはっよう。実は私も同じクラスなんだよ知ってた?教室に行く勇気が出ないなら、私が魔法をかけてあげる。ちちんぷいぷい大丈夫。これで、美咲ちゃんは教室...入れるよ』

美咲には信じられない言葉だったけど、目をつぶって大丈夫と思ったら入れたのだった。

後ろを振り返って京香ちゃんにお礼を言おうと声をかけた。

すると京香は言った。

『私は今日は美咲ちゃんに魔法をかけちゃったって疲れちゃったから、教室には入れないや。美咲ちゃん、ファイト!』

美咲はそんな京香ちゃんにバイバイして、自分の席に着いた。

久しぶりの自分の席に座るのは緊張したが、授業が始まるとなんてことはなかった。

一度も使うことのなかった保健室に私は不思議に思った。こんなにも、使わなくても通うことが出来ることが嬉しかった。それと同時に保健室のみんなに会いたいと思ったのだ。でも、自分で決めたことである保健室には通わず教室に入ることを絶対に守ろうとしていた。

守ろうと決めてから数日学校に通った頃に体育の時間に校庭へでたのだったが、周りは友達と一緒に話していて、楽しそうだなと美咲は思った。2人組になって準備運動をすることになった。その時、美咲は頑張って周りに声をかけようとしたのだが、声がうまくでなかった。

先生から2人組を作りなさいと言う声も周りの声も聞こえなくなった。

気づいたら保健室のベットで横になっていた。

美咲は起き上がって、ベットから出ようとした時、田島先生が背中を支えて大丈夫よと声をかけた。

美咲は泣きながら田島先生に話をした。

『私、あの後どうなったんですか?私、確か2人組を作ろうとしてそれで...』

田島先生は泣いている美咲にティッシュを手渡し、話した。

『体育の先生が言うには、突然過呼吸になってそのまま意識を失ったそうよ。体育の先生が袋を持ってきてあなたにゆっくり呼吸を整わせて意識も回復してきたらしいけど、一応保健室に寄った方がいいと判断して、今ここにいるってわけ。ここにきて安心した?別にいいのよ、無理して誰かと比較して友達と会わないために教室に行く理由作らなくても。もうここに居なさい。ここは怪我をしていく場所だけじゃなくて、心を怪我してくる場所、居場所でもあるんだからね。それだけは覚えておいて!』

美咲は田島先生をぎゅっと抱きしめた。

その時間がどのくらい続いたかは分からないが、美咲と先生だけの時間だった。

美咲は先生に言った。

『また明日から保健室に来るので、よろしくお願いします。それからみんなにはLINEでも実際にあった時も謝ります。先生、ありがとうございました』

そう言って、帰っていく美咲を見て先生はポツリと言った。

『美咲さんの今に幸あれ』

次の話は橋本京香さんがついに小説家デビューをするという話である。

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