第36話 ドワーフ国で、その2


 ギバラが勝手に城の中を歩きながらトムに。


「トム様に姓は無いのですか?名前を聞かれた時に姓が無いと平民と思われ、交渉事が上手くいきませんが」


 トムは考えて前世の姓、坂東を使う事にして。


「今まで言わなかったが姓はバンドウだ」


 ジエルが。


「トム様は貴族だったのですか?」


 ジエルにも前世の記憶がある事を言っていなかったので近いうちに話そうと思い、今は嘘をついて。


「俺が捨てられていた時の肌着に姓が書いてあったのを園長が教えてくれたのを思い出したよ」


 「そうだったのですか」


 ギバラも納得して、工場みたいな所に行き。


「ギオス、居るか・・・・・・」


 中からギバラに似た男性が出て来て。


「なんだ、ギバラ兄貴か、帰ったのか、何の用だ。わしは今忙しいのに」


「良い話を持って来たが時間を取ってくれるか」


「良い話か、仕方ねえな、応接間に行こうか」


 応接間に行くと国王と思われるギオスが興奮して。


「チョット前にドラゴンが現れてよ、ブレスでこの国が焼け野原になるかと思って腰を抜かしたよ、何もせずにいなくなって良かったぜ」


 ミンクが笑いを押し殺して。


「あのドラゴンは、今は人化していますが此処にいるライザーですよ」


 ギオスがライザーをマジマジトと見て。


「ウ、嘘だろうー! ホントかよ。信じられん」


ライザーが冷たく。


「信じられないなら、此処でドラゴンの姿になっても良いが、この部屋が壊れても良いか」


ギオスが土下座して。


「すみませんでしたー! 許して下さい」


 ミンクが平然と。


「所で貴方は誰ですの? 私たちの素性も知らずに自己紹介もせずに失礼じゃありません」


「申し訳ございません。わしはこの国の国王でギオス・バイオスと言います。


 ギバラが、


「こいつは俺の弟で慌て者だが人は悪く無いから許してやってくれ。ギオス、俺が連れて来たのは新しく深淵の森の中にフォーク国と言う国を興したトム様だ」


「何だと! 深淵の森の中に国を作ったのか?国じゃなくて村だろう」


 ミンクが自慢して。


「残念ながら村では無くてドワーフ国の5倍はある人口が5万人の国で、国王のトム様は全魔法が使えて魔法聖剣の使いてで、その上ドラゴンとS級魔獣のオーガキングを従者に従えた最強の国王なのよ」


 ミンクの話を聞いたギオス国王が暫く絶句していたが。


「・・・・・・嘘だろう! 今までそんな人間がいるのを聞いたことがないぞ」


「あら! 現に目の前のトム様はドラゴンのライザーを従者にしているでしょう」


 ライザーがギオス国王を睨んで、


「ドワーフは疑り深いのう。我はトム様と戦って悔しいが簡単に負けたので、潔く名前を頂いて従者になったのだ」


「簡単に負けたのですか?」


「そうじゃ、この国など一瞬で焼け野原に出来る我が負けたのじゃ。何度も言わすな・・・・・・」


 ミンクがこの時とばかりに。


「トム様は普段は優しいけれど本気で怒らせない方が良いわよ」


 ミンクとライザーが交渉を有利に進める為にそれとなくギオス国王を脅していたのだ。


 ギオスがそう言えば名前を聞いていなかったと言いトムが自己紹介をして。


「俺はトム・バンドウだ、宜しく」


 ギオスがトムの名前を聞いて。


「ん?バンドウ?・・・・・・確かエルフから聞いたがバンドウはエルフ族に伝わる昔に此の大陸を救った英雄の名は、ヒデオ・バンドウだったと聞いたが、もしかして子孫なのか?」


 思わぬ事を言われてトムは日本人の名前なのでその英雄も転生者かも知れないと思いながら。


「俺は捨て子で親は知らないが、肌着に名前が書いてあったのだ」


 ミンクが頃合いを見て。


「トム様がドワーフ国に来たのは鍛冶師を借りる為です、新しく宝石と金の取れる鉱山が見つかったので、協力して欲しいのですが」


 ギバラが。


「それだけでは無く砂鉄の砂浜も見つかったから協力した方が良いと思うぞ」


「何だとー! 砂鉄がとれるのは本当か?砂鉄を半分、宝石と金を2割くれるなら協力をするが、どうだ」


 ミンクが大笑いをして。


「アッハハ! 強欲だねー。話し合いは此処までね、フォーク国には創造の魔法を使えるナナリーナ様とトム様がいるから貴方たちの協力は要らないわ、ギバラの顔を立てて良い話を持ってきて上げたのに残念ね。トム様帰りましょう」


「ま、待ってくれー! 俺が悪かった。さっきの要求は取り下げるからそっちの条件を言ってくれ」


「あら、そうなの。こちらの条件は、砂鉄は半分上げるけど宝石と金は0,5%よ、これ以上を望むなら交渉を止めて帰るわ」


「えっ?砂鉄を半分もくれるのか、分かったその条件で協力しよう」


 砂鉄はドワーフにとっては貴重だがフォーク国では普通の鉄で充分なのでエミリは今後の事も考えて飴を与えたのだ。


 ミンクのお蔭で交渉はトムが考えていたより良い条件で決まり喜んだのです。


 派遣する鍛冶師は思ったより多い50人になりトムは100人くらい迄なら移転出来るので派遣される50人を連れて。移転して帰る事にしたのだ。

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