第16話 ロラタ王都で、その1

 

 人のいない場所に降りてジエルが人化して人間の姿になり、バースが小鳥の姿になってトムに肩に留まり王都の大通りを歩き始めると、あのテラスで助けた美少女が数人の騎士に守られて姿を現したのです。


 その美少女がトムに向かい。


「命を助けて頂きありがとうございました。お礼をしたいので私の家に来ていただけませんか」


 その頃には死霊たちに襲われて助かった住民たちが家から出て歓声をあげて喜んでいたが、肉親や友達を殺された住民は泣いていたのだ。


 そんな中でトムが死霊と戦い聖の流星魔法を放って死霊を全滅させた所を見ていた住民が。


「あの方が死霊から王都を守った英雄だ」


 と言って騒ぎ出しトムは騒がれるのが嫌なので逃げようとしたが美少女が袖を掴んで離さないで。


「私は、貴方様の戦いを一部始終見ていて、肩に留まっている小鳥さんが鷲の獣人族と言う事と綺麗な女性が魔物だという事も知っております。どうかお願いですから両親に会って下さい」


 住民が集まって来たのでトムは思わず前世の言葉で」。


「あっちゃー! バースとジエルの正体を見られたのか、不味いな」


 美少女が上品に笑い。


「クスクス・・・・まるで私が脅しているみたいですわ」


 トムは住民たちも集まり騒ぎ出したのでとりあえず逃げる為に何処の誰とも知らない美少女について行くと王城に連れていかれて。


「ん? 此処は王城じゃないか、君は王城に仕えているのか?」


 王城を警備していた近衛騎士が駆けつけて来て。


「王女様も帰りなさい。何処に行っていたのですか、陛下が探しておりますよ。同行している方はどなたですか。不審者は通せませんが」


「この方は、死霊を倒して王国を救ってくれた英雄様よ。そう言えば名前を聞いていなかったわ。私はローラン・ライガーと申します。英雄様、お名前を教えて戴けますか」


「英雄様は止めてくれ、俺は、トムだ。君は王女だったのか。俺は面倒な事は嫌なので帰るよ」


「駄目です! 此のまま帰られたら私が両親から助けて頂いたのに恩知らずだと怒られます」


  近衛騎士たちが騒ぎ出し。


「死霊を全滅させた聖の魔法使いか。陛下の所に連れていかねば俺たちも処罰されるぞ、トム様お願ですから陛下に会ってください」


 近衛騎士たちからも懇願されて袖は逃げないように美少女にガッチリ掴まれてトムは仕方なくローラン王女に袖を握られたまま王城に行ったのです。




 トムが死霊たちを消滅させた聖魔法や全てを隠れて見ていた、美少女魔人のサリーが。


(なんなのよ、ジエルでさえ綺麗過ぎて厄介なのにあんな綺麗な王女まで出て来て折角私に会うお婿さんを見つけたのに、もう~、今回の事はお父様に報告しないと・・・・)


そう呟いて消えた事はトムたちは知らなかったのです。




 ローラン王女は、用意があるからと別れて豪華な部屋に通され、逃げられないように近衛騎士に監視されて暫く待つと綺麗な女性が来て。


「トム様、ご案内いたしますので私に付いて来てくださいませ」


 トムとジエルが歩き出すと近衛騎士たちも2人を囲むように歩き出しトム苦笑いをして。


「俺はもう逃げないから監視しなくても良いよ」


「はい、私たちは監視ではなく護衛ですからご心配なく」


 ジエルが。


「トム様、こうなったら成り行きにませましょう。それに国王がどんな人か興味があるし」


「それもそうだな、いざとなったら移転して逃げれば良いし」


 先を歩いていた女性が足を止めて。


「こちらの部屋でございます。どうぞお入りください」


 部屋の入り口には謁見の間と書かれてあり、どうやらここで国王と会うらしいい。




 謁見の間に入ると正面の一段高い場所に4人の男女が豪華な椅子に座り、その下の左右の両側に貴族と思われる数十人がいて興味深そうにトムとジエルを見ていたのだ。


 案内していた女性が。


「中央の白い線の所まで進み片膝を付いて挨拶をお願いします」


 言われたトムとジェリーは、仕方なく中央の白い線の前で片膝をついてトムは前世のテレビドラマで見た、王様に初めて謁見した時の俳優のセリフを真似て。


「初めてお目にかかります。私は平民のA級冒険者、トムと申します。この度は陛下にお会いできて至極光栄に存じます、何卒よろしくお願い申し上げます」


 ジエルも。


「私は同じ冒険者パーティーのA級冒険者で平民のジエルと申します。宜しくお願いいたします」


 2人の挨拶が終わると豪華な椅子にいる国王と思われる男性が驚き、両側の貴族たちが騒めき。


「高位の貴族より見事な挨拶をするあの者は平民なのか?何処かの国の王族ではないのか」


 と騒ぎトムは。(しまった、又、失敗したか)思ったのだ。


 壇上にいるローラン王女も(トム様はもかしたら何処かの王子で身分を隠しているのかしら)と思ったのです。



 トムとジエルの挨拶が終わると壇上の男性が。


「丁寧な挨拶痛み入る、余はこの国の国王、アイオイ・ライガーだ。この度は死霊の襲撃から王都、いやこの国を守って頂き、礼をいう。あの死霊を消滅させた聖魔法見事であった」


 トムはこの場所から早く逃げ出したいので、普段の口調で。


「俺は出来る事を下だけですから。もう帰っても良いですか」


 此れには皆が驚きアイオイ国王が。


「褒美はいらぬのか?」


「褒美より、この型苦しい場所から早く帰りたいですが」


 アイオイ国王が大声で笑いだし。


「ガッハハ、ハハハ! 国を救ったのに褒美より帰りたいとは、ハハハハハ、だが国を預かる余としては、そうはいかんのだ。報奨金は任せて貰うが何か望みはないか」


 トムは隣のジエルに。


「報奨金は貰えるらしいが、何か欲しい物はないか」


「う~ん、あっそうだ! フォーク村のある場所を貰えば」


 トムもそれが良いと思い。


「一つだけお願いがあります。俺たちは深淵の森の中に小さな村を作っていますが、その村を自由に使って良い許可を貰いたいのですが」


 国王や貴族が驚き。


「深淵の森だと! 人間が住めるのか?」


 

 アイオイ国王が。


「誠か! あの森は一応この国の領地だが凶悪な魔物や魔獣が多く未開地なのに・・・・・・・・分かった。深淵の森の奥3分の2は」王国を救った褒美として王国から切り離してトム殿の領地として進呈しよう。無理だと思うが新しい国を興すも自由にするが良い」


 それからトムとジエルは帰ろうとしたが別室に連れて行かれたのでした。

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