第14話 死霊との闘い、その4
ギルドに帰ると直ぐにギルドマスターのボルドが、黒の森の様子を聞いて来た。
トムが黒の森で見てきたことを報告して黒沼から出た死霊ドラゴンが無数の死霊を引き連れてロラタ王都を襲撃するために向かったと言うとボルドは。
「大変だ! 急いで王都のギルドに知らせないと王都が危ない」
トムは冷静に判断して。
「今から連絡しても間に合わないだろう。死霊ドラゴンは空を飛んで行ったのに、早馬でも王都までは3日は掛かるから無理だ」
鳥人キングのバースが。
「わしが高速飛行を使えば今日中に王都に行けますが」
「そうか、今からなら何時間後に王都に着く?」
「早ければ5時間後遅くても7時間後には王都に着きます」
トムは移転の為の座標があれば空間移転を出来るのを思い出し短刀を出して自分の魔力を込めてバースに渡して。
「バースこの短刀を王都に近いなるべく人の来ない場所に置いてくれるか、時間は今から8時間後までに王都に着かなくてもなるべく王都に近い場所に必ずこの短刀を地面の上に置いてくれ。8時間後に俺たちも短刀を置いた所に移転して王都に行くから頼んだぞ」
「分かりました、任せて下さい」
直ぐにバースが空に飛びあがりあっという間に姿が見えなくなった。
ジエルが。
「トム様は空を飛べるのにバースと一緒に飛んで行った方が早いのと違います」
「バースの高速飛行は俺の10倍の速さで飛ぶから一緒に行くのは無理だ。それに王都までは距離が長すぎて魔力を使い過ぎたら王都に着いても死霊と戦えないだろう」
「アッ! そうですね。私の考えが浅はかでした」
「それにジエルも一緒に行って死霊と戦って欲しいからな」
「はい、分かりました、私も空を飛べたら毒液を空から死霊に放てるのに・・・・・・・・」
「バースの背に乗って戦えないのか?」
「そうか、考えもしなかったわ、王都に行ったら試してみます」
そんな2人を見ている冒険者たちはジエルの本当の姿を知らないので人間の絶世の美女だと思っていて、トムを羨ましそうに見ていたのです。
トムは黒の森で調査をして疲れていたので部屋に戻り仮眠をとっていた。
その頃、ロラタ王都の王城では死霊が現れて大混乱に陥っていたのです。
国王のアイオイ・ライガーが緊急に貴族たちを集めて突然現れた死霊の対策を話し合い、魔法団に死霊から王都を守らせることにして直ちに魔法団に命令したのだ。
この世界の人間は、魔法を使えるが殆どは薪に火を付けたり、洗濯水を出したりする生活魔法で戦いに攻撃魔法を使える人は少なく千人に1人位で、ましてや治癒魔法、防御魔法、聖魔法を使える魔法使いは数人しかいないのだ。
王国を建国した初代国王は魔法を使える冒険者で、貴族には国を守る為に有能な魔法使いを採用した。
今でもその子孫たちが先祖の遺伝子を受けついて魔法使い貴族として権力を握りの一部の貴族は魔法第一主義者で魔法の使えない平民を見下していたのです。
今の魔法団の団長は火魔法のスキルと数少ない防御魔法のスキルを持っているキングイ・ダイバー、35歳で筆頭公爵なのだ。
キングイ魔法団長は国王から命令されると魔法団員50人を集めて、防御魔法を使える3人に王都を守る結界を張らせた。
だがその結界は1時間後に破られてしまい、王都を守る防御壁の上に団員を配置し戦わせたが、火魔法、雷魔法のスキル持ちの団員以外のスキルは通用せず。
仕方なく王城に引き上げて王城の守りに専念したのだ。
王都には死霊が入り込み住民を襲い始めて王城に引き上げて来た魔法団長キングイにアイオイ国王が。
「死霊はどうなった? 追い払ったのか?」
キングイ魔法団長は悔しそうに顔をゆがめて。
「申し訳ございません。死霊の数が多く、王都を守る結界も破られて火魔法と雷以外は通用せず、已む得なく最後の砦の王城を守る為に撤退してきました」
アイオイ国王が天を仰いで。
「何と! 死霊とは・・・・・・それ程なのか」
側にいたまだ16歳で少女のローラン王女が。
「私は火魔法が得意なので魔法団と一緒に
死霊と戦います」
王太子のキーソンも。
「俺も火魔法を使えるので死霊と戦って住民を守ります」
アイオイ国王が子供の発言に驚き。
「駄目だ! 子供のお前たちが死霊と戦うのは無理だ、止めなさい」
シャルル王妃が覚悟を決めたのか。
「あなた! この国最強のキングイ魔法団長でも防げない死霊なら、王都どころかこの国は滅ぼされるでしょう。私たちも子供たちと一緒に死霊と最後まで戦って・・・・・・ウッ、ウウウ・・・・・・キーソン、ローラン、ごめんなさいね。ワァーウウウー」
そう言うとシャルル王妃は泣き崩れたのでした。
キングイ魔法団長は側の机を叩き。
「バーン! クッソー! わしにもっと力があったら・・・・・・・・」
アイオイ国王も窓の外を見て空を飛び回る鳥死霊と地上で勇敢にも死霊と戦って殺される兵士や住民を見て。
「余は愛する妻と子供さえ守れず、国民も守れない情けない国王だったのか・・・・・・」
絶望の言葉を呟いたのでした。
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