第20話 苦痛な戦い

翌日の三限目が終わると昼休みのチャイムが鳴り響く。

月曜日であるためか、生徒たちは気が抜けている様子で学食に向かっていく。

死ぬほど頭が使う数学の後には栄養が欲しがるのは必然。特にブドウ糖を欲しがっている生徒は、ゾンビのようにゾロゾロと学食に向かう。

亮はその死んだようなゾンビ集団を行き去るのを待ち、マイペースで購買に向かうとしていた。その時だった。


「あれ?亮くんは食堂に行かないの?」


 見慣れた顔の少女がひょっこりと、亮の席に顔出す。

 亮が振り向くと、ミチルは包みを持ちながら、微笑みを浮かんでいた。

 どうやら、彼女は弁当派だ。学食に行かずに、ここで食事する組だ。


「いや、今日は購買にしようかな、と思っている」

「じゃあ、よかった」

「?」


 ミチルの言葉に戸惑う。

 その「よかった」の意味がよくわからないのだ。


「実は、お母さんがお弁当つくり過ぎて、困っているの。よかったら、この一つ、食べくれないかな?」


 と、ミチルは亮の机にお弁当箱を置いてから、箱を開ける。

 そこには定番ご家庭の弁当であった。

 ウインナーに卵焼き。ご飯の上には海苔は乗っている。普通のお弁当だ。

 豪華ではないが、家庭的かつ健康的な弁当であった。


「作り過ぎたより、普通のお弁当に見えるけど?」

「あー、実はお父さんの分なんだけど、弁当を忘れて行ったの。その捨てるのももったいないし。よかったら、食べて行ってくれないかな?お母さんが作った弁当を無駄にしたくはないし」

「なるほどね。僕からすればありがたい話」


 無料で昼食を済ませるのは、どう考えても断る理由がない。

 以前にもこういうことがあった。その時は、亮は彼女の弁当を食べたが、全くもって問題がなかった。

どちらかといえば、普通に美味しかった。

ご家庭の味だが、これも馬鹿にできない味。塩気は少なく、実家を思い出させる味だった。

今回も、無償で実家の味わえるのはとてもありがたい話。

今日はミチルのお母さんが作った弁当をご馳走することにしよう。

 なんでついている日なんだ。

 と、亮はそう思いながら、弁当箱を前にして、感謝の気持ちを込めて、いただきます、と声にしようとする。


「じゃあ、いただき……」

「西園寺亮はいるかしら?」


 亮が声を放っている途中に来客がきた。

 扉の方へ目線を送ると、そこには顔見知った人物が立っていた。黒髪ロングを風になびく、鼻筋が高く、黒い双眸はこちらへと見ている。この学園で一番美しいと称されている女子生徒。

そんな凛々しい姿をしているのは一人しかいない。咲良先輩だ。

 呼ばれた亮は首を傾げて、彼女の方を見た。


「あれ?咲良先輩?何かようですか?」


 亮が呑気に彼女の方を見ていると、彼女は凛々しく足を運ばせて、亮の前までやってきた。


「あなたこそ。何呑気に昼食取っているの?馬鹿なの?死ぬの?」

「……それはそれでひどいと思うのです」

「話す暇はないわ。早く支度しなさい」

「あ、手を引っ張らないで。自分の足で行きますから!」


 強引に手を引っ張る咲良先輩に、亮は慌てて体勢を立て直す。

 すると、咲良先輩は手を離すと、目先だけ亮の方を見て、急かすように命令する。


「早く。付いてきなさい」

「はい!」


 と、先に咲良先輩が教室の外へと歩いて行った。

 亮は彼女についていくが、隣のミチルの視線に気付き、彼女の方へと振り向く。


「……ミチル。ごめんね。今日は急用があって。弁当は食べられない」

「ううん。いいよ。私の方こそ、亮の事情を考えていなくて」

「今度、埋め合わせするから」


 亮がそれだけ言うと、廊下から咲良先輩の怒声が響く。

 一体何がそんなに気に入らないのかが、わからずにいた。

 しかし、このまま放置するわけにもいかないし、急ぎ足で彼女のところに向かった。


「遅い。早くしなさい」

「早くって何そんな焦っているのですか?」

「同人誌の創作のことに決まっているじゃない」

「あ……」


 咲良先輩の言葉に亮は言葉を詰まらせる。

 ……そうだった。絵を描かないといけなかった。

 現状は一枚の絵しか描けなかった。それも、完成していない絵。

イラスト集を創作するには絵の10枚を完璧に描かないといけない。それは咲良先輩と事前に決めた枚数だった。

 つまり、まだ何も進歩していなかったのだ。


「後10枚。描きなさい。今すぐに」

「無理ですよ!タッチペンなんてありません!」


 咲良先輩の横暴な意見に、亮は正論で反論する。すると、彼女は「それもそうね」とだけ解答した。

 だが、歩む脚は止めることなく、進んで行った。

 そんな急ぎ足をする所為で、亮はどこに連れて行かれるのか、気になった。

 昼休みはまだ、時間がある。少なくとも50分以上は余裕に使えた。

 急ぐ必要性はないと考えていた。

 なので、亮は口を開く。


「それはそれとして、咲良先輩。僕たちはどこへ向かっているのですか?」

「放送室よ。今、無人になっている」

「放送室の部員は貸し出しできる場所なんですか?昼の放送とかあるはずですが」

「ちょっとお願いしたら、みんな首を縦に振ってくれたわ」

「つ、都合が良すぎる」


 その裏で何が起きたのかは、誰にも知らない。

 そしてわからない方が身の安全であることは何となく亮は察していた。……触らぬ神に祟りなし……。

 そんなこんな会話をしているうちに、亮たちは放送室の前へやって来た。

 咲良先輩はカチッと、鍵を開けると、中に入る。亮が中に入るとともに、彼女はホワイトボードに描かれた落書きを掻き消す。


「ここでできるのは、作戦会議ね」

「作戦会議って……何を会議するのですか?」

「あなたの絵の構図について」


 そう言われると、亮の心臓は少し跳ね上がる。

 実は今構図を思い描いているのはまだ、3枚しかできていない。残りの7枚はどのように描くのか、決まっていない。


「私のコスプレ写真は……みていないわよね。あの落書きしか送って来ていない」

「すみません、昨日は疲れてそれしかできませんでした」

「貧弱ね。神絵師になるのなら、健康に過ごすべきよ」

「はい。すみません」

「まあ、話してもしょうがないし、構図を考えましょう」


 そういうと、咲良先輩はホワイトボードに10個の四角を描く。それは一枚の絵を意味するのだとすぐにでもわかった。


「いい。いい構図の絵は形がある。芸術を学んだあなたなら、わかっているはずのことよね」

「はい。構図には種類があって、丸、三角、四角、S字がある。絵の集中線はどこにできるか考慮することですね」

「一枚目は普通の立ち絵、2枚目、3枚目はどうする?」

「ちょっと、待ってください。この写真、使えますよ!」


 亮はスマホから2枚の写真を見せる。それは咲良先輩がコスプレした写真だ。魔法少女ステッキを振る構図。可愛らしくステッキをポーズする構図。

 これで3枚の構図が完成した。残り7枚が必要になる。

 忘れずに、亮はホワイトボードにラフの構図を描く。


「残りの構図は、この同人誌から参考することはできない?」 


 咲良先輩がそういうと、一冊の同人誌を亮に見せる。それはクラウスが過去に描いた作品だった。


「これから、何枚か選ぶのよ」

「それって模作ですか?」

「ええ。時間もあまりないし、身内の模作だから、クラウスも何も言わないはずよ」


 模作。それは絵の構図をそのまま使用すること。いわば、絵の『パクリ』である。

 芸術家においてはタブーのもの。たとえ、身内のものであれば、大抵許されることもある。

 ただし、時間の猶予がないため、模作するのは致し方がなかった。

 ……偉大な芸術家は盗む。


「本当はやりたくはないですが、わかりました。使わさせていただきます」


 亮は罪悪感を抱きながら同人誌を受け取り、パラパラとページを早くめくる。

 その中に違う作品で類似の魔法少女シリーズが描かれた作品を選ぶ。

 そこに三つの絵を選択する。


「この三つで行きます」


 かわいく体操座りの構図。フルスイングの構図。ステッキでおまじないの構図。

 この三つの構図が綺麗に『魔法少女アイリ』とマッチングしているため、その構図を選ぶ。

 亮は忘れないうちに、ホワイトボードにラフな構図を描いた。


「残りはあと4つ。当てはあるかしら?」

「咲良先輩のコスプレ写真とアニメで放送したものから持ってきます」


 亮はそう言いながら、スマホから『魔法少女アイリ』の画面検索をする。すると、大量な画面がヒットし、スマホに表示される。

 そして、一瞬で構図を決める。


「この二つを描きます」


 そう選んだのは、水着で泳いでいる構図。魔法光線を放つ構図。

 どれも、アニメならにしか表現できない構図であったため、亮は選んだのだ。


「残り二つは……私が選ぶわ」


 咲良先輩は皮肉を言いながらも、スマホである画像2枚を選ぶ。

 それは別作品の萌えアニメ「ゆるゆるマジカルゆースターズ」という、前期の覇権アニメの画像を開く。


「これはどう?」


 そして選んだ咲良先輩は画像を亮に見せた。

 片足をあげて可愛くポーズする構図。魔法陣を詠唱する構図。

 どれも出来が良く、使うには問題ない構図だ。

 だが、魔法陣は「ゆるゆるマジカルゆースターズ」の作品にしか登場しないものであるため、そのまま応用することができないもの。


「魔法陣の陣は消したら、いけますね」


 だから、魔法陣を消すと、魔法詠唱している姿になる。

 これなら描いても違和感がない。


「これで全部10枚。構図は決まったわね」

「はい。残りは僕が仕上げるだけです」


 亮は渋い顔をしながら、ホワイトボードにラフな構図を見つめる。

 順番で行くと、普通に立つ構図。魔法少女ステッキを振る構図。可愛らしくステッキをポーズする構図。かわいく体操座りの構図。フルスイングの構図。ステッキでおまじないの構図。片足をあげて可愛くポーズする構図。魔法陣を詠唱する構図。水着で泳いでいる構図。魔法光線を放つ構図。

 以上の10枚が決定されたのだ。

 今までにない大掛かりの仕事だと、亮は眉を顰めて。


「いい?あなたに与えられる猶予は残り三日しかないわ。1日フルカラー3、4枚の絵。これを達成しなければいけないわ」

「……すごくハードルが高いですね」

「大丈夫。あなたならできるわ。私はあなたの実力に信じている」

「信じている、ですか……」


 亮が苦笑いで返すと、咲良先輩は顔を彼に近づける。衝突するかと思いきや、彼女は口元を亮の右耳の方へと近寄せる。

 そして、小さな声でこう囁く。


「もしも、あなたがこの10枚の絵を仕上げたら、1日デートしてあげるわ」

「え……」


 ドキッと、亮の心臓が跳ね上がる。

いい香水の匂いが頭を混乱させる。毒のように、全身が麻痺するような感覚に襲われた。

 その囁きはただ冷やかしなのか、本音なのかはわからない。冗談であれば、それもそれで

構わない。

 けど、本音だったら……どうすればいい。

 亮はそう思いながら、恋と言う毒が全身に回す。

 亮の心臓が早鐘のようになっていると、彼女は顔を引っ込む。

 毒を振り払うように、ブンブンと亮は顔を左右に振る。

 そして、咲良先輩に現実を伝える。


「でも、普通に考えたら、間に合いませんね」

「仮病でお休みしたら?」


 咲良先輩は苦でもない口調に、亮は迷い出す。


「本当は学校をお休みしたくはないですが、休まないと絶対に間に合わないことは明白ですね」

「明日、一日お休みしてみなさい。ご両親はいる?

「あ、両親なら、海外にいるので、特に問題ないです」

「なら、決定ね。学校をお休みしなさい。でなければ、作品は完成できないわ」

「ですね。心が痛いですが、ずる休みします」


 亮は明日、1日だけのずる休みをする。

 毎日登校している亮は出席日数が足りているので、特に気にすることはなかった。問題は勉強が追いつけるかどうかだ。

 ……自主勉強をしないといけないない。


「亮。あなたは勉強できる人?それともできない人?」


 と、亮がそう考えていると、咲良先輩は彼の心を射抜くように訪ねてきた。

 亮は正直に答える。


「そう言われますと、できない人だと思います。成績はいつも平均のちょっと下ですね」

「そう。勉強なら、私が教えてあげるわよ」

「え?いいのですか?」

「いいわよ。それくらい。赤点取って、サークル活動に参加できない方が致命傷よ」

「う……そう言われてみればそうですね、赤点は避けなければ」


 亮は自分が赤点の恐ろしさを身の程感じる。このまま赤点を取れば、サークル活動は当分に制限される。それは避けたい事情だ。亮は戦慄を覚える。

 これからサークル活動にも力を入れるため、勉強も励まないといけない。

 そんなことを会話していると、時計の長い針が数字の6を超えていた。

 休憩時間が残り半分だと、亮は昼食を食べていないことに気づいた。


「ところで、絵の構図を決めましたので、僕はそろそろお暇しますね。昼ごはんはまだなんで」


 亮は歩き出し、扉のところまで歩く。

早く購買に行き、パンで腹を満たそう。

 この時間に残っているのは、菓子パンしかないだろうと、そう考えていると、咲良先輩が呼び止める。


「あ、待って」 

「はい?またなにかありますか?」


 あと数歩で扉に届く亮は、彼女の方に振り向く。

 すると、彼女は机の上にかなり大きめの巾着袋を持ち上げると、その中から重箱を取り出す。その箱はまるで、この放送室から元々あったかのように。

 ……それ、どこから持ってきたの?

 と、亮は考えるが答えはなかった。


「お昼ご飯はまだ、だったわよね?よかったらこれ食べていって」

「え?いいのですか?」

「ええ。今日はうちのシェフが作りすぎたからね」


 シェフ。その言葉に亮は耳を疑う。

 このご時世、弁当を作るのに母親が作るものだといつも思っていた。がしかし、このご時世にその言葉を聞けるなんて、なんとその豪華な家なんだろうと。


(……そういえば、咲良先輩のお父さんは投資家だった気がする)


 噂を思い出し、重箱とシェフの言葉に納得する亮。

 彼女の家計は富豪なんだと、改めて思い知らせる。


「じゃあ、こっちに来て。ここに座りなさい」

「はい」


 亮は言われた通りの席……咲良先輩の隣席……に座る。

 咲良先輩の隣に座っているせいか、いい匂いがする。

 それは花のように、綿飴のような甘い匂い。香水のような痛い匂いではなく、鼻に優しい匂いが鼻を撫でる。

 亮が匂いに陶酔していると、咲良先輩が重箱を開く。

中身はかなり豪華な食材が詰まっていた。海鮮に肉料理。人差し指より大きなエビフライ、身が引き締まったシャケ焼き、肉汁が溢れるロストビーフ。どこからどう見ても、普通とはかけ離れた弁当だった。

 豪華すぎる弁当に亮は思わずヨダレを垂れそうになった。

 この重箱のお弁当はすごい、今まで見たことがないお弁当だ。人生初めての豪華な弁当であると、亮のお腹の虫がぐーと鳴った。


「すごい、お弁当ですね」

「でしょう?シェフが腕を振るった食事よ」

「僕には勿体無すぎます」

「いいのよ」


 ふふふ、と楽しげに笑う咲良先輩に、亮は苦笑いで返した。

 この借りはいつかどこかで返そう。


「お箸……お箸。あれ、お箸はないですよ。咲良先輩」


 食事するために箸を探す亮。

 だが、箸は見当たらず。どこにもなかった。

 これでは食事することができないと、慌てると、咲良先輩の右手にはお箸を持っていた。


「お箸ならここにあるわ」


 咲良先輩が箸の使い方を披露するかのように空中にバチバチと、掴む。と、亮は首を傾げながら彼女に尋ねる。


「その一膳は咲良先輩のでは?」

「そうよ。ここにある箸で、食事をするのよ」

「それって……」

「ふふふ。ご想像の通りよ」


 咲良先輩の言葉とともに、ロストビーフをつかむ。

 そして、そのまま亮の口元まで運んでくる。


「はい。あーん」

「……咲良先輩。非常に言いにくいのですが、恥ずかしすぎます」

「大丈夫よ。ここは私たち二人しかいないのから誰にも見られる心配はないわ」

「か、からかわないでください」


 咲良先輩の言い分は、一理ある。誰もこの放送室に来るわけもない。それに、扉から覗くことはできない。扉を開かれない限り、誰もこのあーん、を見ることができない。

だからといって、恥ずかしくない訳が無い。

 他人の目線がなくても、恥ずかしいのは恥ずかしいものだ。

 自分で食べれるのに、こうして他人が食べさせるのはプライドのどこかが許さなかった。

 まるで自分で餌を探せない、口を開けて食事する雛鳥みたいだ。


「……あの、咲良先輩」

「早く口を開けないと、ロストビーフが冷めちゃうわよ?」

「………………頂きます」


 数秒の沈黙でようやく葛藤に勝ち抜いた亮は口を開ける。

 そこで咲良先輩は箸で咥えているロストビーフをそのまま亮の口に入れる。


「!?」


 口に入った途端、亮の舌が踊り出す。

 それはジューシーな肉汁に、柔らかい感触が舌を刺激したのだ。

 人生の中で、最高なロストビーフだ。この人生では美味いジューシーなロストビーフ。今まで食したことがない亮は涙を流しながら、食べる。


「お、美味しいです。こんなロストビーフは食べたことがないです」

「それはよかったわ。ここのロストビーフは神戸の和牛を何日間も冷凍した肉なのよ?手を込んで味付けしたものなのよ。感謝して食しなさい」

「は、はい」


 亮はふるふると顔を縦に振りながら涙を流す。

 本物のローストビーフはこういうものか、と首を垂れ、感謝の気持ちで胸一杯だった。


「じゃあ、次はエビフライね。海老はブラックタイガー海老。インド太平洋に広く分布しているエビをフライに揚げたものよ」

「これは……大きすぎる。本当に海老なんですか?」

「ええ」


 そういうと、彼女はデカイエビフライを箸でつかみ、亮の口元までに持ってくる。

 一口で食べられないので、亮は一口ずつエビフライを食べていく。尻尾まで全部食べたのだ。

 ここまで来るとお腹いっぱい。だけど、お弁当の中身はまだまだ残っていた。自分一人でこれを食べ切れるのか?と、疑問符を浮かばせながら、食事を続けた。

 そのあとも、咲良先輩はおかずを箸でつかみ、亮の口に運ばせる。

 結局最後まであーんと食べさせられたのだ。

 重箱の全部を食べ切ってしまったのだ。

 どの料理も美味しく、文句の言いようがない食事だった。だが、プライドはズタボロになった。

 今後もこのようなイベントがないように祈る。

 いや、合ってもいいかも?


「次は和風のお弁当作ってくるわね」

「いや、作ってくれるのは本当に嬉しいのですが。自分で食べられますので、こういったイベントはなしでお願いします」

「考えておくわ」


 ふふふ、と彼女は悪戯な笑みを浮かべていた。

 ……これは絶対に反省していない顔だ。次回もやるつもりだ。

 などと、そう思いながらも亮は苦笑いを浮かべていたのだ。

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